ジャルガルサイハン: こんにちは。またお会いできて、嬉しいです。
フランシス・デュードンヌ: こんにちは。こちらこそ光栄です。
ジャルガルサイハン: 2年前、ウランバートルで番組に出演して頂きました。今回は素敵な町、ボルドーでお会いできました。今私たちがいる町について教えてください。
フランシス・デュードンヌ: ここサン サヴィニアンは重要な町で、ボルドーにも近い場所です。カルベワインなど、メインブランドをここで醸造しています。私たちにとって、ワインを自分たちで醸造することは非常に重要です。お客様が満足できるワインを造ることに努力しています。
ジャルガルサイハン: あなたはワインを自分たちで醸造することが重要だと言いました。あなたの会社は業界トップです。なぜ自分たちで醸造することが重要なのですか?
フランシス・デュードンヌ: 他の企業に製造を委託することもできますが、自分たちで作ることで品質を保てます。ただ、収穫量の低い年もあります。また他の国のお客様が期待する味、デザインに合わせ、変更する場合もあります。
ジャルガルサイハン: 特に、ボルドーはなぜワイン業界で有名な地域なのですか。何がそれほど特別なのですか?
フランシス・デュードンヌ: 全てのワインは特別です。ボルドーはその中でもより特別です。ボルドーはワインの産地で、ボルドーアペラシオンというと500万ヘクタールもあります。これを他の国と比べてみると、ボルドーだけでチリ、南アフリカ、オーストラリアなどのアペラシオンの半分を占めます。ボルドーはワイン業界の首都と言えるでしょう。
ジャルガルサイハン: なぜワイン業界の首都なのですか。たくさんブドウ畑があり、たくさん作られるからですか?
フランシス・デュードンヌ: そこには長い歴史があります。ボルドーは川の左岸と右岸で地質と気候が異なります。ということは、違うスタイルのワインが作れるということです。世界中のお客様がボルドーワインは最も美味しいワインであることを分かっています。
ジャルガルサイハン: ワインの格付けで、AOPとありますが、それを持っているのはボルドーワインだけですか?
フランシス・デュードンヌ: イタリアでも似たものがあります。しかし、AOPはアペラシオン起源の証拠です。
ジャルガルサイハン: フランスでは、その年に生産できるワインの上限が定められていると聞きましたが、本当ですか?
フランシス・デュードンヌ: そうです。ボルドーに限らず、地域ごとに制限があります。
ジャルガルサイハン: どのように上限を定めるのですか?
フランシス・デュードンヌ: 土地の広さ、ヘクタール単位で制限します。
ジャルガルサイハン: なぜ上限を定めるのですか?
フランシス・デュードンヌ: 品質を上げるために数量を制限します。ブドウの量が多くなると、ボルドーワインの味が薄くなります。
ジャルガルサイハン: ブドウを混ぜるのではなく、組み立てるのだと教わったことがあります。例えば、人気のボルドーメルローは、その他のメルローと何が違いますか?
フランシス・デュードンヌ: その土地と気候が違う味をもたらします。例えば、川の左岸のメルローは味が強いなどです。
ジャルガルサイハン: 川の右岸の名前は何ですか?
フランシス・デュードンヌ: サンテミリオン、ポムロールです。
ジャルガルサイハン: こちらのメルローとは何が違いますか?
フランシス・デュードンヌ: 左岸のメルローは味が強いのに対して、サンテミリオンは甘みがあります。
ジャルガルサイハン: 私たちは何千年にわたる歴史について話しています。ワインは最初どこからきましたか?
フランシス・デュードンヌ: その昔、東アフリカからローマ帝国に来た人たちがボルドーに来て、ワインづくりをはじめました。ラフィエット城、ニュートン城など有名な城が建てられ、赤・白ワインを製造し始めました。
ジャルガルサイハン: ワイン業界全体について話しましょう。フランスはワイン、香水、デザインなど高級品の製造で有名です。ワイン業界はフランス経済にとってどれくらい重要ですか?
フランシス・デュードンヌ: ワイン業界は輸出の大きな部分を占めるだけでなく、農業にも重要な役割を果たします。シャンパンとコニャックは、ブドウだけを売るより、製品に大きな付加価値を乗せます。ワインを売るということは、感情を売る、ノウハウ、経験を売るということです。
ジャルガルサイハン: あなたはこの企業に25年以上務めました。あなたの人生はワインと深く関わっていることでしょう。あなたにとって、ワインとは何ですか?
フランシス・デュードンヌ: 私個人にとっては、仕事への大きな満足感です。毎日、ワインに情熱のある人たちと歴史、地理、一番気に入った旅行先などの話をし、友人と美味しいご飯を食べながらワインを楽しみます。
ジャルガルサイハン: フランスワインは、特に特定の料理と良く合います。あなたの企業はヨーロッパでも最大手企業の一つです。売り上げの3割はアジア、ほとんどはフランス、ドイツ、英国だと理解しましたが?
フランシス・デュードンヌ: はい、そうです。私たちはヨーロッパを中心に展開しています。世界中で販売されているフランスワインの20%が、我社のワインです。
ジャルガルサイハン: モンゴルでのパートナー企業はどこですか?
フランシス・デュードンヌ: World Wine社です。小さい企業ですが、20年以上パートナー関係を続けています。
ジャルガルサイハン: カルベワインはモンゴルの市場でも昔から販売されています。カルベワインを特別なものにするのは何ですか?
フランシス・デュードンヌ: カルベワインは質的にボルドーワインと同じランクです。カルベ社は200年前の1818年に、ジョン・カルベが設立しました。カルベをボルドーでの他の企業と比べると、ボルドーではあるが、中でも異なる地域のワインであり、味も違います。地域ごとに異なるということです。
ジャルガルサイハン: 今私たちがいるこの場所はどうですか。企業として、なぜ重要ですか?
フランシス・デュードンヌ: ここには80以上の信頼の置ける長い付き合いのパートナーがいます。サン サヴィニアンの640ヘクタールの土地からブドウを収穫しています。
ジャルガルサイハン: メイン工場にいるので、カルベワインについて話したいと思います。80以上の農家からブドウを買い取るとのことでした。今は9月、つまり白ワイン用の収穫時期が来ました。3週間後は赤ワイン用の収穫が始まります。なぜカルベワインは人気なのか教えてください。
フランシス・デュードンヌ: カルベワインは200年の歴史を持っており、私たちも豊富な経験を持っています。カルベワインはコレステロールが低く、質の高いワインだということを私たちは長年の製造で証明してきました。それから、著名コンサルタントの意見を受け、カルベワインの品質をお客様の好みに合わせてきました。
ジャルガルサイハン: 全てのカルベワインがボルドーで製造されるのですか?
フランシス・デュードンヌ: 全てのカルベワインはボルドーでなく、フランスで製造されます。また、ボルドー産ではないスパーリングカルベワインもあります。ボルドーはカルベワインの出身地といったところです。
ジャルガルサイハン: カルベワインのどれくらいがボルドーで製造されますか?
フランシス・デュードンヌ: 殆どがボルドーで製造されます。
ジャルガルサイハン: トゥブシンバヤルさん、あなたはカルベワインを20年以上モンゴルに輸入して来ました。今のモンゴル人はカルベワインをどのように受け取っていますか?
トゥブシンバヤル(World Wine社長): 私の考えでは、ボルドーワインは2種類のブドウをブレンドした優しい味のワインです。カルベワインがモンゴル人の口に良く合うのは、砂糖を加えることなく、ブドウの味そのものを生かした点にあるからだと思います。もちろん、そもそもボルドーワインの品質が高いということもありますが。
ジャルガルサイハン: 砂糖を追加していないドライな味があるので、モンゴル人男性に特に好かれます。先ほどのフランシスさんの話では、ドルドーニュ川の右岸と左岸で異なる味のワインができるとのことでした。赤いブドウメルロー、カベルネ・ソーヴィニヨンを何割ずつブレンドすることで、カルベワインができるのですか?
トゥブシンバヤル: サンテミリオンでは、メルローを60%以上、残りはカベルネ・ソーヴィニヨンあるいはカベルネ・フランをブレンドします。
ジャルガルサイハン: だから砂糖を入れる必要がないということですか?
トゥブシンバヤル: 基本的に、メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フランの3種にはそれぞれ糖分が含まれており、その糖分が分解されアルコールに発酵するため、砂糖を加える必要がありません。そのため、健康にとても良いのです。
ジャルガルサイハン: ワインの健康に対する影響について質問をしたいと思います。フランス人は年に一人、平均42リットルのワインを飲みます。一方で、中国人は一人、平均1.2リットルしか飲みません。それから、ワインと一緒にチーズも食べます。そして、フランス人の平均寿命はかなり長いです。その2つに何らかの関連性はありますか?
フランシス・デュードンヌ: 私は医者ではないのでよく分かりませんが、フランス人は毎日美味しい料理を食べ、良い雰囲気、良い感情を楽しみ、美味しいワインを飲みます。
ジャルガルサイハン: あなたの企業は、市場の需要に合わせることに成功していると思います。あなたは、英国の市場ではカルベワインの特殊な組み立てをすると言っていました。なぜそのような市場によって異なるアプローチを取るのですか?
フランシス・デュードンヌ: カルベワインにとって、英国は最も重要な市場です。他の国への販路拡大を考えるうえでも、足掛かりになる市場だからです。
ジャルガルサイハン: カルベワインを購入するイギリス人とフランス人は何が違いますか?
フランシス・デュードンヌ: ほとんどの場合、お客様はそれぞれ異なる味を求めます。それぞれのプロファイルが異なります。モンゴルも他の国とは違います。
ジャルガルサイハン: 例えば、私にとってこのカルベワインはとても濃いと感じます。
フランシス・デュードンヌ: このワインに使用している品種はメルローです。顧客の年齢により、味わいが違うこともありますが、このワインはどの年齢にも好かれます。
ジャルガルサイハン: とても美味しく、元気が出てきますね。
フランシス・デュードンヌ: 私たちはモンゴルにも多くのお客様がいることを大変嬉しく思っております。我社のワインをモンゴルへ届けることを可能にしてくれたWorld Wine社にも感謝しています。
ジャルガルサイハン: 次は、カルベセレブレーションブリュットロゼについてお聞きしたいと思います。私たちが空港へ着くと、大きなブリュットロゼのボトルを見ました。
フランシス・デュードンヌ: これは2019年に発売され、お客様の賞賛を浴び、成功した新製品ですね。
ジャルガルサイハン: 若者のワインを飲む率はどうですか?上がっていますか?
フランシス・デュードンヌ: 10年、20年前のワインの消費量と比べると、今のワインの消費傾向が違います。若者はだいたい白ワインを飲みます。食事が変わってきたことの影響もあると思います。人々はパスタや寿司といった軽い食事をするようになりました。ですから、コーラなどを飲んでいた若者が強いワインでなく、スパークリングワインを飲み始めていると思います。
ジャルガルサイハン: 人々の好む味、食べる料理、飲むワインの種類などが変わってきていますね。そして、あなた方はその変化に対応していると理解しました。ただ、一つ変わりのないことは、200年に及ぶこのブランドの歴史です。乾杯!
フランシス・デュードンヌ * ジャルガルサイハン