モンゴルは1990年代初頭に私有財産を否定する社会主義体制から、私有財産に基づいた自由市場経済・民主主義体制へと移行した。私たちは、それまでの80年間を否定し、悪の元凶と言われた私有財産を認め、新憲法で「モンゴル国は世界経済発展に伴い、モンゴルに適した様々な形態の経済をもつ。政府は公有および私有の如何なる形態の財産も認め、その所有権を法律で保護する」と定めた。

私有財産は経済および社会的関係における土壌である。それを保護することは、民主主義社会において人権、生命、自由を保護するのと等しく重要なことである。個人ではこれらを全て保護することができない。だから国民は、その役割を果たすべき立法、行政、司法という三権からなる「政府」というものを設ける。国民は協力して誠実に民主主義的で開かれた選挙を通じ、いずれかの政党を選び、一定の期間で信頼を託すのだ。

政府は私有財産を持つ全ての人から税金を徴収し、あらゆる保護を履行する義務を持つ。そして、政府は他国との関係や取引、人や物が行き来する条件に合意し、管理監督する。政府は、私有財産がなく病気に苦しむ人々、貧困に苦しむ人々のために福祉政策を実施し、国民全員に教育や医療を受ける機会を平等に提供する義務がある。

また国民1人1人が私有財産を持ち、その財産を自分のために有意義に利用し、他者にとって必要な価値を創造・提供することで財産を増やす権利を有している。しかし、これは公共の利益を害しないことが重要である。

モンゴルの移行

しかしながら、1990年代からモンゴルの政府機関に就いた者たちは、財産を保護する義務を怠り、権力を濫用し、民間が作り上げた価値から税金を徴収するだけでなく、さらに賄賂を取るようになった。政府は、必要性のない数多くの許可を考え出し、許可が無ければ民間企業の事業を停止させるという圧力をかけるようになった。国境では輸入品に対して税金という名目で徴収し、これが多くの金満家を生んだ。いつしか税関に勤めることが名誉なこととなった。

民間企業は成長し、市場規模や流動性も拡大し、モンゴルの都市や地方は消費財で満たされるようになった。民間の事業は大きくなり、財産を蓄積するにつれ、様々なモノが生産されるようになった。国有企業の民営化では、その企業の株式を少数の人のみが手にした。

全てのビジネスに政府が干渉し、公務員は個人的な利益を優先するようになった。これがモンゴルの腐敗のはじまりである。腐敗を止める義務がある政府は4年毎の選挙で入れ変わるため、腐敗を食い止めるどころか自分の利益のために権力を有意義に利用するようになった。

政党は、選挙で勝利すればどれだけの権力を手にできるかを知り、公共ガバナンスは崩壊した。腐敗した政治家たちが法律を施行するようになり、2000年に憲法が改正され、腐敗は合法化した。

今日、政党はあらゆる政府機関の役職、モンゴルを代表する大使館のすべての役職に値段を付け、政党への寄付金の額で役職を与えるようになった。政党の資金調達に対して資金さえあれば政府のどの分野にも権力者として職につき、そして所有する会社が独占することを合法化した。腐敗が拡大し、それが国の発展の妨げとなり、民間企業の自由競争を妨害していると社会全体が指摘するようになったが、腐敗を止めることができずに2000年を迎えた。モンゴルの腐敗は政府、政党以上に拡大していった。

腐敗問題が各省庁、政府レベルで話されるくらいに深刻化したが、政権を交互に握ってきた民主党と人民党は、互いの汚職を暴かくことができない状況になっていた。もはや腐敗を絶つことができなくなっている。腐敗という癌は、モンゴル政界全体に深く広く根を張っている。

腐敗の新しい現象

今日、腐敗のレベルは大きくなり、たった一人の人物がモンゴルの様々な分野で権力を握るまでになっている。先週、Ts.ニャムドルジ国会副議長は記者会見を開き、近年政界でその名がささやかれるようになった人物について話した。ある事実を明確な数字や証拠をもって発言する勇気ある人物が1人か2人、人民党内にいるようだ。モンゴルには正義を語る自由がある。だがこの自由が今後どれだけ続くかは不明である。

モンゴルでもっとも強く、もっとも富を持ち、もっとも謎めいた人物としてD.エルデネビレグTDB銀行会長の名前が挙がった。最近、この人物についてマスコミやSNS上で多くの情報が飛び交っている。その中で「この人だろう」と思われる2枚の写真が公開されたが、人々は写真の真偽を疑っている。これこそがその人物がどれほど謎めいているかを証明している。エルデネビレグ氏に関する情報をまとめてみると、彼はモンゴル最大の商業銀行の株式の大半を自分名義で設立した海外の会社を通じて保有している。そのため、TDB銀行の取締役会長を務めている。彼は、M.エンフボルド国会議長がウランバートル・シティ銀行の頭取をしていた当時、市民の財産で設立されたウランバートル・シティ銀行の株式99%を保有していた。

Ts.ニャムドルジ国会副議長の話によれば、エルデネビレグ氏はTDB銀行を通じて「ダルハン精鉄工場」、「フトゥルセメント工場」の2社をエルデネト鉱業、モンゴルロスツェトメトと同様の手口で手中に収めた。今後、バガノール炭鉱、第3・第4火力発電所も同様に手に入れるようだ(Udriin sonin、2016年10月3日版)。TDB銀行は米ブルームバーグ社に高いロイヤリティーを払い、TDB銀行傘下でテレビ局「ブルームバーグ・モンゴリア」を始めた。さらに経済誌フォーブス・モンゴリアを買収した。

また、「Zasgiin gazriin medee(政府通信)」という新聞を発行しはじめた。これはモンゴル政府が発行している正式な新聞だという誤解を生んだ。これらが本当に事実であれば、私たちはモンゴルの民主主義における新たな「エルデネビレグリズム」という現象の生き証人ということだ。

大統領はまだ何も言わないのか?

TDB銀行の会長が、モンゴルの政財界に最も影響力があるということを人民党および民主党の国会議員たちは発言することを拒んでいる。

政党の寄付金は非公開であるため、誰が幾らの資金を受け選挙に出馬したかは分からない。「腐敗を防止し、政府の活動をガラスのように透明にする」と話すTs.エルベグドルジ大統領も、ロシアが保有していたエルデネト鉱業の株式が売却されたことに何も言及しない。モンゴル国民である私たちは、ロシア側がエルデネト鉱業の株式売却について、大統領が国の許可を得ずに承認したということを既に分かっている。Ts.エルベグドルジ大統領が2016年6月20日にタシュケントでウラジーミル・プーチン大統領と会談した後、エルデネト鉱業の株式の取引が行われたと見ている。

民主的市場経済社会では、誰か一人、どこか一企業の成長を応援はするが、1社のみの独占を認めることはない。例えば、アメリカではジョン・ロックフェラーのスタンダード・オイル社を分社化し、ビル・ゲイツのマイクロソフト社に罰金を科し、独占を阻止してきた。その理由は、1社による独占は、独占価格を提示することができ、市場の自由競争を阻害し、経済発展に悪影響を与えるからだ。

モンゴルのようなまだ民主主義の歴史が浅い国では、政治と経済が入り混じった腐敗を食い止めることができなければ自由競争を確立することができない。

ダムバダルジャー・ジャルガルサイハン