金利制限による利率の引き下げ戦略が決定した
金利引き下げの戦略が国会の臨時会議で決定した。政府は金利の上限を定めようとしている。その際、反高利法を制定することで、全体の金利の引き下げを実行したいと考えたようである。ただし、これらの法律は銀行のみを対象としているのか、それともノンバンク(非銀行系金融機関、質屋)など、あらゆる金融機関の金利に制限をかけるのかという問題がまだ残されている。金利の上限を規制する法律を制定している国々では、国内での一切の貸金業者に対して金利の上限を定めている。そして、貸金業者は融資先の資産ランキング、リスク負担の種類によって、それぞれ異なる金利で貸金業を行う。
多額の預金に対する課税を高くするという提案が、人民党のL・エンフアムガラン議員から出された。全国労働党のT・ドルジハンド議員は、預金に対する課税の税率を分類し、累進課税を定めることを提案した。モンゴルでは銀行の預金の90%が、預金者の8%のものとなっている。累進税率かフラット・タックスと言われる一律課税の制定は国の発展に関連する。発展途上国では貯蓄率が低く、先進国では高い。つまり先進国では通貨の流通量が多い。また、発展途上国では金利収入を別途計算するのに対し、発展国ではその他の収入と合わせて計算する。そうすることによって、低所得層に税負担をさせないようにし、高所得者に相応の負担をかける。モンゴルは、2017年まで銀行預金の金利収入に税を課してこなかった。2017年以降は、世界通貨基金(IMF)からの要請で10%の税金を課すことになった。
今回の国会議員からの提案の背景には、通貨と市場の関係がある。通貨と市場の関係は、市場を満たすだけの通貨があるかどうかで測る。国の金融資産は、実物資産と金融資産に分けられる。銀行の保有する資産を市場と比べて100%であったならば、市場での通貨の流通は順調であるとされる。例えば、フィンランドの通貨流通量は市場と同等である。他にもシンガポール151.67%、日本157.51%、中国174.54%、香港256.63%であるのに対し、モンゴルは2017年の時点で60.6%である。2020年現在では90%となり、残り10%を実物資産が占める。
経済成長には現金、融資が必要不可欠である。この融資は、現金つまり銀行資産であり、預金残高が多ければ、それだけ銀行資産が増加する(融資残高も増える)。2008年のモンゴルの経済規模は2.8兆トゥグルグであった。銀行資産は8920億トゥグルグであり、市場の3割だった。それが今日では9割となっている。通貨の流通が増えていることとなるが、他国と比べてまだ現金が必要である。経済成長のためにはより広く融資が普及させる必要があり、そのためには高金利は成長の妨げとなっている。そして、政治家は金利引き下げのために、預金の利率を下げる必要があるという。預金の利率が下がると、余剰資金が株式市場へ流れるというのだ。
企業の情報が株主に届かず、硬直する株式市場
モンゴルの株式市場(MSE:Mongolian Stock Exchange)は冷凍状態が続いている。株式会社は株主からの出資とその情報を隠しているということだ。MSEの時価総額は3.2兆トゥグルグである。以前は400ほどの企業が上場していたが、現在は199社となっている。199の上場企業のうち、2020年の上半期報告書を提出したのは96社にとどまる。上場企業が提出する報告書には2種類あるが、活動報告書を提出したのはわずか47社である。
外国では上場企業が報告書を提出しない場合、刑事責任に問われる場合がある。モンゴルでの取締りは、金融規制委員会によって2015年に制定された規則によってなされるようだ。しかし、この規則は古くなり、金融規制委員会はウェブサイトに、修正を加えた最新版の規制も載せていない状態である。モンゴルでは、報告書の提出がない場合の取締りがほとんど行われず、取り締まりが行われてもどのような処罰が与えられるか不明である。
こうした状態が続き、2016年にモンゴル国違反法が制定され、同法11条10項の7.1により、2万単位の罰金が科されるとしている。1単位が1000トゥグルグとすれば、2000万トゥグルグの罰金を科されることになる。株主から20億トゥグルグの出資を募り、報告書を提出しない場合の罰金として2000万トゥグルグを支払えば済むということである。
アメリカでは、報告書を提出しない場合、期限から6ヶ月後、会社名を公表し、更に6ヶ月後にまだ提出していない場合、会社を破産させ、清算する。このように、報告書を提出させるようにする義務を負っているのは証券委員会であるが、未だ処罰を与えたケースが1つもない。こういう状況で、預金金利を引き下げ、余剰資金が株式市場へ流れるとは考えにくい。モンゴルの証券取引を円滑化するためには、まず企業が株主の信頼を得ることが重要であり、そのためには情報公開が必須である。
メディアを避ける国会議員の姿勢に記者が抗議
国会議事堂の中に、メディア関係者らがマイクロフォンを置いて、抗議の意思を表した。モンゴルでは国会議事堂へ入場する記者に許可書が付与される。新型コロナウイルス感染症の影響を受け、2020年の3月に新しい規則が制定された。新型コロナウイルス感染症対策として、非接触距離、ソーシャル・ディスタンスを確保しなければならないこととなった。メディア関係者は、国会議事堂2階の報道センター以外、移動を禁止された。そして、メディアからの取材を受けたい国会議員が自ら報道センターに来て、記者会見などを行うようになった。逆に記者が国会議員に対して取材したい場合、職員が終始付いて行かなければならなくなった。これは選挙前からの措置であり、新しい国会議員に話を聞くことがほぼ不可能となった。
「報道の自由に関する法」という法律が1998年に初めて施行された。この法律は、政府が政府自身で報道機関を持つことを許していない。また報道機関に対して何らの監視も行ってはならないとしている。今日のモンゴルのメディアは、(共産主義時代の)国家による独占から、政治家及び政治家の親族による報道機関の独占へと移行した。2016年に国境なき記者団がモンゴルで行った調査の結果によると、モンゴルの報道機関の7割を過去に政府機関で高い地位についていた者、あるいは現職の政府関係者が所有していることが分かった。現在もこの状況は改善されていない。 2019年の時点で、モンゴルには512の報道機関がある。報道・メディアは大衆に奉仕することが求められる。そのため、情報をオープンにしなくてはならない。しかし、私たちはどの報道機関が、誰によって所有されているのかを知らない。そのため、報道の自由に関する法の改正を国会で長い間議論し続けているが、まだ何も変わっていない。