新型コロナウイルスと政府の介入
今週、このテーマを取り上げる主な理由は、経済活動への政府の介入がどのくらいあるべきなのかを明らかにし、改善への一歩を起こす必要があるからである。政府の介入が増えれば、民間企業の参入が少なくなる。そのため、政府は経済全体を徐々に監視する傾向がある。市場経済の国では、経済活動にいつ、どのようにして介入しているのかについて話したい。
経済への政府の介入は、国家予算の歳出総額をGDPの規模に比較して表す。モンゴルの場合それは26%となっている。適切な割合はどれほどなのか。GDPにおける政府介入、つまり予算歳出の割合は17%であることが適切だという研究結果がある。
財務大臣は新型コロナウィルスによる厳しい現状で政府の介入を増やすべきだという。これはイギリスの経済学者ジョン・ケインズが提唱した理論である。その理論は、経済が低迷し危機的状況に陥った場合、政府は歳出を増やすべきだというものである。しかし、何に歳出を増やすかが重要である。
なぜ、政府は市場経済に介入するのか?
第1に、市場経済が機能する条件を整備するためである。例えば、発電所やインフラ敷設、鉄道建設などに政府が介入し、その運営を民間企業がしても良い。
第2に、市場の欠陥を是正するためである。これには独占、不公平な競争などがあり、それらを無くすために介入する。
第3に、社会保障の平等性を促進するために介入する。例えば、今日の新型コロナウィルスの対策として実施している政府の取り組みが挙げられる。 選挙前にモンゴル政府は新型コロナウィルス感染症対策、経済対策としてとってきたかを下表に示す。
検査キット、医療品の関税および付加価値税を免除 |
社会保険料およびその延滞金、罰金を免除 |
企業に対して源泉個人所得税を免除 |
賃貸料を引き下げ、企業に対して賃貸収入に課される税を免除 |
子ども手当金を10万トゥグルグに引き上げた |
福祉手当金、年金を引き上げた |
食料券の金額を引き上げた |
カシミア奨励金を交付し、遊牧民の収入を促進 |
モンゴル政府はこれらの措置を今年末まで継続すると言う。新型コロナウィルス感染症対策にモンゴル政府が取り組んでいるこれらの経済救済措置の総額は、5兆1000億トゥグルグであり、GDPの約12%に相当する歳出となっている。
2024年に貧困率は50%削減されるか?
(国会はU.フレルスフ内閣の基本方針・計画を承認する)
モンゴルは2024年までに貧困率を50%削減できるのか。人民党は選挙公約として貧困率を2分の1に削減するといった。新内閣の基本方針・計画が国会で承認される見通しだが、その承認される内閣の基本方針・計画には貧困対策に関する具体的な数字が示されていない。そのため野党は政府の貧困対策が不十分であると批判している。
内閣の基本方針・計画は、前政権が作成した2050年ビジョンと同じ構成で作られている。新型コロナウイルスによる困難をどのように乗り越えるかについて、経済、人間開発、グリーン開発、ガバナンス、都市と地方などのカテゴリで記されている。現在、この内閣の基本方針・計画は国会で審議中である。
彼らは経済成長率を今後4年間で年平均6%と予想している。また、2024年の一人当たりのGDPが5,200ドルになると言う。今後4年間で本当に貧困率を削減できるのか?
貧困削減はとても重要な問題である。モンゴル国民の3分の1が貧困層で、そのうち5人に2人は15歳未満の子どもである。
貧困をどのように削減するのか?これは失業率を下げることからはじめるべきである。貧困率を2分の1に削減するということは、約45万人を貧困から脱出させるということになる。内閣は補正予算案に子ども手当の交付を継続する旨を謳っている。確かに10万トゥグルグの子ども手当は貧困家庭において非常に助かるのも事実だる。だが子ども手当をなぜ、すべての家庭に交付しているのかという疑問が生じる。すべての家庭が貧困層なのではなく、3分の1が貧困にある。例えば、この3分の1を示している家庭だけに交付することが良いのではないか?現在のこの子ども手当は、対象とするのが貧困層ではなく、全員に交付しているから偏った福祉となっている。
先進国では、税金を個人から直接徴収している。自分の収入を申告して決まった税額を払う。収入がある一定の基準を下回っている場合は、国が補助を給付する。
モンゴルにはこのような仕組みがなく、国は雇用主から徴収している。個人は自分が国に税金としていくら支払っているかを把握していない。もし、モンゴルで税金を個人で納税する仕組みになれば、メリットは2つある。
1つ、国は税金をより多く徴収できる。そしてそれは貧困層などニーズがあるところに支援できるようになる。 2つ、納税者は政府に対して無駄な支出を抑えるように要求できるようになる。なぜならば、あなたの給与の30%~40%を税金として徴収されたら、あなたは自分が払った税金が何に使われているかを聞くようになるからだ。
名誉母親表彰
(大統領は名誉母親章を授与する)
先週、バトトルガ大統領はいくつかの県を訪問し、現地で多子母親への「名誉母親表彰」を授与した。例年、授与式は毎年6月1日に行われる。
この表彰は1957年に初めてモンゴル政府は勲章・表彰の規定を作成したことが発端である。当時、子ども8人を産んだ母親に「第1名誉母親表彰」、子ども5を産んだ母親に「第2名誉母親表彰」を授与すると定めた。1990年にこの表彰規定がモンゴル国家大会議で可決成立し、そして2010年に「多子出産母親奨励法」となり、子どもの数は「第1名誉母親表彰」の場合は6人、「第2名誉母親表彰」の場合は4人となった。
外国にも母親への表彰の事例はある。例えば、廃止されたが1938年ドイツでは「母親十字勲章」があった。また、フランスでは1920年から「フランス家族賞」を授与するようになった。これは母親だけではなく、家族に贈られる賞である。ソビエト連邦では1944年から1991年まで「母親英雄」という表彰が母親に贈られていた。2008年から「親権者名誉勲章」という勲章が制定された。 モンゴルでは、「名誉母親表彰」の授与式は大統領令によって行われる。「第1名誉母親表彰」の受賞母親には年1回20万トゥグルグ、「第2名誉母親表彰」の受賞母親には年1回10万トゥグルグが国から給付されている。
2020年全国でおよそ1万人の女性がこの表彰の対象となり、そのうち720人が「第1名誉母親表彰」、9,000人が「第2名誉母親表彰」である。名誉母親表彰を受ける母親への奨励金はどこから拠出されているのか。それは社会福祉基金からだ。
この表彰はどんな意味を持っているのか。これについてモンゴル大統領は次のように述べた。
「人口僅か300万人のモンゴル国では、人口を増やすこと、子どもを正しい環境で育てるためには母親への支援をいつまでも続けていかなくてはならない」。
しかし、これが本当に母親への支援となっているのだろうか。全く十分ではないが、ないよりはマシという程度である。母親が子どもを育てる環境を変えるほどの支援にはなっていない。表彰されても、その母親の生活は変わらない。今日の幼稚園、学校、病院の環境を見ればわかるはずだ。子育ての環境のためというなら、包括的に考慮すべきである。