教育の格差―新学期スタート

9月1日、全国の学校で新年度がスタートし、全国834の小中高校で入学式が行われた。全体で69万人の児童生徒が通学する。今年度は4万人を超える児童が新たに就学している。2019〜2020年度は2万9000人の生徒が高校を卒業し、8万人の就学児がいた。今年度は新型コロナウイルス感染症の予防等による緊急事態宣言下で新たな学年が始まったということで、授業にも特徴があるようだ。

学校での授業は、リモート授業と対面授業の両方で行われることが決定した。リモート授業には、教職員・生徒全員がコンピューターとインターネットを備えていなければならないが、まだ十分に整備されていない。政府は、今年から3300人の教員にパソコンを付与するとした。しかしまだパソコンを所持していない教員もいる。自宅がインターネットに接続されていない生徒もいる。リモート授業は、こうした困難に直面している。

対面授業では生徒間に一定の距離を保ち、1クラスの生徒を3つのグループに分け、各グループ2時間の対面授業を受ける。しかし、2時間の授業を受けるために、ウランバートルではひどい渋滞の中、生徒は5時間かけて通学することとなる。

特にウランバートル市内では、学校が始まるとその送迎のための車で市内の交通渋滞は一層ひどくなる。この問題を解決するため、ウランバートル市交通局が運行するバス943台に加えて、9月は29台の臨時便を増やしたと言っている。それでも学校の場所により、児童を送迎するための車で深刻な渋滞が続くだろう。スクールバスを運行するという話もあるが、全ての学校で可能なわけではない。国立25校、私立21校、合計46校が113台のバスを運行する。

今のモンゴルの教育制度は不平等で、普遍的ではない。教育はビジネスとなり、格差社会が拡大している。原因は、教育に充てられる予算はGDPの4.3%と十分ではないからだ。過去、2001年の教育費がGDP の7.1%でピークだった。その後、経済規模は拡大しているものの、教育分野には平均してGDP の 4.3%が充てられた。2020年度の国家予算では、教育・科学分野に総額5560億トゥグルグが配分された。

今年は45の幼稚園で建物を増築し、収容人数を6000人増す計画だ。30校で校舎が増築され使用開始する。これで1万4000人の生徒が新たに学ぶ環境が整えられた。しかし、今年の卒業生と新入生の間には5万人の差があり、増設された環境では十分とは言えない。この卒業生と新入生の差は来年4万2000人、その翌年は3万5000人になる。差は年々減少してはいるが、全ての児童が学校に通える学校数にはなっていない。首都では学校数が足りなく、地方では生徒数が少ない。

ウランバートル市には各地区にまんべんなく学校が設置されてはいない。私立学校と国立学校の違い、中心部と郊外にある学校数の違いが大きい。ウランバートル市にある学校や幼稚園、公共図書館、博物館、映画館、プールなどの教育・文化施設のほとんどが街の中心部に集中している。そのため、市民は中心部への移動を余儀なくされる。

教育に関する政策が矛盾していることも挙げられる。教育大臣L.ツェデブスレン氏の新年度の挨拶は、国際教育プログラムを段階的に拡大するというものだった。しかしバトトルガ大統領は、伝統的慣習、歴史、文化の特徴を取り入れた義務教育を全ての国民に提供するという政策に反し、外国の高額でモンゴルの伝統とは関係ない内容の義務教育を導入すると発表した。政府が一貫した政策を掲げてこそ、教育の質を上げる一つの要素になるはずだが。

渋滞の原因はずさんな土地の管理

渋滞の原因はずさんな土地の管理にある。土地が経済循環ではなく、腐敗循環に陥ったからだ。土地利用許可の交付が、官僚による腐敗の道具になって久しい。彼らは高額で土地利用許可を売却している。そのため利用目的外の土地利用が増えている。観光目的の土地にマンションを建てる。インフラが整備されず、都市計画もない。集中しすぎた住宅街は住民にとっても不便だ。今日、バヤンゴル区第1ホローボグドアルホローロルに学校建設の目的で許可された土地を2つに区分けして、ホテル建設が開始され、周辺の住宅を邪魔している。公共住宅アパートの土地は管理委員会の管轄だが、紛争が起きることも多い。車の数が多いだけでなく、こういった建設に伴う車道計画の無さが原因で交通渋滞が起きている。

違法な土地利用が都市計画を台無しにし、車道の拡幅を不可能としている。全国には土地の登記に関する4つの機関がある。個人、事業体、法人の占有地は土地管理測地学・地図作成局が登記するが、その利用許可は市役所、区役所が交付する。特別保護地域は自然環境・観光省が管理する。自然環境・観光省の高官は特別保護地域の土地を売却し、私腹を肥やしているという話は以前詳しく触れた通りだ。鉱山の登記は鉱物資源局が行う。土地所有権の登記は国家登録庁が行う。これら4つの機関は、相互に連携しておらず、手続きも煩雑だ。

登記情報は公開され、統一されるべきである。個人、事業体、法人の占有地の登記を行う土地管理測地学・地図作成局のウェブサイトは、明確で有用な情報を得られるものではない。取得可能な空き地、現行占有状態に関する情報は一切ない。連絡先に電話をかけても、区役所に問い合わせるようにと回答されるだけである。自分が住むアパートの土地を誰が持っているかを聞くと、公開できないとの一点張りだ。

土地の所有者情報が非公開であることは、多くの官僚に有利である。秘密であれば、盗んで売却することができるからだ。多くの山などの土地を1人もしくは2人が所有するようになっている。モンゴルでは個人、法人とも土地を15年から60年間所有することができる。また40年間の延長ができるが、延長可能な回数は規定されていない。

土地の登記情報をオンラインで閲覧できるようにすべきだ。建物の所有者が誰であるかも公開すべきだ。これは不動産の評価にも役立つ。だが市民が声を上げなければ、政府は動かないようだ。今の政府はe-MONGOLIAプログラムを始めている。オンラインで情報公開がされることは、腐敗の大きな盾となる。土地活用について市民から情報を受付け、審査し、対応するために、開かれたシステムを作る必要がある。

土地の登記情報を明確にするためには、不動産の登記が重要である。それは不動産に対する固定資産税の回収ができれば可能となる。モンゴルでは、不動産評価額の2%が固定資産税となる。ここで用いるべき価格は市場価格だ。行政機関庁舎には固定資産税が課税されない。固定資産税を支払うのは個人と法人のみだ。しかし、課税は平等に行われるべきで、行政機関にも課税されるべきだ。行政機関の固定資産税はその庁舎改修に使われるべきだ。

選挙管理委員会メンバーが辞職

委員長を含む選挙管理委員会のメンバー4名が辞職した。総選挙後、バトトルガ大統領から不当な扱いを受けたことが原因で辞職を申し出た。毎回、選挙後に問題が起きる。選挙管理委員長を務めた人物が前民主党、現人民党の党員だった。2009年から委員長を務めたソドノムツェレン、彼の秘書ボルドサイハンが定年退職を希望、その他2名のメンバーが移動命令を理由に辞表を提出した。

新たに任命されたのは、国家事務局長官を務めていたデルゲルナランであり、選挙管理委員長を務める。また国家安全保障理事会長を務めていたダワーオチルが秘書に任命された。その他にJ.ボルド、E.トゥブシンジャルガルがメンバーに新任された。選挙管理委員会メンバーの辞表を受けて、21日以内に国会でこれを承認することになっている。委員の辞表提出は民意に関係なく、自ら提出するものになっている。民主主義では自由で公平な選挙が肝要である。この自由で公平な選挙を実施する権限を持つ、国民主権の執行機関が選挙管理委員会だ。そのため、選挙管理委員会メンバーの任命に国民の意見に耳を傾けないことは合理的ではない。

選挙管理委員会の独立性は重要だ。だが前回の選挙では独立できていなかったと評価されたわけだ。選挙管理委員会に政党、政治の影響が及ばないようにすべきだ。モンゴルでは、選挙管理委員会は9名の委員から成る。常勤2名、委員長と秘書、非常勤7名だ。そのうち、国会に属する常任委員会が5名、大統領が2名、最高裁が2名を指名する。最終的に国会が6年の任期で承認する。政治職に就いておらず、選挙候補者ではなく、憲法裁判所裁判官、裁判官、検察官であってはならない。

他の国では、国会のみが過半数の票で任命する日本やルワンダがある。絶対多数である4分の3以上の票で任命するベネズエラがある。政府が国会の同意を得て任命するバルバドス、マルタがある。政府が単独で任命するドイツ、香港、スリランカ等の国がある。最高裁が任命するコスタリカ、トルコ等がある。多くの国の場合、政府が指名し、国会が承認する。または国会と政府両方が指名し、決定する混同制度を採用されている。

モンゴルは選挙管理委員会任命制度としては三権分立を保っているが、選挙制度自体が選挙管理委員会の独立を妨げている。二党政治体制が確立しているため、与党となった政党がこれを決定し続けてきた。最も良い方法は混合制度だ。国会に議員を置く4つの政党がそれぞれ意見を出し、指名できる制度にすべきである。また、通常過半数ではなく、絶対多数で任命すべきだとされる。選挙管理委員会の任命経緯は常に公開され、国民がそれに対し意見を表明できる制度にしなければならない。国民の疑惑を招くことを避け、任命要件、辞職原因が明確でなければならない。 選挙管理委員会は政党を管理する権限を持たなければならない。選挙費用報告書も審査すべきだ。イギリスでは、選挙管理委員会は政党の資金を完全に管理している。資金源を明らかにすることを義務化し、その説明を選挙管理委員会が国民に対して報告する。民主主義の確立、自由かつ公平な選挙のために、モンゴルでも選挙管理委員会は政党を管理する権限を持たなければならない。