インターネットは人々の生活に革命をもたらした。今日では政治、経済、社会、私たちの日常生活すべてにおいてインターネットなしには想像できない。そして、そのインターネットで次のような革命が起きようとしている。

世界中で人工知能(AI)、ブロックチェーン(Blockchain)、モノのインターネット(IoT)、クラウド(Cloud)、ビッグデータ(Big Data)などの新しい言葉がマスコミによって日々取り上げられている。これらの中で、ブロックチェーンとは基礎的概念であり、いわばこれらの技術の基礎となるものである。人々はインターネットを通じて情報を共有し、その情報はネット上のサーバーに保管されてきた。

その情報は、しばしばハッカー(Hackers)が不法にコンピューターシステムに侵入して盗用したり、削除したり、改ざんしたりするリスクにさらされてきた。しかし、情報(データ)がブロックチェーンで運用されることによって、高度なセキュリティを持つようになり、改ざんは不可能になる。こうしたことによって、以前は不可能だった新しい消費、新しいアプリが作られ、新たな経済活動、人間の生活に革新的な変化をもたらす。

インターネットが世に普及し始めた頃と同じように、最初は人々がブロックチェーンとそのしくみを理解するのに時間はかかるが、人々が理解し、その勢いが主流となるのはそう遠くない。蒸気機関の発明が産業革命を引き起こしたように、今ではブロックチェーンが新たな産業革命の礎となる。

ブロックチェーン・モンゴリア

私たちはインターネットを通じてテキストメッセージ、動画などのデジタル情報を、場所や時間に関係なく瞬時に伝達、交換できるようになった。同様にブロックチェーン技術はインターネットを基盤に、価値のある通貨、株、債券などの資産(asset)の送受信を、仲介者を必要とせず互いに確実な方法(secure way)で瞬時に実行できる機会をもたらした。これは「価値のインターネット」(Internet of Value)と言われている。

ブロックチェーン技術に基づいた金融手段が形成され、不動産投資などの外国投資家を誘致するために取り組んでいる企業がモンゴルに出現してきている。例えば、有限会社トラスチェーンがある。ブロックチェーンやその他の技術を活用して投資家を誘致し、新しい金融商品を開発するビジネスは、モンゴルでますます勢いを増している。今では、短期マイクロローンを無担保で交付しているLendMNArd AppKmobi、Numur。クラウドファンディングの仕組みで融資を行うCrowd asset。P2P(peer to peer)で融資を行うzeel.mn。あたかも財布で支払うように決済を行うMost MoneyCandy Pay。また、デジタルバンクのMbankなどの約20社が金融技術サービス(フィンテック)を提供している。この中で一部の企業は外国で銀行を買収し、外国での投資も始めている。

外国投資の4分の3を占める鉱業分野において、投資家へ安定したビジネス環境を提供できていないモンゴルにとっては、経済の多様化、つまり鉱業分野以外で国際市場に打って出る必要性に迫られている。そしてこのタイミングでブラジルの連邦政府下院議員、日本、韓国、香港のフィンテック協会理事、フィンテック及びブロックチェーン技術の企業代表者約50人の外国人起業家たちが5月9日~11日にモンゴルに集まった。

モンゴル・フィンテック協会は、「フィンテックの未来」と題して、初めて「フロンティア・フィンテック・サミット2019」という国際会議をモンゴル外務省や金融規制委員会のサポートを受け、首都ウランバートルで開催した。

この会議に私はモンゴル・フィンテック協会の会長として参加した。世界中で急速に発展している技術、特にブロックチェーン技術をモンゴルが活用することにどの様なメリットがあるのか、どの様な問題を解決できるのかを社会全体で話し合う時代が到来している。

ブロックチェーンはどうして重要なのか?

ブロックチェーンは新しいインターネット技術である。既存の技術とはいくつかの異なる点がある。まず、ブロックチェーンはより公開的で、集中的ではない。改ざんは不可能でセキュリティー対策が十分である。ユーザー同士は直接取引ができ、第三者の仲介を必要としないなどのメリットが多くある点で異なる。

モンゴルでは、ブロックチェーン技術はビットコインという1つの金融商品を通じて知られるようになり、巨額な資金を簡単に得る方法としてしか見られていない。ブロックチェーン技術とビットコインは切り離せない関係だが、ビットコインはブロックチェーンを利用する700もの商品の中で初めて成功を収め、公に知られたものである。ビットコインは金融、特に決済分野において、実に新しいソリューションをもたらした。しかし、それを動かす基礎的な仕組みとなるブロックチェーン技術は、実に幅広い分野で活用できる本格的なイノベーションである。

ブロックチェーン技術は、簡単に言えば「当該データにおける変更1つ1つを記録し、保管する分散型データベース」と理解できる。1つの場所に集中したデータベースはハッカーによる不正侵入やデータ改ざんなどの多くのリスクにさらされる。しかし、ブロックチェーンを活用することによって、いくつかのデータ集合(ブロック)が鎖(チェーン)で連結し、追加される最新データを保管する。当該ネットワークの会員なら誰もが、どこからでもログインし、そのデータの変更を見ることができるように公開形式となっている。

ブロックチェーンは私たちが生きている社会、経済活動に幅広い変化をもたらす「創造的に破壊し、改革する」技術と見ることができるだろう。

ブロックチェーンはモンゴルにどの様なメリットをもたらすのか?

この技術は、モンゴルのように新興国において腐敗対策、政府と市民社会間の透明性向上、さらに政府機関の段階的活動、非効率性を減らすための様々なソリューションを提案し、発展の遅れを補う機会をもたらす。

ブロックチェーンはビジネスの基本的なプロセスの自由化、金融へのアクセスや持続性、サービスを構築するのに重要な役割を果たすことができる。エストニア、フィンランドなどの国では、ブロックチェーン技術を積極的に導入している。これらの国では、電子選挙、土地や不動産の所有、所有権の譲渡、また保健情報の登録システムでブロックチェーンを導入し利用している。

WallmartAmazonIBMInfosysMicrosoftAppleなど多くの世界的企業がブロックチェーン技術を主なビジネス活動に利用するようになっている。 創造的な破壊、つまり古くなったものを新しい技術で置き換え、高い効率性を図ることが可能になってきている。

ダムバダルジャー・ジャルガルサイハン