30年前、モンゴルに政党は1つしかなかった。それが2018年に政党の数は29となり、その1年後には33にまでなっている。政党は、選挙で争い、勝利して政権を握る。それ以外でも、国民の政治参加の向上を促進し、選挙のない時でも国民の声に耳を傾け、国民の意思を代弁する義務がある。モンゴルに政党の数は増えたが、その質や成熟度においては、まだまだ十分とは言えない。また、政党は国民を代表するというより、秘密クラブとして存在している。

デファクト研究所は、独立組織として昨年、政党の公開性、透明性、責任感、政党内の党員、国民による監視や圧力を強化させるために調査を実施し、「モンゴルの政党の民主主義指数」を公表した。今回、2回目となる調査を2019年の4月から6月にかけて実施した。

政党の民主主義指数を、①党員の参加、②党内の競争、③代表、④財源の透明性といった4つのカテゴリーで調査し、0〜100点で評価した。このスコアが0〜30点は非民主主義、31〜60点は半民主主義、61〜100点は民主主義と区分した。

昨年のデファクト研究所の調査では、民主党人民党、人民革命党、全モンゴル労働党、市民の勇気・緑の党、祖国党の6党が協力依頼に応じた。2019年はこの6党に加えモンゴル緑の党、真実と正義の党が参加し8党となった。 その他の政党は連絡が取れない、もしくは調査への回答を拒否した。

昨年は、各政党の党員との電話による定量的調査を行い、質疑応答の形で実施した。そして、質的調査は専門家のインタビューで実施した。今年は調査方法をより充実させた質的調査の方法を用いた。

政党は私設クラブではない

調査チームは、政党の基本理念の有無を確認した。人民党、民主党、人民革命党、モンゴル緑の党などは、政党の基本理念をホームページに掲載していた。全モンゴル労働党は基本理念を調査チームの要望に応じ提供した。真実と正義の党は、「他の党が自党の理念を真似する」という理由で提供しなかった。

調査チームはまた、政党の届出を受理する国家最高裁判所に登録情報の開示請求を行った。しかし国家最高裁判所は、「国家登録法12条5項に従って、政党の詳細情報を開示する際には、当該政党の書面による許可が必要である」という理由で、政党に関する情報を一切開示しなかった。民主主義が発展した国では、政党および公共機関について国民の知る権利が保障されている。例えば、ドイツの政党法6条3項に「政党の基本理念、活動プログラム、政党の代表中央機関および地方機関の決定権を持つ者の氏名や、義務に関する情報、それらの写しを国民に無料で公開する」とある。

本来、政党はその活動内容をはじめ、基本理念、党規則、財源などの情報を国民に透明性をもって公開しなければならない「公共機関」である。最低限、政党の基本理念を公式ホームページやソーシャルアカウント上に誰もが閲覧できるように掲載しなければならない。

政党の変化

今年、第42選挙区の国会議員補欠選挙が行われた。この選挙への立候補者の選定のため、あらゆる層の党員の参加は積極的になった。また、今年は2020年に行われる国政選挙の前年ということも影響していると見られる。各政党は大小様々な会議を開き、実際、党員の党活動への参加は増えている。 昨年の調査に参加した6党に、具体的にどのような変化が起きたかを表2に示す。4党の党内民主主義は改善しているが、2党(祖国党、市民の勇気・緑の党)の党内民主主義は弱体化している。

表2. 2018年と2019年の政党の民主主義指数の比較

カテゴリー別に見ると、「党員の参加」項目において、各政党とも党内で政策議論を行うことが弱い。政党の内部問題を議論する場は多数あるが、政党の政策を決める際に党員や党支持者の参加が少ないことが、各政党に共通して見られた。

「党内の競争」において、2019年に国会議席の過半数を獲得した人民党、少数政党となった民主党両党に、党内の民主主義を悪化させる出来事がいくつかあった。この2党は、一部の党員を「党の団結を著しく毀損した」という理由で、党員資格を剥奪した。記憶に新しいところでは、J.バトザンダン国会議員が民主党から除名され、民主党は国会において政党派閥要件を維持できなくなった。

人民党は、党の団結、党の決定に反し市長選に立候補したS.ムンフチョローン市民代表議会議員を除名した。モンゴルでは、政党の政治委員会、もしくは管理委員会にいる一握りの人たちが、誰がどの役職に就くかを決めるようになっている。

政党は、社会のあらゆる層の人材を党員として確保しなければならない。各政党は党内に青年部会、高齢者部会、女性部会といった各部会はあるが、国会議員はもちろん、政党の意思決定を下す役職にも女性の参加が不十分である。

モンゴルの選挙法には、政党の立候補者のうち20%が女性でなければならないとある。一部の政党は、党の基本方針として女性議員の割合を増やすことを目標に掲げているが、現実には達成されていない。

表3. モンゴルの政党の内部民主主義指数2019年(カテゴリー別)

また政党法では、政党の財源、資金収支に外部監査を実施し、一般に公表することを義務付けている。この法律に基づいて財源を公表しているのは、全モンゴル労働党とモンゴル緑の党の2党のみで、いずれも公共に対する透明性や公開性において良いスコアを築いている。この2党は、ホームページやソーシャルアカウント上に監査後の会計報告書を掲載している。

他の政党は、透明性や公開性を党員や党内のみに公開するものと見る傾向が強い。昨年、各政党は半民主主義という区分に該当していたが、今年はモンゴル緑の党、人民革命党、民主党、全モンゴル労働党などの政党は「民主主義」の区分にランクインした。しかし、調査の各カテゴリーにおける各政党のスコアには開きがあることを注意しなければならない。

モンゴルの政党は、より成熟する必要がある。

ダムバダルジャー・ジャルガルサイハン

モンゴルの政党政治:日本の国会に当たる「国家大会議」があり、一院制で定数76、任期は4年となっている。次回の選挙から議員定数を増やす動きがあり、ほぼ既定路線と言われている。前回の選挙が2016年だったので2020年が国政選挙の年となる。モンゴルの政権与党は、国政選挙の度に選挙法を改正するので、毎回選挙結果の正確性をめぐる議論となっている。2016年の選挙では民主党のスキャンダルもあり、それまで野党だった人民党が65議席を獲得する圧倒的勝利に終わった。モンゴルでは昨今、人民党と民主党の二大政党が政権を握ってきたが、どちらの党もスキャンダルが絶えることがなく、論説記事にあるように、最近では多くの政党が雨後の筍のように出現してきている。中山拓