国の経済力を測る数字として国内総生産(GDP)がある。GDPは「その国で一年間に生み出された付加価値の総額」のことで、これには人口の多少によるところが大きいが国単位での経済規模を端的に表している。GDPも金額ベースで評価する名目GDPと数量ベースで評価する実質GDPの2つがある。

モンゴルのここ数年のGDPの変化を見て見ると、名目GDPでは2007年は4兆9560億トゥグルグだったのが2017年には27兆1670億トゥグルグと5倍以上となっている。しかし、同じ期間で実質GDPを見ると8兆6100億トゥグルグから16兆8490億トゥグルグと1.95倍となっている。名目GDPは物価の変動が反映される数値となるため、この10年インフレ傾向にあることが伺える。それでもこの10年の消費は倍近くとなり新興国らしい経済成長率となっていることが実質GDPの変化から読み取れる。

より実際の経済成長に沿った指標としてGDPデフレーターがあり、これは「名目GDP÷実質GDP」という数式で表される。この数値が1以上だとインフレ傾向、1未満だとデフレ傾向にあるとされる。2007年は0.57だったのが2017年は1.61となっている。モンゴルのGDPデフレーターが1以上となったのは2010年からだ。

モンゴルの国内で見てみると、消費者物価指数は2010年12月を100とした時、2016年末の時点で159となっている。特に2013年の第4四半期から急激に上がっている。中国経済の減速が影響したからだ。

2013年の国内の産業生産は10兆4400億トゥグルグで、そのうち6兆1000億トゥグルグが鉱物資源の採掘によるものだ。産業生産の6割を鉱業に頼っていて、その割合は今日でも変わっていない。鉱物資源の主な輸出先の中国の景気に左右されやすい事がわかる。さらに資源価格の変動や通貨トゥグルグの為替も敏感に反応する。

鉱業以外の主要産業である農牧業を見てみると、家畜頭数は2007年の4,000万頭から2017年6,600万頭へと1.6倍以上に増えている。しかし家畜の総価格は3倍となっている。たしかに家畜の中でも羊肉はトルコやイランなどへ輸出されている。食肉処理はモンゴル国内で行われるが、イスラム圏向けに特別に処理されているので需要は高い。

それでも供給量増加を上回る価格上昇は、インフレ率増加によるところが大きい。国内にめぼしい製造業がなく多くの製品を輸入に頼っているからで、モンゴルでは産業の多様化が大きな課題となっている。それでも人口の10%が25〜29歳と若く、さらに10歳以下の人口は20%以上という構成となっている。モンゴルの2017年の経済成長率は5.07%で世界38位だ。そして今後5年間の予測では年5%成長を維持すると見られている。今後、成長する可能性は秘めている。

中山拓