ゲイリー・ホー氏はイギリスのオクスフォード大学で経済学修士号を取得しました。中国の天津市と北京市でロジスティクスの、また広州市にある科学パークのマスタープラン作成にあたりました。マレーシアとブルネイ・ダルサラーム国境間の大陸輸送開発のマスタープランなどアジア15ヵ国で生産、科学技術パークの開発プロジェクトに携ってきました。また、ラテンアメリカの自由貿易、スマート都市開発計画プロジェクトにも参加した実績があります。ゲイリー・ホー氏は一帯一路プロジェクトの一環であるブルネイ−広州市間の経済回廊プロジェクトの主事、また、マーガレット・サッチャーの民営化プログラムの顧問も務めました。
J(ジャルガルサイハン): こんにちは。あなたは最近モンゴルのいろいろな地方を訪れています。その目的は何ですか?
ゲイリー・ホー: 私が見る限りでは、モンゴルは地域戦略的計画を立てるべき国だと思います。私は先日、モンゴル西部地域の各県を周りました。モンゴルは多くのリソースを持っている国です。農林水産業及び天然資源のリソースが豊富ですから、外国が注目するのと同様にモンゴル自身も注目すべきだとみています。
J: 今あなたが話していることはモンゴル西部の農産品の地域戦略政策についてですね。より具体的に説明して頂けますか?
ゲイリー・ホー: 農産業、なかでも畜産業、馬や牛、ラクダといった家畜を使った製品は大自然がもたらす恵であり、これらは世界中で需要の高い健康食品の生産に応えることができると思います。そしてこれは、モンゴルの畜産業のみではなく、地域植物などの農産業も利用できます。
例えば、モンゴルの厳しい気候の中で育った植物から薬の成分を含んだ製品を出すことができます。これは他の国が生産するものよりオーガニックであるという性質を持っている点で異なります。これらは、ハラール・フード(Halal food)のいくつかの条件を満たすことができます。
J: あなたはブルネイ・ダルサラームでの仕事の経験もおありです。あなたの会社について簡単に説明してください。
ゲイリー・ホー: 我々SQW China社はアジア太平洋地域で活動していて、主にマネジメントコンサルティングを顧客に提供しています。民間企業や政府に対して専門的なコンサルティングサービスを提供している会社です。私たちはアジア太平洋地域で国家および民間レベルでの投資計画を立案し、投資条件に適したプロジェクト計画を提供しています。
また、私たちは主にアジアを中心に活動をしています。現在、アジアの10ヵ国と協力して活動を行っていて、そのほとんどがブルネイ・ダルサラームで行われています。私たちは8年前から豊富な原油埋蔵量を誇るブルネイ・ダルサラームで、原油生産以外の分野で多様化を図る活動をサポートするために水産業分野にバイオテクノロジーの導入を実施しています。
J: 農産業分野の発展はモンゴルに欠けていることです。私たちは農産業の分野をどのように発展させていくべきかについて、方針を見いだせていません。モンゴルの西部地域の農牧業についていうならば、主要な製品として牛肉が挙げられます。
ゲイリー・ホー: モンゴルの牛肉、羊肉、山羊肉はとても品質の高い製品です。私はアジア大陸、とりわけブルネイ・ダルサラームでの仕事が長いです。私たちはそこで製品の品質を改善させるために、ムスリムの人々と協力しました。私たちのこの活動は単に宗教に関係しているのではありません。生きている天然由来のナチュラル健康食品の基準を普及させることにありました。
J: ハラールという言葉は人々に広く浸透してきています。しかし、私たちが知っているハラールと違うところは何ですか?また、ハラール認証を受けるために必要なものは何ですか?
ゲイリー・ホー: まず、イスラム教に則って家畜に正しい飼料を与えます。製品に害の及ばない適した自然の飼料を与えることです。そして、人々のニーズに応じた良質な製品を生産しなければなりません。こうした細かい制約を守ることにより、生産される製品を高品質なハラール・スダンダートとして作ることができます。このハラール・スダンダートに慣れた私は、モンゴル西部を訪れた時に感銘を受けました。その理由は、モンゴル西部の土壌は手つかずの自然だったからです。この場所で育った山羊の肉はとても高品質です。肉だけではなくミルクも同様です。もちろん、牛肉もとても品質が高い。また、ラクダ、馬、ヤクは、私たちが見てきた中でもとても高品質な製品です。
J: あなたが見てきた通り、モンゴル西部のような広大な土地はインフラコストが高くつきます。そしてあらゆる繋がりを減少させています。これが経済において主要な問題でもあると思います。モンゴルの遊牧民は、互いに5、10、20キロ離れて暮らしています。例えば、彼らが互いの家に行くことは、経済的に影響を与えていると思いますか?
ゲイリー・ホー: そのとおりです。地理的に見るとモンゴル西部は、ヨーロッパの多くの国より大きいですからね。
J: モンゴルの国土面積は実際の中国よりも大きいです。(2人とも笑う)
ゲイリー・ホー: そのとおりです。私が思うには、我が社の投資マーケティング研究に沿って特定の数ヵ所、つまり各県に特定の製品生産に重点を当て特化させることです。例えば、ある県は薬草などの植物生産に力を入れ、またある県は牛、馬、ラクダなどの畜産業、別の県では山羊や羊だけの畜産業を営み、それぞれの地域に専門を特化させた施設を建設して取り組めば、各県で付加価値の高い製品の生産が可能になると思います。
これによって、原料を外国市場に輸出するだけではなく、競争力のある製品を生産することができます。付加価値のある製品を生産することにより、モンゴル農牧業の経済的価値があがり、様々な製品を国内生産にすることができると思います。
J: どんな製品がありますか?例えば、肉の場合は?
ゲイリー・ホー: 例えば、ミートパック、燻製肉などがあります。私たちの計画ではスープや特別な調味料を作ることができると考えています。地図を見ると、モンゴル西部は中央アジアの中心に位置していることがわかります。地理的にはモンゴルとロシアの国境をヤラント国境検問所が繋いでいます。このルートは中国の新疆ウィグル自治区へ繋がる橋となります。
もし、私たちが国のインフラ整備への投資を正しく行うことができれば、中国の甘粛省まで繋ぐ道を作ることができます。こうなると中国の高速道路を通り、製品の品質を維持した輸送、また輸送効率が上がります。このように外国に製品を輸出するたくさんの可能性があります。また、モンゴル東部地域から中国天津市へ製品を輸出することも可能になるでしょう。
J: 天津市までも高速道路が通っていますか?北京ではなく東部へ出るということですか?
ゲイリー・ホー: 北京を経由して天津へ抜ける道です。
J: どんな輸出ルートが考えられますか?
ゲイリー・ホー: もちろん、輸送先の選択肢は他にも色々あります。例えば中国の河南省の鄭州市などがあります。そこからアジア諸国へ製品を輸出することができます。
J: つまりあなたが言っていることは、天津市を経由して製品を輸送することはコスト的に高いため、新しい輸送ルートを提案していると理解しても良いですか?モンゴルに輸入されているすべての製品は天津を経由して入ってきています。天津からウランバートルまでの輸送費は、天津からヨーロッパまでの輸送コストの2倍です。これまであなたの話を聞いて、あなたはとても大きな変化を起こそうとしているように見えます。そしてすべての食材をハラール・スダンダートで生産するということですね。
ゲイリー・ホー: そうです。しかし、私たちはハラールだけではなく、他の製品も扱っています。私たちの主な目的である付加価値の高い製品のためにハラール・スダンダートを活用しようということです。これについて私たちは、モンゴルの地方自治体や政府に提案しています。私たちは前向きな回答をもらえると期待しています。
J: モンゴル政府に対してどの様な支援、サポートを期待していますか?これは単に店に入って商品を売ったり買ったりすることとは違います。あなた方が期待することは何ですか?
ゲイリー・ホー: モンゴル政府は、地方農家の現状を地理的規模に関連づけて理解しています。従って、農家の負担をどのように軽減できるか、また私たちと協力するための仕組みをどのように作っていくかについて検討することを期待しています。なぜなら、生乳をどのように集めるか、肉製品やフェルト、カシミアの生産をどのように改善していくか、その技術的な課題を克服するために私たちと協力して新しいシステムを構築する必要があると思うからです。フェルトやカシミア製品の生産はとても重要です。そこには原料を採集する過程で皮革を傷つけるなどの技術的な課題もあります。
私たちは乳製品の品質を落とさずに加工することや、高品質なフェルト、カシミアを精製すること、そのためにモンゴル政府と地方自治体と協力して優れた技術を作ろうと思っているところです。またもう1つ重要なことは、農家の規模に関係なく統合し、政府や私たちと協力し、団結することによって事業効率を上げたいと思います。組織的に取り組む扉を開く時が来ていると思います。
私たちがそれよりも重視していることは、個人、中小企業、みんなが団結する共同事業を促進することです。私たちはこの共同事業を集中して実施できると思います。
J: 個人や企業をどのように団結させますか?そのために何を利用しますか?
ゲイリー・ホー: 経済的なアドバンテージを得ることが1つです。全員が大きな組織の一員として取り組むことです。製品がハラール認証を受けることを目的とし、所有形態を問わず全ての企業が協力して生産にあたることです。そして彼らに輸出入業務についての知識を与え、この統合企業がアジア諸国から注文を受ける形を築くまでサポートします。
ゲイリー・ホー * ジャルガルサイハン