モンゴルが上海協力機構にオブザーバー国として参加しはじめてから15年になる。上海協力機構で最も影響力をもつロシアと中国は、モンゴルに対して同機構への加盟を呼びかけてきた。モンゴル大統領は加盟への意向を明らかにするようになったが、モンゴルのような民主主義の国では、最終的な決断を国民の支持を得ずに下すことは不可能である。なぜならば、民主主義国家では、政府の如何なる決定も国民の承認が必要で、国民はその意思を次の選挙で政府を交代させるという行動で表明することができる。

そのため、モンゴルが上海協力機構に加盟することで国内に及ぼされる影響は何か、どのような試練が待ち受けているのか、加盟を急ぐ必要があるのかなど、市民社会という国民の声を十分に理解するには、短命な政権にとって時間的に難しい。それにモンゴルは、隣国であるロシア、中国と戦略的パートナーシップ協定を締結したと宣言している。しかし、大きなプロジェクトが何一つ実施されることなく、締結から10年という月日が経っている。これが国民に上海協力機構への疑問を抱かせ、両国への信頼を低下させている。

モンゴルは、地理的に世界の2つの大国に挟まれた位置にあり、広大な土地を有していながらも人口が少ない国である。私たちにとって、経済と安全保障は最重要課題である。しかし、モンゴルはこのロシアと中国との二国間、もしくは三国間の関係において、何ら具体的な取り組みを行うことができていない。そういった背景から、多国間関係、つまり地域における協力組織に加盟すれば、具体的な結果が出るとは信じられなくなっている。

上海協力機構の拡大と試練

1990年のソビエト連邦崩壊によりできた中央アジアの新しい国々は「国境地帯における軍事的信頼強化」を図る必要性に迫られたことが、上海協力機構設立の発端である。現在、上海協力機構には、メンバー国8ヵ国、オブザーバー国4ヵ国、対話パートナー国6ヵ国が参加しており、18ヵ国の首脳たちが毎年集まり会議をする大規模な組織となった。

上海協力機構の発足当初の目的は、ユーラシア大陸の安全保障の確立であり、まず三つの悪、つまりテロリズム、分離主義、過激主義(terrorism、separatism、extremism)と戦うことだった。しかし今日では、経済の多角的な協力活動の推進を目指している。

だが実際には、中国のイニシアチブで、中国単独で開発に伴う融資を行う一帯一路構想以外に、実施されていることはあまりない。三つの悪と戦う地域対テロ機構(RATS:Regional Anti-Terrorist Structure)を設立しても、諜報活動による情報も十分に共有されていない。また、テロリズムの定義について、メンバー国は統一した見解を持つに至っていない。

上海協力機構にインドとパキスタンが加盟したことによって、特にインドは、人口の大半がイスラム教徒であるジャンムー・カシミール州の自治権を剥奪し、軍事力で支配するようになった。これがメンバー国間でのテロリズムについての定義の相違をより深めている。 インドとロシアは、相互軍事協力関係にあるパートナー国である。アメリカの反発にも関わらず、インドはロシアから防空ミサイルシステム「S400」を購入した。今でもインドの軍事武器の殆どがロシア製である。また、インドとロシアが共同で建設した6つの原子力発電所が間もなく稼働するところである。さらに両国はウラジオストクで6つの原子力発電所を建設する契約を締結した。

パキスタンと中国は、より緊密なパートナーである。パキスタンは、1947年以降インドとの間で領有権争いが続いているカシミール地方の領土の一部を1962年に中国に割譲した。ロシアはインドを、中国はパキスタンを支援し、いがみ合う両国を上海協力機構へ同時期に加盟させたと言われている。

インドの経済成長率は年間7%となっており、深刻なエネルギー不足に陥っている。そのため、中央アジア、ロシアの天然ガスや石油資源を当てにし、今後はユーラシア経済連合にも加盟する思惑が見える。上海協力機構への加盟は、インドにとって実利的な意義がある。

中国とインドは、昔からのライバル関係にある。インドは中国の一帯一路構想について、中国が自国のみの経済を拡大させる政策であり、非公開的なプロジェクトであると見ている。そのため、インドは上海協力機構での一帯一路構想についての話し合いを好意的に思っていない。

インドは、アメリカ、オーストラリア、日本と締結した「自由で開かれたインド太平洋戦略」契約があるので、海運物流の安全性を継続的に守る義務がある。これらの国々は、中国が違法に実効支配している南沙諸島に軍事施設を建設したことを非難している。インド人研究者のアトゥル・バルドワジ氏は、インドについて「片足を中国が漕ぐ船に、もう片足をアメリカが漕ぐ船にまたいで立つようになった」と例えている。

その中国とアメリカは、互いに歩み寄ることはない。地政学的には離れてはいるが、両国は貿易、技術の分野で争っている。

またロシアとアメリカ、ヨーロッパ諸国の関係、特にロシアに対する経済制裁は、原油の市場価格に左右されているロシア経済に圧力を与えている。そのため、通貨ルーブルの価格は不安定になり、国民の生活に明らかに悪影響を及ぼすようになった。

モンゴルの立場は変わるのか?

上海協力機構は、中国とロシアの双方が主導している組織である。モンゴルは、上海協力機構に世界で最も大きな民主国家であり、軍事力が強大なインドが加盟したことによって、これから状況がどう変わっていくのかを慎重に見極める必要がある。まず、上海協力機構の公用語である中国語とロシア語に加えて、英語を公用語にするというインドの提案を、上海協力機構が受け入れるかどうかが興味深い。そしてこれは、アフガニスタンやイランが上海協力機構へ正式加盟することを促し、両国が積極的に同機構に取り組む一つの要因となる。もしイランが上海協力機構へ加盟すれば、ロシア、中国、インドに加えて、政治的にみても世界最大の共同体となる。

世界地図を幾つもの地域に分けるようになっている現在、モンゴルのような小国は、どれか一つの共同体に率先して加盟する必要はない。これは莫大な資金、強大な経済力や軍事力を持つ大国の取り組みである。他方、モンゴルの経済は小規模であるだけでなく、政治は安定していない。政権は頻繁に変わり、長期的な決定をする条件が整備されていない。

また、モンゴルの民間企業は地域レベルでビジネスをするに至っていない。モンゴルは、上海協力機構に加盟する決定を出す前に、広く多角的な視点に立って協議を続けることが妥当である。それまでは、隣国のロシアと中国と経済、環境、麻薬取締において協力し、二国間もしくは三国間での協力関係や、その仕組みを効率的に機能させていく必要がある。 そして、上海協力機構のオブザーバー国としての活動範囲や機会を十分に活かし、可能な限りすべての面で協力して行き、これから国際的に活躍できる人材を養成することを重視しなければならない。

ダムバダルジャー・ジャルガルサイハン