Dai Xingjun氏は中国武漢大学工学部で学士号を、武漢大学国家経済マネジメントで修士号を取得しました。彼は中国銀行の内モンゴル自治区支店の副支店長、同行山東省支店のマネージャー、決済分門の部長を務めました。2012年から中国銀行ウランバートル駐在員事務所の代表を務めています。
J(ジャルガルサイハン): こんばんは。まず、視聴者の皆さんに自己紹介をお願い致します。
Xingjun: 私は中国の青島市から来ました。青島市は中国の南海岸に位置し、自然が美しく、ビールで有名な都市です。
J: そうですね。私もそのビールを知っています(笑)。
Xingjun: はい(笑)。私は工学の学士号と経済学の修士号を取得しました。私は1996年から中国銀行で働き始めました。私は中国銀行の山東省支店や北京支店に務めていました。モンゴルに来る前に同銀行の内モンゴル自治区支店に勤めていました。
J: 内モンゴル自治区の支店に務めていた時にウランバートルに来たということですね?
Xingjun: はい、そうです。2012年のことです。
J: 中国銀行(Bank of China)について説明して頂けますか?
Xingjun: 中国銀行(Bank of China)は、1912年に設立されました。設立当初から1949年まで、当時の中国の中央銀行の役割を担っていました。2006年に中国銀行(Bank of China)は、香港と上海の証券取引所へ上場することに成功しました。2018年末時点で、中国政府は中国銀行の株式67%を保有しています。残りの33%は他の株主が保有しています。
J: 他の株主は誰になりますか?
Xingjun: 多数の民間企業や個人投資家です。現在、中国銀行は世界の主要先進国や新興国に600支店を開設しています。アジア太平洋地域には26支店を様々な国に持っています。中国銀行は、国際的な巨大銀行として、全ての顧客に総合的な金融サービスを提供しています。そこにはカスタマーサービス、法人向け金融サービス、保険、資産管理および航空機リースサービスなどが含まれています。新しい市場において、中国銀行は貨物輸送、都市計画、再生可能エネルギーなどのプロジェクトに取り組んでいます。
J: 中国銀行(Bank of China)のモンゴル進出のきっかけは何ですか?
Xingjun: 近年、モンゴルは新興市場として注目されています。さらに、モンゴルの経済成長は世界の注意を引いています。こういった背景から、私たちはモンゴルの将来に大きな可能性があると考えました。過去20年の間で、モンゴルと中国の二ヵ国の企業、経済関係、協力活動はより拡大してきました。私たちは今後も、両国企業の協力活動をさらに拡大させるために貢献したいと思います。中国銀行は、一帯一路構想のプロジェクトにおいて豊富な実績があります。モンゴルも同様に一帯一路構想に対しては戦略的かつ積極的な参加国であり、中国銀行がモンゴルで活動を展開する大きな機会を与えてくれました。私たちは、中国銀行がモンゴル国内で成功することを信じています。私たちはモンゴル国内の商業銀行や国際金融機関と協力して、モンゴル経済に大きく寄与することができます。
J: 中国銀行がウランバートルに駐在員事務所を置いてから、どういった活動を行っていますか?
Xingjun: 中国銀行ウランバートル駐在員事務所は、2013年に正式に開所しました。開所以降、モンゴルに子会社を置く準備を始めました。また、これに並行して、私たちは中国銀行の他の支店やモンゴル国内の商業銀行と積極的に連携し、協力してモンゴルの一部企業に資金面でのサポートを提供しています。加えて、中国銀行はウランバートル駐在員事務所を足掛かりに、2013年末にはモンゴルと中国の企業と共同で「中国・モンゴルの言語文化教育・社会発展基金」を設立しました。現在、この基金には総額100万ドルの寄付金が集まり、110件の支援活動を行っています。
J: 110件の支援活動は具体的に何をする活動ですか?
Xingjun: 同基金が定期的に実施している活動の1つは「暖かい冬」というプロジェクトです。このプロジェクトでは、各家庭に寒い冬の期間に必要なものを寄付として提供しています。この他に、同基金は教育分野を重視しています。毎年200人の学生に奨学金を交付しています。現時点では、モンゴルに4,500人の学生や家庭が、この基金の様々な支援を受けています。
J: 中国銀行はなぜ未だに銀行業ライセンスを取得できないのですか?主な原因は何ですか?
Xingjun: 私たちは、銀行業ライセンスが交付されるのをとても長い間待っています。モンゴルは、中国銀行がモンゴル市場へ進出することを警戒しているように感じます。また、モンゴル社会には、中国政府が多くの分野でモンゴル市場に過度に参入していると心配する声もあります。モンゴル国内の一部商業銀行は、外国の大手銀行が国内市場に入って来て競争が起きることを恐れています。私は、個人的には政治家が様々な分野の人の意見を聞くことは当然だと思うし、良く理解しています。ですから、このような国内の警戒心や心配を考慮しながらモンゴル政府は法律を作成し、外国銀行がモンゴルで活動ができる法的環境の整備に取り組んでいます。
J: 中国銀行は、世界最大の銀行の1つです。中国銀行はモンゴルの国家安全保障において、何らかの悪影響を与えますか?このことに関してあなたの意見をぜひお聞きしたい。
Xingjun: この問題については、多くの政治家や国民が考えていることと思います。正直に言うと、私は中国銀行がモンゴルの国家安全保障に悪影響を与えるとは全く思いません。第1に、モンゴルは独立した国家です。中国銀行がモンゴル国内で行うあらゆる活動は、モンゴル銀行(中央銀行)の監視下で行われています。第2に、中国銀行はモンゴルで活動する際に、必ず関連するモンゴル国税法、労働法、出入国管理法および政府エージェンシー機関が制定した法律、規定を遵守する義務があります。第3に、中国銀行が世界中の国で誇りをもって活動をしている大銀行として、私たちのあらゆる活動は透明であることを重視しています。私たちは、モンゴルの監督機関の指示に従って、定期的に自分たちの業務内容を報告しています。中国銀行は、モンゴルの国家安全委員会から出された決定に従って活動しています。モンゴルの法律に違反し、国家の安全を脅かすような行為は一切行わないと言いたいです。
J: 中国銀行がモンゴルへ進出することに対し、モンゴル国内の商業銀行は懸念しています。これについてあなたはどう思いますか?
Xingjun: 私は金融業界に長年勤めてきた者として、モンゴル国内の商業銀行やその株主たちが何を心配しているかを良く分かっています。もちろん、中国銀行がモンゴル国内の商業銀行と平等な立場で競争する場合、当然彼らは懸念すると思います。過去数年間、中国銀行は独自の持続可能な開発計画を策定しました。これは私たちのモンゴル市場における立場でも変わりません。
J: それは中国銀行が、モンゴル市場での自分たちの戦略を策定したと捉えてもかまいませんか?
Xingjun: はい、そのとおりです。この戦略を下に、私たちの活動範囲は大規模戦略的プロジェクトおよび国際貿易を行う企業に対して資金を提供するということです。
J: モンゴルの商業銀行とどのような協力を行いますか?
Xingjun: 大規模戦略的プロジェクトの資金に関しては、私たちはモンゴル国内の商業銀行と手を取り合い、シンジケートローンを交付し、共同で顧客に金融サービスを提供します。ここでもう一度強調して言うと、中国銀行はモンゴルの中小企業および民間に銀行サービス、トゥグルグ預金および融資サービスを提供しません。
J: なぜ預金サービスを提供しないのですか?
Xingjun: これはモンゴル国内の商業銀行との競争を回避していることの表れです。現在、モンゴル国会で審議されている「外国銀行法」には、モンゴルで活動を行う外国銀行の活動範囲が制限されることになると思います。また、もう1つ明確に言うべきことは、中国銀行に交付された銀行業ライセンスは、外国銀行としての制限付きライセンスです。それでも私たちは、制限付きライセンスでも長期に渡りモンゴルの金融業界に大きく貢献できると信じています。
J: 一部の人々は「もしモンゴル国内企業が融資を返済できなくなった場合、中国銀行はモンゴルの戦略的にも重要な資産を手に入れるのではないか」という心配を持っています。これについてあなたはどう思いますか?
Xingjun: はい、私はこれについて正しく理解しています。もちろん、実際に商業銀行は融資を出す際に、借り手から担保となる資産を要求します。もし、借り手が返済義務を果たせなくなれば、銀行は借り手の担保にした資産を運用する権限をもちます。この場合、私たちが取る措置は担保資産を再び売却することです。なぜならば、中国銀行は商業銀行ですので、銀行業務以外のビジネスを行う権限がありません。そのため、私たちはモンゴルの関連する法律、国家安全に関する規定およびモンゴル銀行(中央銀行)の監督や要求に従って担保資産を売却します。
J: その担保資産を中国の大手企業が買収したらどうしますか?
Xingjun: いいえ、私たちはモンゴルの法律に従って解決します。もしモンゴルの法律に中国企業に売却しても良いと定められていれば、私たちは中国企業に売るかもしれません。もしモンゴルの法律にそれが禁じられていれば、私たちは法律に反することはしません。
J: 中国銀行は銀行業ライセンスを取得した後、モンゴルと中国の中央銀行間の元とトゥグルグによる通貨スワップ協定に働きかけることができますか?
Xingjun: モンゴルと中国の通貨スワップ協定は、中国人民銀行(中央銀行)およびモンゴル銀行(中央銀行)が合意に至り、お互いが署名した政府間協定です。この協定は過去数年間に良く実施されてきました。通貨スワップ協定に関して、モンゴル銀行(中央銀行)の方から関連取引をよりしやすくするための要望や要求をしない限り、中国銀行は商業銀行ですから両国の中央銀行間の通貨スワップ協定に直接介入することは不可能に近いと思います。
J: 中国の中央銀行の名称は何ですか?
Xingjun: 中国人民銀行(PBOC)です。
J: 中国人民銀行は商業活動を行っていません。モンゴルの中央銀行と同じと理解しても良いですね。他方、中国銀行(Bank of China)はモンゴルと中国の中央銀行間の通貨スワップ協定に関係性はあまりないと理解しました。今日、両国の経済協力関係は急増しています。中国はモンゴルにとって最大パートナー国です。あなたはモンゴルと中国の関係をどのように見ていますか?
Xingjun: 中国とモンゴルは、長期的な貿易や投資におけるパートナーシップ関係を維持しています。中国の巨大市場と持続的に成長している経済は、モンゴルの鉱業製品の輸出、また両国の貿易の深化に重要な機会をもたらしていると見ています。周知にように、モンゴルは中国の一帯一路構想に賛同しています。これはモンゴルの経済発展に強い後押しとなります。
J: 私たちは一帯一路構想についてよく話しています。しかし、現在はモンゴルに何らの大規模プロジェクトも実施されていません。なぜですか?これは中国銀行の銀行業ライセンスに関係していますか?
Xingjun: これはモンゴルの金融機関が国際社会に進出していないことに関係していると思います。あなたもご存知のように、モンゴル国内の商業銀行はそれほど大きくはありません。また、その資産では大規模プロジェクトに資金を供給できない規模です。
J: つまり、モンゴルの商業銀行の規模が大きくないから、一帯一路構想のような大規模プロジェクトに参加できていないということですか?
Xingjun: はい、そのとおりです。
J: 中国銀行がモンゴル市場に進出することで、モンゴルの今日の貸付金利に対してどのような影響を及ぼしますか?
Xingjun: 現在、トゥグルグおよび外貨の貸付金利は、他の新興国に比べて非常に高くなっています。過剰な資金調達コストは、モンゴルでビジネスが発展する可能性を妨害し、経済成長を制限しています。中国銀行がモンゴル市場に進出することで、トゥグルグの金利に影響を与えません。その理由は先程も言いましたが、私たちはトゥグルグ預金および貸付サービスを提供しないからです。トゥグルグの政策金利は、モンゴル銀行(中央銀行)のみが政府の金融政策を反映して定めるものです。しかし、私たちは外貨金利には影響を与えると思います。なぜかと言えば、私たちは世界でも大規模な金融機関として、低コストの投資を誘致するリソースがあるからです。私たちは競争可能なすべての外貨による資金提供を行うことが可能です。
J: 中国銀行はトゥグルグによる何らのサービスも提供しませんが、ドルもしくは元のみでのサービスは提供するということですか?
Xingjun: はい、そうです。また、その他の外貨も含まれます。
J: 中国銀行のモンゴル進出は、為替レートにどのように影響しますか?
Xingjun: 中国銀行のモンゴル進出によって、為替市場の安定、トゥグルグの価格維持に必ず貢献できると思います。第1に、モンゴルの関連規定に従って、外国銀行の子会社を設立する時には必ず出資資本額を定めて投資を誘致します。こうすることによって、モンゴルの外貨準備高が増えます。第2に、中国銀行は子会社を設立してシンジケートローンを交付することによって、モンゴル市場により多くの投資を誘致することが可能になります。第3に、もしモンゴル政府が中国銀行に銀行業ライセンスを交付すれば、これは外国投資家にとって良いシグナルとなります。外国からの直接投資は、モンゴル経済の回復、トゥグルグの為替維持のベースです。
J: 要するに、中国銀行のモンゴル進出は外国投資家に対して良いシグナルとなるということですね。また、モンゴルの外国投資の誘致、特に金融分野において外国の銀行の進出は、大規模プロジェクト実施に良い影響を与えるということですね?
Xingjun: そのとおりです。外国投資家に良いシグナルを与えることはとても重要です。
J: 中国銀行は、モンゴル政府とどのように協力して活動をしますか?
Xingjun: 中国銀行は、諸外国の政府との協力活動において、幅広い経験を持っています。モンゴルの多くの大規模プロジェクトを政府が実施しているため、モンゴル政府と緊密に協力していくことを最優先に考えます。これは私たちが重要視していることの1つです。私たちは、モンゴルの長期的な発展に重要な役割を果たしている鉱業、エネルギー、道路輸送およびインフラなどの分野のプロジェクトに参加したいと思っています。
私たちはゲル地区の再開発計画プロジェクトに参加することができます。このプロジェクトは、モンゴル国民の生活水準を向上させる重要な開発です。このプロジェクトを実施し、再生可能エネルギーを促進することによって、ウランバートルの大気汚染問題を少なからず改善することができます。
また、私たちは年利8%の住宅ソフトローンプログラムを支援したいと思います。私たちと取引している銀行は、このプログラムを資金的に援助することができます。住宅ソフトローンプログラムは将来、モンゴルの不動産市場を復活させ、多くの人に手の届く価格で住宅を提供し、生活環境を改善する機会をもたらすと考えています。
Xingjun * ジャルガルサイハン