今から6年前の2012年、モンゴルは新興国として世界の脚光を浴びていた。高い経済成長率で投資家から注目され、日本でもモンゴルについてメディアで紹介されることが度々あったが、資源バブルの崩壊と主要貿易国だった中国経済の失速でモンゴル経済は一気に冷え込んだ。
13世紀、、チンギス・ハーンの時代にはモンゴル帝国は地球上の陸地の4分の1を支配し、人口も1億人を超えていた。現在のモンゴルは国土面積156万平方キロメートル(日本の面積の約4倍)、人口は310万人(日本の人口の40分の1)となっており、国としての人口密度は1.7人/平方キロメートルで、世界一人口密度が低い国となっている。
日本とモンゴルが国交を樹立したのは1972年で、同時期に外交関係を樹立した国にベトナムがある。ベトナムへの日本からの直接投資額は91億1100万ドル(2017年)であるのに比べ、モンゴルへの日本からの直接投資額は1790万ドル(2016年)と500倍の差がある。様々な要因が考えられるが、ベトナムの人口が9270万人であるのに対し、モンゴルの人口は302万人で、やはり人口が一番大きな理由として挙げられるだろう。ベトナムへは製造業、小売業から飲食業まで、実に様々な日系企業が進出している。9000万人からのマーケットはそれだけ機会があるといえば当然だが、方やモンゴルへ進出している日系企業は数えるほどしかない。つまり、日本の大手企業からするとモンゴルの市場はあまりにも小さいので投資する価値なしと見られているということだ。
では、モンゴルはそれほど魅力のない国なのだろうか?実はモンゴルの一人当たりのGDPは3,639ドル(2017年)で、これはベトナムの一人当たりのGDP2,353ドル(2017年)の1.5倍である。更に、IMFが発表した一人当たりの購買力平価GDP(2017年)によると、モンゴルは12,978ドル(世界93位)で、これもベトナムの6,913ドル(世界128位)よりも多くなっている。
購買力平価GDPとは、より実態経済に近い指標で、どれだけの商品を買うことができるかを表している。全体で見るとたしかにモンゴル経済はとても小さな市場だが、一人当たりで指数を見ると決して低い数字ではない。つまりこれは、モンゴルへの日系企業の進出は中小企業にこそ向いていると言える。また、少し古い情報となるが、外務省が2004年にモンゴルで行った世論調査によると「今後モンゴルが最も親しくすべき国」として日本を選ぶ回答が37.4%と最も多く、75%が日本へのイメージを「経済力・技術力の高い国」として認識している。2000年代、中国に進出した多くの中小企業が反日無罪の中国共産党の政策に煮え湯を飲まされた。それを考えると親日ということも日系企業には強みとなる。
モンゴル銀行のウェブサイトでは外国直接投資の残高が国別で見ることができる。日本は25億ドル(2017年)で8位となっている。しかし実際にウランバートルの街を歩くと存在感を強めるのは韓国企業だ。韓国レストランやホテルなど、韓国資本の店舗、施設をよく見かける。韓国の直接投資残高は17.5億ドル(2017年)で9位だ。モンゴルでは鉱山などの大規模投資が注目を集めやすいが、小規模の投資でも十分に可能性がある。韓国企業は一歩先んじて進出し、それを証明している。確かに簡単ではないが挑戦する価値はあると思う。
中山拓