国連は世界各国を人間開発指数でランク付けしてきました。これは、経済成長が教育や健康にどのくらい影響を及ぼしているかを計る指数です。

J(ジャルガルサイハン):あなたの記事「Time to stop celebrating the polluters / 汚染者を称えることを止める時が来た」が2011年にNature誌に掲載されました。あなたはこの記事で人間開発指数を持続可能な開発指数と関連づけることを提唱し、各方面から賞賛されました。これについて具体的に話して下さい。

チョローン: 「汚染者を称えることを止める時が来た」という私の記事がNature誌に掲載されました。実は、20年前から国連は、世界各国を人間開発指数でランク付けしてきていました。これは、経済成長が教育や健康についてどのくらい影響を及ぼしているかを計る指数です。言い換えれば、その国の経済、社会、保健の発達度を示す指数です。そこで私は、これらの3つの項目に「自然環境」という要素を加えた、持続可能な開発指数というものを提唱しました。
 ここでいう自然環境という要素は、その国の一人当たりの温室効果ガス排出量が少なければ少ないほど、人間開発指数は良いとするものです。驚くべきことに、「自然環境」という指標を加えて、人間開発指数を計ったところ、それまで首位クラスとなっていたアメリカ、オーストラリアなどの国々のランクは下がったのです。

J: 温室効果ガスとは何か。読者に分かりやすく簡単に説明して下さい。

チョローン: 石炭、石油、天然ガスなどを利用すると炭素(C)が酸素(O)と結合し、一酸化炭素(CO)もしくは二酸化炭素(CO2)が排出されます。これを温室効果ガスといいます。私たちの周りで、目に見えるものとしては煙突からモクモクと立ち上る煙です。大気中の温室効果ガスの濃度が増すと、地球温暖化に拍車がかかり、大きな影響を及ぼします。
 温室効果ガスを人間が大量に排出するようになり、地球温暖化が進んだことが原因で、高い山脈や南極大陸の氷や雪が融け、その水が海に流れ込み地球の海面が上昇します。モンゴルでは、より乾燥化が進み、水源が減少するなどの悪影響を受けます。

J: この温室効果ガスの問題については、最初にアメリカが注目し世界に発表しました。しかしその後、温室効果は一時的なものであり、改善されるだろうという情報を世界に流しました。これには科学的な根拠がありますか?

チョローン: 科学的な根拠は全くありません。大気中の二酸化炭素濃度は、産業革命以前は180〜280ppmでしたが、現在は400ppmまで増加しています。私たちは過去80万年、この地球になかった環境で生活をしていることが、科学的に立証されています。

J: モンゴルのグリーン開発政策とは何ですか?

チョローン: モンゴルに適した持続可能な開発目標は、モンゴルがどうあるべきかを定めた政策です。先進国は今まで自然環境を犠牲にした開発をして、その過ちに気づき、今では自然環境の復元に力を注いでいます。例えば、韓国では発展の途上で多くの森林を破壊しましたが、今は再生を図るプロジェクトが実施されています。また中国では、自然環境を復元するために膨大な資金を投じています。モンゴルの持続可能な開発政策の目的は、先進諸国の事例から学び、先進諸国が要した時間を短縮して発展できる可能性を探ることにあります。モンゴルは関係する省庁と協力し、可能と思われる目標を定め、独自の持続可能な開発目標を持とうとしています。

J: 鉱業は私たちにとって生活の糧となるものです。しかし、自然に対して無責任な開発をすることが多々あります。鉱物資源を採掘した後、自然環境を再生させる活動をしている企業もたしかにありますが、採掘をした後そのまま放ったらかしにする企業も少なくなりません。今のモンゴルの砂漠化の拡大は、私たちが行ってきた自然破壊によるもので、私たちはまずそれを食い止めるべきではありませんか?

チョローン: おっしゃるとおり、私たちがこのまま自然環境の破壊を進めてしまうと、二度と再生できなくなる可能性があります。そのため、私たちには何らかの対策が必要です。

J: ではグリーン開発政策の焦点は何ですか?私たちは何を、どのように進めていくべきですか?

チョローン: まず当然のこととして、人がいて、自然があります。そして再生不可能な化石燃料、再生可能なエネルギーの順で見ていきます。その中で私たちは、鉱山に焦点を当てるべきだと考えます。このグリーン開発政策では、まずモンゴルの国内総生産の2%を知的財産となる、科学技術及びイノベーションに投資することを謳っています。モンゴル独自の持続可能なエコシステムを確立し、開発に際しては必ず自然環境の復元を行います。そういった施策を行いながら、再生可能エネルギーの割合を2020年までに20%、2030年に30%に引き上げていくことを主な目標としています。

J: モンゴルのように一人当たりの電力消費量が少ない国では、再生可能エネルギーの規模を拡大させるという目標は過大ではありませんか?

チョローン: これはエネルギー省の目標にもありますが、大き過ぎる目標だとは思いません。これは今後、モンゴルが発展していく上で避けては通れない問題です。発展にはエネルギーが必要不可欠です。ですから私たちは、発展のためにエネルギー問題を優先的に考えなくてはなりません。

J: 今日はありがとうございました。

チョローン: ありがとうございました。

チョローン * ジャルガルサイハン