フレデリックスター氏はアメリカのイェール大学、ケンブリッジ大学を卒業し、プリンストン大学で博士号を取得しました。彼は中央アジア、ロシアの政治・対外政策、エネルギー政策の専門家であり、ロシアとユーラシア問題について20冊の本を上梓し、200以上の記事を執筆しました。また、3人のアメリカ大統領の元でロシア・ユーラシア担当の顧問を務めました。

J(ジャルガルサイハン): こんにちは。今日はあなたとお会いできてとても嬉しく思います。

スター: 私もあなたの番組に出演できて嬉しいです。

J: 私たちはアゼルバイジャンの首都バクーで開催されたCAMCAの会議に出席しました。CAMCAについてお話を聞かせて下さい。CAMCAはどんな組織ですか?CAMCA会議開催の趣旨は何ですか?

スター: 数年前までCAMCAという名前はありませんでした。CAMCA会議は中央アジア・コーカサス研究所が実施する交換プログラムの参加者たちの提案で開催されるようになりました。CAはCentral Asiaつまり中央アジア、M=モンゴル、C=コーカサス、A=アフガニスタンの頭文字を合わせてCAMCAになります。

J: CAMCAはいつ設立されましたか?

スター: 設立されて10年になります。アメリカの元国防長官ドナルド・ラムズフェルドのラムズフェルド財団、ストックホルムとワシントンに本部を置く中央アジア・コーカサス研究所が共同で実施していたプロジェクトで設立されました。

J: CAMCAの目的、役割は何ですか?

スター: CAMCA地域の若者たちの知識やアイデンティティーは私たちに深い印象を残しました。中央アジアの国々の発展を注視していた際、優秀な若者たちを見ました。CAMCAの目的は、まず彼らにアメリカと何らかの形で連携する機会を与えることです。彼らはアメリカで6週間の研修に参加し、様々な分野の人たちと会います。研修後、帰国したら全ての参加者を集めて情報共有のために会議をします。その会議が続き、後にアメリカでの研修を経験した全員が集まる会議にまで拡大しました。それがCAMCAです。

J: 研修に参加する人をどのように選んでいますか?

スター: その国の公務員、教師、ジャーナリスト、研究者、アメリカ研修経験者などが参加者を推薦します。推薦された候補者の中から知性と能力を持ち、深い印象を与えた人を選びます。

J: 今回の会議で多くのモンゴル人を見ました。モンゴル人は何人いますか?

スター: 初期の頃はCAMCAにはモンゴルやアフガニスタンからの参加者はいませんでした。しかし、最近ではモンゴルから毎年2、3人が参加しています。モンゴルからの参加者は合計20人です。彼らはとても優秀です。

J: CAMCAから優秀な若いリーダーたちが誕生しています。私は今回の会議に参加してとても驚きました。モンゴルから中央アジアまでの国々の間でこのようなカンファレンスや情報共有、相互理解を促す会議など他にありません。

スター: マルコポーロ以来はなかったですね。

J: あなたは“失われた悟り”という本を出版しました。この本に中央アジアは世界の中心だったと書いてあります。どうしてですか?

スター: “失われた悟り”の内容はとても一般的なものです。商売、資産、産業などの分野において中央アジアは500年間世界経済の中心地でした。アフガニスタンを含む中央アジアの全域で当時の経済発展は素晴らしいものでした。数学者、哲学者、天文学者、医学者など世界をリードした専門家たちが中央アジアから生まれました。古代ギリシャからローマ時代にかけて中央アジアでは文化・教育が最も繁栄していました。

J: 13世紀のチンギスハン帝国時代にシルクロードができ、中央アジア諸国が利用していました。しかし、現代は中国のイニシアチブで一帯一路というもう1つのシルクロードが築かれようとしています。中央アジア諸国にどのように影響すると思いますか?

スター: まずはシルクロードについていくつか言いたいことがあります。当時、シルクロードは1つではなく、いくつもありました。これらの道や方向はインドや中国を西洋と繋いでいました。これは中国をインドや西洋のみに繋いでいた道ではありません。中央アジアはちょうどシュルクロードの真ん中にありました。唯一、ヨーロッパや中東、インド、中国など全ての文明に直接関わっていたのは中央アジアの人たちです。しかし、古代シルクロードは中国が提唱する一帯一路とは異なります。シルクロードはそれぞれの地域によってできたものです。一帯一路は中国の対外政策によるものです。一帯一路は中国だけを世界に繋ぐ目的をもっています。例えば、一帯一路ではインド半島と世界を繋ぐという問題については話されません。インド半島は人口が多く、経済成長率が高い伸びを示していることを私たちは知っています。いつか中国より大きくなると予想されますので、私たちは先を読む必要があります。一帯一路に協力するだけでなく、インドを含めて考える必要があるのではないかと思います。

J:  一帯一路イニシアチブによりロシアと中国の影響力は今後増していくと思います。これについて中央アジア諸国はどのようにみていますか?

スター:  私はロシアと中国の影響力がそれほど増すとは思いません。ロシアの影響力は弱まっています。ロシアの力が弱まった、もしくは間違いを起こしているからではありません。中央アジア諸国は自分たちの運命を自分たちの手に掴み始めたからです。これは肯定的に見る必要があります。決して中国、インド、ロシア、ヨーロッパ或いはアメリカに対抗するということではありません。中央アジアの人たちは、決して消極的で小さい人間ではないと言われるようになりました。それぞれに利害関係や歴史、やり方があります。相互に協力して強国と渡り合って行きたいと言っています。

J:  一帯一路はロシアを経由してヨーロッパに着きますか?

スター:  いいえ。1つのルートだけがロシアを経由します。他は中国からカザフスタンを経由してカスピ海、カスピ海からバクー、バクーからジョージア、ジョージアからトルコまで繋がります。第2の北方ルートはロシアを経由しています。これは旧鉄道線に沿った古いルートです。最も活性化する部分、つまり中心となるのは東欧から西、中国から東です。第3ルートはインド、パキスタン、バングラデシュからカスピ海を通ってコーカサス、トルコ、ヨーロッパに繋がります。この道は東のハノイまで繋がります。

J: あなたはケナン及びアスペン研究所と連携しています。ロシア語を話し、ロシア政治を長年研究しました。旧ソ連国に入っていた国々でのロシアの影響をどう見ていますか?今日は変わっていますか?その国々にはロシアという大きな力がまだ存在していますか?

スター:  それについてこう理解した方が良いと思います。中央アジア及びこの地域の国々は100年間ロシアの植民地となっていました。良い面でも悪い面でも大きく変化しました。今では植民地だった国々は独立国となっています。彼らは独立前にモスクワだけを見る1つの窓と扉が付いた部屋に住んでいました。独立後は全ての方向が見られるように新しい窓や扉を開けています。独立は何かに対抗することではなく、中央アジアのための変化です。例えば、今あなたがキルギスタンにいるとして、キルギスタンから世界へ直接繋がることができます。これは何も悪いことはありません。逆に良いことです。独立はキルギスタンだけではなく、世界にもチャンスを生んでいるということです。キルギスタンには他の国と同じく優秀な人材が数多くいます。強い大国はこの現実を良く理解していないように見えます。独立に反対し妨害するより、肯定的に受け入れるべきです。

J: しかし、そのように受け入れられていません。ロシアは懸念しています。ウクライナ、ジョージアなどで多くの紛争が起きました。あなたは今後の行方をどのように見ていますか?

スター: 旧ソ連時代の生活は1991年に終わりました。しかしその習慣はまるで二日酔いのように根強く続いています。だが二日酔いは時間が経てば自ずと消えるものです。これと同じように、ロシアとの関係は改善されると思います。一方でロシアは過去の威厳を復活させようとする不可能な夢をまだ捨て切れていません。未来を見るのではなく過去に戻ろうとしても、最終的にそれは実現しません。最後には良き隣人としてのロシアが築かれると思います。

J: そうなるまで長い時間がかかると思います。あなたはどう思いますか?

スター: わかりません。これは他の列強が何をするかによると思います。また、中央アジア自身が何をするかにもよります。

J: アメリカはウズベキスタンに軍事施設を置きました。そしてキルギスタンにも置きました。ロシアの軍事施設はありましたか?

スター: その軍事施設はアメリカだけのものではなく、どれも北大西洋条約機構(NATO)の軍事施設です。ウズベキスタンやキルギスタンを占領するためのものではなく、アフガニスタンでの軍事活動のためでした。この2つの軍事施設は既に閉鎖されています。しかし、ロシアは軍事力による占領を手放すことができず、軍事施設を増やしました。中国もタジキスタンでの軍事施設の数を増やしました。これは良いことではありません。逆に中央アジア諸国をもっと強化する必要性が生まれます。それで彼らは自分たちの独立を外の力に頼らずに維持できます。アメリカ、中国、ロシア、インド、ヨーロッパの軍事施設に頼らず中央アジアの国民が自分たちでやっていけるようにする必要があると思います。

J: しかし、何らかの形でこのような外部からの介入は当分続くのではないでしょうか?

スター: アメリカ、ヨーロッパ、中国がロシアに対して行っていることは、ロシアに反対しているのではなく、単に自分たちのための行動です。だから過干渉になっていると理解させる必要があると思います。この地域では安全保障を重視することが大事です。安全保障のための外部からのいかなる試みも意味がありません。モンゴルも安全保障を確保できず外部から大国が入って来ました。21世紀になり私たちは、大国が自らの国を守るのと同じように、中央アジア、コーカサスの独立諸国も自分たちの国を自分たちで守る機会を得られるかどうかという大きな選択を迫られています。なぜなら列強が自分たちの利害関係を押し付けてくることになるからです。モンゴルもこの問題に直面しているからCAMCAに参加していることがとても正しいと思います。

J: 上海協力機構におけるモンゴルの関わりをあなたはどう思いますか?

スター: 良いか悪いかはまだ不明ですが、モンゴル人は賢い民族ですから慎重に考えて判断すると思っています。インドの加盟で上海協力機構は変わってきています。これについてモンゴルの皆さんはよく見ていると思います。モンゴルとインドは昔から親密な関係を築いてきました。上海協力機構は中国の対外政策の一環のみではなく、様々な分野での協力活動も行っています。モンゴル人は正しい道を選択すると信じています。

スター * ジャルガルサイハン