クリルタイ参加者の集合記念写真(モンゴル国外務省にて)

9月10日、モンゴル国外務省でモンゴル日本関係促進協会主催の「モンゴル・日本友好諸団体 第2回クリルタイ」という会議が開催された。“クリルタイ”とは、モンゴル中世の時代に設置された部族会議で、特に重要な事項を決議する場だった。その昔、若きテムジンがモンゴル高原を統一した君主としてチンギス・ハンの名を宣言したのも、このクリルタイだった。

この「モンゴル・日本友好諸団体 第2回クリルタイ」会議には、モンゴル国外務省、在モンゴル日本大使館、そして日本のモンゴルと関係する民間団体の代表者が集まり、まさに現代のクリルタイにふさわしい会合となった。本誌デファクトガゼットからもジャルガルサイハン氏と日本語版の制作を手掛けるモンゴルいずみガーデンのメンバーも参加する機会を得た。会議はモンゴル国外務副大臣、駐モンゴル日本国大使の挨拶から始まり、モンゴルと日本を繋いできた各団体の代表者による講演で構成された。

各団体の講演から、40年以上もモンゴルと関わってこられた日本モンゴル親善協会の柳澤理事長、駐モンゴル日本大使を務め、現在は中央大学で教鞭を執られている清水前大使をはじめ、多くの人たちが過去に日本とモンゴルの友好のために尽力してきたことを知る事ができた。モンゴルの民主化は1990年に行われ、民主主義国家となって今年で28年だ。それを考えると、モンゴルが社会主義だった時代から日本との関係強化のために努めてこられた方々は、相当な苦労があっただろう。現在、何の障害もなくモンゴルと関わる身としては、まったく頭が下がる思いだ。現在の両国の関係は政府レベルの付き合いだけではなく、まぎれもなく民間団体の人たちが築いた礎の上にあると言える。

クリルタイの最後には、日本・モンゴル友好諸団体の総意として“提言”が採択された。内容は以下の通り。

1.両国政府および地方自治体に対して

①モンゴルにおいて対外経済関係および観光業を担当する省庁を設置する。

②経済連携協定に基づき両国の互恵的経済関係を発展させる。

③日モ友好関係に重要な出来事、例えば、文化協定締結45周年に関する行事、ハルハ川戦争終結80周年に関する日本、モンゴル、ロシア、中国の学者や一般参加者によるテレカンファレンス、平和集会、文化交流など必要な経費を負担する。

④民間交流を支援し、日本の技術や機械設備、ノウハウなどをモンゴルに導入する環境を整備し、日本からの投資の良い例を広く宣伝する。

⑤在京モンゴル大使館からモンゴル国に関する情報提供、宣伝活動を強化する。

⑥両国国民の往来を単純化する。

⑦若者が興味を持つ活動に積極的に参加し、支援する。

⑧新空港の工事を早急に完成させ、運営を開始する。

⑨日本-モンゴル間の航空便数を増加し、航空運賃を安くする。

⑩地方自治体と特定機関同士の直接交流を積極的に支援し、友好団体の支部を地方に設立する。

2.友好諸団体に対して

①友好運動の意欲が弱まり、友好諸団体の活動が低下することを確認し、若者の希望や興味を把握し、それに合うような友好活動の新しい目標を定める。

②会員構成における若者の割合を増やし、積極的に活動する若者を友好団体の活動に参加させ、重役を任せながら育成する。

③在留モンゴル人学生を支援し、友好団体の活動を活性化させる。

④MICEを活性化し以下のことを実施する。

  • 毎年東京で開催される「ハワリーン・バヤル」イベントに友好諸団体が積極的に参加する。
  • ウランバートル市において「日本週間」を大々的に開催する。
  • 両国発展および日モ関係に資するテーマで会議やシンポジウムを開催する。

⑤インターネット技術を適切に利用し、活動範囲を拡大する。

⑥日モ関係に関する書籍の発行や宣伝用の製品の生産を継続し、相互訪問を活性化させ日モ関係の過去、現在、未来について広く宣伝する。

⑦ハルハ川戦争終結80周年記念行事を日本、モンゴル、ロシア3カ国共同で行う。

⑧友好団体が発行する刊行物に対する若者の関わりを強化し、フェイスブック上で両国に対する関心を高める。

⑨モンゴル国が直面している諸問題を専門レベルで分析し、解決方法などを政府に提案する。

両国の関係をより一層深めるためには、お互いの国の人々がより多く往来することに限る。しかし、この提言にもある航空運賃の高さが大きな障害の一つとなっている。成田-ウランバートル間はおよそ3000kmで、これは成田-香港間とほぼ同じ距離だ。しかし航空運賃は一番安いエコノミーでも倍以上の価格差がある。これでは若者が気軽に訪れることができる国とは言い難い。新空港の開港を機に多くの航空会社がウランバートルに就航し、そこで競争原理が働き運賃が適正価格になれば、様々な交流が生まれ、経済活動も活性化するだろう。日本とモンゴル双方の政府と民間企業の努力を必要としている。

中山拓