2020年が幕を開けてそうそう緊迫したニュースが飛び込んできた。米軍の無人機攻撃によりイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官が殺害され、一気に中東情勢が緊迫した。アメリカとイランが戦争状態に突入することもあり得る状況で、こうなると、世界の投資家はリスク通貨となるドルを売り、比較的安定している円を買うという動きをする。こうなると為替レートは円高に振れ、輸出企業には打撃となり、輸入企業には好機となる。
日本の株式市場の代表的な株価指標として日経平均がある。実は日本株は為替レートと密接な関係にある。日本の株は6割以上を外国人投資家が売買しているため、為替に連動して日経平均も動く。円高になると株は売られ株価は下落し、円安になると株が買われ株価は上昇する。外国人からすると、円高は円を売りドルを買うのに適した状態だから、株を売って円をドルに替えて利益を確保する。逆に円安は1ドルで円高時より多くの円を買えるので、円建ての日本株を買う好機となるわけだ。
下のチャートでは、1月3日に米軍によるソレイマニ司令官殺害の日に1ドルが108.5円から107円台へと円高になり、1月6日まで108円付近を行ったり来たりしている。そして今年の大発会となった1月6日には日経平均は前週より400円以上値下がりした。その後徐々に為替は円安に振れてきていたが、1月8日にはイランによる弾道ミサイル攻撃があり、為替は一気に108円を割り込み、それに合わせて日経平均も急落しているのがチャートから分かる。
このように通貨・為替は大きなうねりとなりその国の経済に強く影響する。逆に通貨の強弱は国の経済力に比例する。資源のない日本は、産業技術で力をつけ円の価値を高めてきたし、それを維持するためには世界と競争し続けなくてはならない。
日本円について言うと、大昔、人々は何かを手に入れたいときは物々交換を行っていた。しかしそれでは、持ち運びができない資産や保存できないものを交換するときに不便であったため、通貨が発明された。古代中国では貝殻が貨幣として用いられていた。その他にも骨や石、動物の歯などが世界中で貨幣として使われていた。国が出現してからは金や銀などの貨幣が使われるようになった。
日本では明治時代に通貨としての「円」が制定され、新しい貨幣が生まれた。当時の貨幣鋳造の機械は輸入されており、その機械で製造される貨幣が円形だった(それまでは方形だった)ので単位が「円」になったと言われている。
中山 拓