経済政策・競争力研究センターは、「市内各区の競争力報告書2019」の2回目の調査を実施し、結果を公表した。

国の発展の過程で必ず起こる現象の1つは都市化であり、発展・開発・改革という言葉と同じ意味として理解される。私たちは、「都市化」を単に人々の地方から都市への移住と考えてはいけない。より良い生活水準、より多くの可能性と見なくてはならない。モンゴルでは「都市化」という現象をどのように定義しているのか。またそれに伴う影響は何か?都市化は、国民が夢や希望を実現できるようにサポートされているか?生活環境が改善されているか?の度合いである。

モンゴルの全人口の67.2%が都市部に、そのうちの45.3%、つまりモンゴル人の2人に1人は首都ウランバートルに住んでいる。そしてウランバートルの人口の95.1%が都市中心部の6つの区に集中している※1。国土全体の僅か0.3%であるウランバートル市に人口の大半が集中している。この数字から都市化が加速していることがわかる。しかし、都市化による影響を評価するためには、都市化という言葉を適切に定義し、多角的かつ現実的に調べることが重要である。そしてこれが今回のウランバートル市内各区の競争力調査の主な目的でもある。

ウランバートル市内各区の競争力について調査を開始した2年前に比べ、ウランバートルの人口は2.7%増加し、386,000世帯140万人が住んでいる。ウランバートル市の競争力指数は0.557点となり、2017年から7%上がっている。競争力指数は0〜1点で採点され、1に近いほど競争力が高いとされる。

ウランバートルの競争力指数

ウランバートルの競争力指数は、グラフの5つのカテゴリーでみれば、経済、生活水準の点数は比較的に良いとされる0.6点以上である。しかし、安全、制度は0.5点、生活環境は0.5点以下である。

モンゴル経済の中核は言うまでもなくウランバートルに集中している。モンゴルの全事業者の64.2%がウランバートルに集中し、国内総生産の64.7%が創出されている。

ウランバートルの各区の調査結果をみれば、事業所が集中していて住民の生活水準の変化も概ね肯定的である。しかし、失業率が高く、物価上昇率が市民の生活に大きな圧力となっていることは依然変わっていない。全世帯の39%で平均月収は50万トゥグルグ以下である。

ウランバートルに移住する主な理由として、質の高い医療・教育サービスが一番に挙げられる。しかし、病院は過密状態であることは調査結果をみれば明らかである。また、小中学校の就学率は良好であるが、幼稚園の就園率は不十分である。

2017年の時点で、ウランバートルでは2〜5歳の子どもの78%が就園している。そして国立幼稚園の教諭一人あたりの受け持つ園児数は非常に多い(教員1人に対し園児数は38人)。幼稚園や学校の通園通学状況は前の調査より改善はしているが、人口増加のスピードに追いついていない状況にある。

ウランバートル市の安全と安心度について

人口に比較してみれば、ウランバートルにおける犯罪発生率は地方より高い。さらに、2年前の調査に比べて犯罪発生率は上がり、検挙率は下がっている。しかし、若者の犯罪への関与は減少傾向にある。法律は全ての人に平等であるかとの問に住民の評価は3.8点と低い数字が出ている。

安全に暮らす条件の1つは健康で衛生的な環境である。しかし、ウランバートル市民の暮らしはけして衛生的とはいえない。大気汚染、廃棄物、騒音などに対する評価は非常に低い。

都市化の長所の1つは、快適な生活環境の基準が示されることである。現在、ウランバートルにおける全世帯の44%は集合住宅(インフラが設備されている住居)に住み、27%がゲル地区に住んでいる。興味深いのは、この数字が10年前と比べてほとんど変わっていないことだ(2007年ゲル地区に住むのは全世帯の26%だった)。

市民の都市化に対する適正評価

都市緑化、子どもの遊び場、歩道整備などに対する市民の評価は非常に悪い。前の調査に比べ、区やホロー(ウランバートル市内の最小行政単位)の電子行政サービスは情報公開が進むにつれ改善している。しかし、各区の予算管理、予算権限は弱いままである。

このようにウランバートルの都市化は加速、つまり首都の人口密度が上昇する現象が進んでいる。しかし、都市化の質においては、ウランバートルに住む市民が増加するにつれ生活水準は低下し、あらゆる選択肢が制限されている。そしてこれらを緩和する対策は不十分である。

都市化は、より良い生活水準を選択する機会を作り出していることは確かだが、それが全ての人に与えられていない。都市化の好影響をより拡大させ、ウランバートル市内各区の競争力を持続的に発展させることが長期に渡って目指すべき点である。

各区の競争力の差を3つのレベルに区分

ここでは、競争力が比較的に良好なハンオール区、バヤンゴル区、バヤンズルフ区(競争力指数は0.510点以上)、競争力が中レベルのチンゲルテイ区、スフバートル区、ソンギノハイルハン区(競争能力指数は0.460-0.510点)、そして中心部から離れているバガヌール区、ナライフ区、バガハンガイ区(競争能力指数は0.460点以下)で区分した。

ウランバートル全体の競争力を向上させ、各区の競争力の差を無くすために適期的に調査を実施し、低い指数の区を改善させる取り組みが必要である。

この調査の目的は各区を競争させることではなく、発展の差を客観的に把握し、その長所と短所を明らかにすることである。調査に用いられる150もの基準それぞれを詳細にみて、指数の改善を図るために何をすべきかを行政や民間企業、市民が意見を出し合って取り組むべきである。

私たちは人口過密による問題が溢れる都市ではなく、1人1人が幸せに暮らせる機会に満ちた都市を望んでいる。

経済政策・競争力研究センター
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