モンゴル国会は「銀行の貸出金利最高限度を定める法案」を審議している。貸出金利の高さが製品・サービスの価格を上げ、企業を倒産に追い込み、ビジネスへの希望を削いでいる。
社会が直面しているこの問題について、先週モンゴル国営放送でデファクトディベートを行った。法律で貸出金利の最高限度を定めることに賛成派として金融専門家D.アンガル氏、反対派として経済専門家S.ボルド氏が登壇した。彼らが話した調査や説明とデベィート内容を省略して後述する。
法律で貸出金利の最高限度を定めることへの賛成意見
金融機関は経済的に貯蓄がある層の資金を、それを必要とする企業と繋ぎ、仲介する役割がある。モンゴルではこの役割を過去27年間、商業銀行のみが行ってきた。その貸出金利は非常に高い。そのため、この貸出金利が企業にとって公平性があり、事業活動において効率性があるように法律で金利の最高限度を定めるべきだと思う。
モンゴルの銀行、ノンバンク、信用貸付組合、証券取引所に関する法律や規程は、外国の法律規程に倣って作られている。しかし、先進80ヵ国が施行した貸出金利を法律で制限する部分を除いた。その結果、商業銀行はビジネスをサポートするのではなく、金利を彼らの主要な収入源にしてしまった。
政府による金融政策が銀行の圧力要求で行われ、銀行の望むままに行われてきたので証券市場は発展していない。証券取引所、保険分野が発展していないので、あらゆる融資が商業銀行14行のみで行われている。銀行は資産がある人(モンゴル銀行の調査によれば1億トゥグルグ=4万ドル以上の預金がある人は9900人いる)を囲い込むために預金金利を高くして競争している。そのしわ寄せが企業に行き、高い金利で借入をする他に選択肢がない。貸出金利が高いからモンゴルでは産業が成長しない、経済が発展しない。
モンゴルは貸出金利が最も高い世界10ヵ国の一つとなっている。もし、銀行の貸出金利最高限度を定める法案が採択され、銀行の貸出金利が18〜20%以下に減少すれば、銀行は預金金利を下げる。18%の金利で貸出をするために、預金金利を14%から9%に下げざるを得ない。これでも他国と比べれば預金金利は高い方なのだが。
法律で貸出金利の最高限度を定めることへの反対意見
貸出金利を規制する問題は結構前から議論されている古い話題である。貸出金利を規制する法律を施行してきた国々では期待と逆の効果が現れた。
貸出金利は経済を反映するものである。問題の原因は金利ではなく、経済の構造基盤にあると思う。金利を下げるためには根本的な問題を解決しなければならない。もし経済が一定の水準まで高くなれば、できるだけ信頼がある、安定して生産性の高い分野に融資が行われる。今日、モンゴルの銀行システムが他の金融システムより早く発展したことは、銀行に責任があるわけではない。
過去20年間、モンゴルの信用格付けを外国の機関はCAA1からB1(100点満点中20〜40点)の間で評価してきた。この20年間で経済における外国からの投資は150億ドルに上る。しかし、この資金はモンゴル経済に残ったのか、あるいは出ていったのか。それは国際収支で分かる。しかし、この20年間で国際収支には11億ドルの黒字が計上されている。これはモンゴルに入ってきた外貨が残らず、資金洗浄されて出ていったような形跡があった。
この20年間におけるインフレ率の平均は10%だった。そして経済規模は5千億トゥグルグから27兆トゥグルグに拡大した。銀行の貸出残高は1兆トゥグルグから16兆トゥグルグになった。貸出金利について、20年前は48%、10年前は28%、現在は19%となっている。この数字はモンゴルの金融市場をこの14行はあるレベルにまでもってきたことを証明している。
法律で金利を定めるとリスクが少ない。銀行は担保や保証条件が良い借り手に貸出をする。リスクが高い融資先、つまり中小企業への貸出をしない仕組みへ自ずと移る。これは資金供給の面で悪影響を与え、金融指数が悪くなる。ラテンアメリカやアフリカ及びアジアの多くの国々の事例や調査では、短期的には金利が下がっても、その後の長期に渡り逆に上がっている。このことをモンゴル銀行の他にアジア開発銀行、世界銀行など国際機関による調査が証明している。
相互拒絶
賛成派:モンゴル銀行は商業銀行の平均金利は18~20%と言っている。しかし、中小企業の貸出金利の月率は2〜2.5%、年率30〜36%である。こんな高い金利で借り入れても生産活動の実施は不可能である。そのため、モンゴルの経済は産業がなく、消費に基づいた経済となっている。
モンゴルの金融市場において過去27年間、不足したものは競争である。今日では世界で外国の銀行がない国は2つだけ。一つは北朝鮮国、もう一つがモンゴル。外国の銀行が国内に進出することによって競争が生まれ、金利が下がり、製品の品質が上がる。
貸出金利を規制した80ヵ国の事例を見てみると悪影響より良い影響の方が大きかった。アメリカでは銀行の貸出金利は年率8%までという法律がある。ドイツでは20%、フランス28%などと決まっている。日本は金利が最も低い国である。公定歩合はマイナスとなっている。商業銀行の企業向け貸出金利は年率1%である。しかし、日本は1950〜60年代に世界で金利が最も高い国であった。また違法な金融業は高金利の借入と関係していた。
日本の内閣は1956年に新しい政策を打ち出し、違法な金融活動対策法を出した。この法律が施行され、30%だった金利が下がり、今日では個人でも企業でも貸付金利は年率20%までという法律がある。このような規制がないと銀行は絶対に金利を下げない。
反対派:私はモンゴル銀行に勤めていた経験があり分かるが、モンゴル銀行(中央銀行)がウソの統計を出すとは思わない。もし、そうだとしたらモンゴルの経済に関する全ての数字がウソになる。今日、金利36%で貸出をしている銀行はない。あなたは20年前の数字を言っている。銀行の平均金利率は19〜19.5%である。消費者ローン、ミニビジネスローンとなれば違うかもしれない。一部の銀行は全ての貸出金利を年率24%つまり月率2%までにすると社内規程を敷き調整している。
法律で金利を定めることの良い点はない。逆にモンゴルにとって大きな後退をもたらすと思う。このような法律による規制とビジネス環境をもっている国に外国投資は入ってこない。ビジネスも発展しない。根本的な問題に着目するのではなく、結果だけを求める国は海外の投資家の目にどのように映るだろうか?
モンゴルでは財源の不足、経済活動における資金(現金)の不足、借入が非常に良くない状況にあることは事実。なぜならば、過去20年間のうち13年間において経済危機が続き、その影響が完全に解決されず、正常ではないビジネス環境にあったからである。
アメリカ、日本、フランス、ドイツでは同様の法律が施行された。アメリカでは給与ローンの金利は高かった。金利が短期間で上がっていき、制限された限度に達した。アメリカ、日本では違法な貸出、民間同士による貸出が増加し、隠れた問題が起こった。
ダムバダルジャー・ジャルガルサイハン