モンゴルでは乾電池やその他の種類の電池などの廃棄物は、その消費量に伴って増加しつつある。しかし、使用済みの電池がどれほど有害であるかを、誰もが知っているわけではない。モンゴルで消費されている様々な種類の電池は環境を汚染し、飲料水を汚し、市民が病気に苦しんでいることを政府は把握できていない。家庭では、使用済みの電池が一般ゴミと一緒に捨てられている。
モンゴルでは、ゴミを分別する習慣が定着しておらず、廃棄物処理場は1か所もない。政府は様々なプログラムや計画を打ち出してきたが、実施されることはほとんどなかった。私たちは、電池が有害廃棄物であることをいつまで無視し、正しく分別せずに捨て、自分たちの子孫に負の遺産を背負わせ続けるのか?
消費
人口320万人のモンゴルに年間600万個の電池が輸入されている。これらの電池は最終的に家庭の一般ゴミと一緒に廃棄されている。
2018年に全国で車検を受けた585,000台の自動車の72%が乗用車である。この乗用車の83%は右ハンドル車(日本からの輸入中古車)であり、その多くがハイブリッド車のプリウスである。日本では、13年使用した古い車でも、使用者は手放すとき中古車として2,500ドルで売っている。しかし、モンゴルではその中古車を5,000ドルで購入している。古いプリウスのバッテリーは交換されるが、モンゴルでは使用済みとなったバッテリーをどう処分すればいいのか分からないため、普通のゴミ処分場に捨てられている。
有害性
電池には、人間の精神や内臓を蝕み、生殖機能や遺伝子に悪影響を与え、癌を発生させる重金属が含まれている。そのため、鉛、ニッケル、カドミウム、水銀を含有した電池、処理の過程で電池から漏れる酸、電解液などを、政府は「有害廃棄物リスト」に登録した。登録したというだけでは、有害物質の拡散を止めたということにはならない。モンゴル人は電力が切れた乾電池を歯で噛んで復活させ、子どもたちは乾電池を分解したりして遊び、時には幼児が乾電池を誤飲することさえもある。
先日、市民からの苦情を受け付ける政府関係機関の職員たちが現地調査を行った。彼らはナライハ区にあるホンホル駅から南西に位置する、自動車用バッテリーを分解して鉛を取り出し、インゴットにして中国へ輸出している会社(モンゴル、韓国、中国の投資によって設立された会社)3社の工場を訪れた。
これらの会社は、1日に1〜2トンの自動車用バッテリーを、1kg当たり1,600トゥグルグで買い取っている。買い取ったバッテリーを斧で割り、取り出した鉛を鋳塊して中国に輸出している。バッテリー液である硫酸は地中に設置されたコンクリート容器に入れていると話しているが、実際には土壌に浸透し、トール川流域を長年汚染してきた。バッテリーを分解する事業を行っていると知られているのはこの3社のみであり、知られていない企業は他に数多くある。
自動車用バッテリーは、使用期限を過ぎた時から大量に有害物質を周囲に排出する。乾電池1本でも4平方メートルの土壌、8,000リットルの水を汚染する。使用済みの乾電池に汚染された土壌が元に戻るまで約100年かかる。
解決策
多くの種類の電池が消費されていると前述した。しかし、モンゴルでは電池廃棄物を土に埋める、もしくは焼却するという形で処分している。ある企業は、数トンの使用済み電池を収集して、処分のため日本へ送ろうとした。しかし、中国とロシアには自国の領土での有毒物質の運搬を禁止する法律があり、日本へ送ることができなかった。そのため、私たちには使用済みの電池を収集し、分別し、リサイクルする他に選択肢が残っていない。
モンゴルはゴミや廃棄物に関する法律はあるが、廃棄物処理場を建てる資金がなく、処理場の場所さえも選定できずにいる。市内には所々に乾電池の収集場を設置しているが、集められた乾電池がその後、どのように処分されているかは不明である。
そのため、電池の輸入や販売に少額の税金を課し、その税収をある程度の基準を満たした会社に給付し、電池の収集業務や処理場の建設を委託することが最も現実的な解決策だと思う。
ダムバダルジャー・ジャルガルサイハン