モンゴルの腐敗劇場がまたひとつ幕を開ける

対人口比での政府の腐敗劇場の演目数でモンゴルは世界上位にある。正義と偽りの激しい流れがぶつかり合って嵐が起きる時、モンゴルを覆う黒い霧が散り始めた。今回の嵐で明るみに出ている出来事を時系列で追い、論理的に関連付け、詳細に調べ上げ、真実を追求する必要がある。さらにその原因を探り、進むべき道を切り開くためにモンゴル社会は試練の時を迎えている。

2つの銀行のオーナー

ウランバートルシティ銀行の法定資本増強というモンゴル銀行(中央銀行)からの要求を理由に個人的な資本を増やし、権力者と共謀して国民の財産を横領してきた者たちについて、私は3年前に「エルデネビレグリズム-モンゴルの民主主義の新たな現象」という記事を書いた。法定資本増強の必要性を主権者たる国民へ説明せず、M.エンフボルド、Ts.バトバヤル、G.ムンフバヤルなどの歴代市長たちはD.エルデネビレグにウランバートルシティ銀行の株式80%を譲渡した。そして残りの20%は2014年にE.バト・ウール元市長がD.エルデネビレグに譲渡した。

TDB銀行の民営化には歴代首相が関与している。2002年にTDB銀行の株式の76%をN.エンフバヤル首相(当時)がジェラルドメタルス社に1,230万ドルで売却した。2007年にはM.エンフボルド首相(当時)主導で、D.エルデネビレグが7,000万ドルでTDB銀行の株を買った。D.エルデネビレグは現在、自身の海外に登記されている企業4社を通じてTDB銀行の株式の93%を保有している。株式の残り5%をゴールドマン・サックスが、2%を50人の市民が保有している。今日、TDB銀行はモンゴルで2番目に大きな商業銀行である。また、モンゴルにある全商業銀行の資産の25%を占めている。B.エンフボルド、Ts.バトバヤル、G.ムンフバヤルなど、ウランバートル歴代市長たちが寵愛した銀行がウランバートルシティ銀行とTDB銀行だ。

ウランバートル市内の一等地にある公園の地権がこの2行に移されていた。G.ムンフバヤル元市長は、2012年の国政選挙で所属する党が敗れた後、自分の任期が終わる直前となるナーダム(モンゴルの夏祭りの祝日)期間中にウランバートルホテル前の公園、諜報庁前の公園、Yu.ツェデンバル広場、シレンデブ像がある学生広場などの所有権をウランバートルシティ銀行に移した。そして地下駐車場建設を許可するA/495市長令を出した。

TDB銀行は、ウランバートルの歴史ある「子どもの図書館」を取り壊し、ガラス張りの高層ビルを270億トゥグルグかけて建設した。このビルの11、12階を国営銀行であるモンゴル開発銀行に270億トゥグルグで、10階をMIK社に150億トゥグルグで売却した。D.エルデネビレグという人物は、政府機関から資金を調達し商いを行うことに関しては特殊な「才能」を持っているといえる。

D.エルデネビレグはまた、モンゴルの政権を握ってきた人民党と民主党の両方のスポンサーだと言われている。両党はスポンサーの名前や寄付額を非公開としている。ゆえに人民党と民主党はモンゴル政府の腐敗の巣窟となっている。

独占への道

たしかにTDB銀行は、モンゴル経済において重要な役割を果たしてきた。しかし、ベールに包まれたこの銀行のオーナーが所有するいくつかの会社が特別な役割を担ってきたことは、国会で明らかにされたエルデネト鉱業の株式49%の取得に関する資金調達概要図で明らかになった。

モンゴルカッパーコーポレーション社が「エルデネト鉱業」及び「モンゴルロスツェットメト社」の株式の49%をロシア側から取得する際に政府の資金を使ったことについて、L.オユン・エルデネ内閣官房長官は概要図で具体的に説明した。

D.エルデネビレグは、自身の会社QSC社を通じて株式取得に必要な4億20万米ドルのうち、30%を財務省モンゴル銀行(中央銀行)、モンゴル開発銀行から調達した。残り70%をTDB銀行が大臣や市長が所有する企業4社に融資するという形で拠出し、最終的にモンゴルカッパーコーポレーション社に振り込ませた。

モンゴルカッパーコーポレーション社は、エルデネト鉱業の株式49%を取得した後、2016年の3~8月の間にエルデネト鉱業に前年度の配当金として1億2千万ドルを支払わせた。また、TDB銀行は受けた融資のうちモンゴル銀行(中央銀行)に7800万ドル、財務省に7200万ドルを返済している。

このように国庫(国民の財産)でエルデネト鉱業の株式49%を取得したため、国は事態を深刻に受け止め、株式の49%は政府に帰属するという国会の決定が出された。しかし、モンゴルカッパーコーポレーション社はそれを認めず、裁判となり2年が経っている。

政府は、TDB銀行が無担保で高額の融資を交付したことが銀行法違反と指摘しているが、その捜査令状を裁判所は発行していない。捜査機関はTDB銀行の取締役会長や頭取を逮捕したが、裁判所は法律に違反していないとして釈放した。

Ts.ニャムドルジ法務・内務大臣は、D.エルデネビレグが所有している2行は、今では37の鉱山ライセンスを、モンゴルロスツェットメト社はアスガト銀鉱山からボルウンドゥルまでの多数の県にまたがる地域に35の鉱山ライセンスを、全部で約70もの鉱山ライセンスを所有している。さらに、エルデネト、ダルハン、セレンゲ県に多数の鉱山ライセンスを所有していると発表した。

マフィアの制度

贈収賄事件に裁判所、司法機関が関わっている国ではマフィアの制度ができあがっている。国民の財産を違法に利用したモンゴルカッパーコーポレーション社に対する起訴をモンゴルの裁判所、検察庁は4度も無効にした。

モンゴルの裁判官は、政府と利害関係があると見える。モンゴルカッパーコーポレーション社はTDB銀行から7,500万ドルの融資を受け、その翌日には7,000万ドルをユナイテッドエナジー社に振り込んだ。ユナイテッドエナジー社の元社長であるD.ミシグの息子で裁判官のM.バトソーリは、政府の起訴を3回も無効にした。政府は賄賂対策庁に捜査を指示したが無駄だった。

また、政府は財源があるにも関わらず、エルデネト鉱業の株式49%の取得を拒否したことについて賄賂対策庁は何も捜査しなかった。

これらの腐敗問題を片付けるために、政府は国家安全保障委員会を開いた。関連法の改正と裁判官や検事を交代させるため、国会は昼夜を問わず審議を続けている。 裁判所、検察庁、賄賂対策庁の長官を交代させても、政府にはびこるマフィアや腐敗から脱することが可能なのだろうか?

ダムバダルジャー・ジャルガルサイハン