E.ビャンバスレン氏はモンゴル国立大学とドイツのアウクスブルク大学で情報工学・マルチメディアを専攻し学士号、修士号を取得しました。学士号論文のテーマはBMWのコントロールパネル開発でした。修士号研究テーマはマルチメディア分野における「コンピュータの音声認識制御」でした。オーストリアのフォアアールベルク大学で講義を持っていました。彼は3Dプリンターデザイナとして産業分野で知られていて、ウォルト・ディズニーの展示会に参加した経験があります。

J(ジャルガルサイハン): モンゴルでマルチメディアは比較的新しい分野となりますか?

ビャンバスレン: マルチメディアは今、日々勢いを増してきている分野です。私たちを取り囲む全ての場所でマルチメディアを目にすることができます。3Dというものが世に出てから20年が経ちます。しかし、一般消費者まで浸透してからそう長くありません。ここ3年で急速に進歩しているものの、まだ世の中に普及してないマルチメディアは3Dプリンターです。私たちはここ最近、この3Dプリンターの技術を積極的に活用しています。3年前まで人々はこの3Dプリンターというものについて想像もしていませんでした。

一般に呼びかけたアイデアに人々が共感すれば、そのアイデアに投資をするというウェブサイトがありました。そのウェブサイトにある会社がアイデアを公表し、投資を受けることに成功しました。それが3Dプリンターです。それまで大企業には3Dプリンターがありましたが、標準的な機器でも5万ドルもしました。これが変わったのです。今では3種類の3Dプリンターがあります。一番安いものは200ドル、高性能なものは5,000ドルで購入することができます。これは5万ドルだった3Dプリンターの価格を200ドルまでコストダウンしたということです。これによって新しい可能性が1つ出てきました。それは3Dプリンターのコンテンツを作るようになったことです。コンピュータや紙に印刷するプリンターがなかった時代は手書きでした。今ではコンピュータで作って「印刷ボタン」を押せば紙に印刷されて出てくる、それと同じことです。3Dプリンター技術は文字ではなく、3次元の物体を印刷しています。

J: 3次元の物体を印刷するためにはそのデザインを準備しなければならないと思います。デザインをどのように作りますか?

ビャンバスレン: デザインをコンピュータで作ります。コンピュータでコンテンツを作り、3Dプリンターの印刷ボタンを押して作り出します。現代は資源を無駄にせず、全てをデジタル化するようになった時代ですから。

J: デザインはどんなソフトで作りますか?

ビャンバスレン: ソフト自体は新しいものではありません。ハリウッド映画で使われる3Dmax、Mayaなどのソフトを使います。歴史のあるソフトですが今でも開発は続けられています。しかし、誰もが3Dプリンターのコンテンツを作ることができないので、3Dプリンターデザイナの需要は高まっています。そこに大きなビジネスチャンスがあります。

J: 3Dプリンターの技術がどのように動作しているかを普通の言葉で説明できますか?理論的に3Dプリンターでどんなものでも作れると言われています。今は3Dプリンターで家も作られています。

ビャンバスレン: 価格的に安価な3Dプリンターで使われる材料は、プラスチックや樹脂、それも金属っぽいもの、木材っぽいものなどがあります。それらの材料は1㎏あたり10~100ドルほどです。様々な色の固体材料を使って物を作るということです。プリントヘッドでそれらの材料を溶かし、層を重ねるように積み上げて仕上げていきます。これは安いプリンターの例です。

2つ目は液体材料で製品を作ります。液体材料を容器に入れてレーザーの光を照射すると液体材料が反応して硬くなります。作ろうとする物体の形を下から各層に光を照射することによって一つの物となり製品が仕上げられます。

モンゴルには3Dプリンターで製品を作ってほしいという人が多くいます。しかし、手がけられる人が少ないのが現状です。3Dプリンターで簡単に印刷できる最適化の設定方法とデザインデータを作ってフェイスブックの3Dプリントグループにアップしたところ、色々な国の人から感謝のコメントをいただきました。それまで印刷時にエラーが起こるデザインを最適化し、私は5人の人にデザイン通りに印刷できているかどうかを回答してほしいと依頼して実験を行いました。5人のうち1人だけデザイン通りに印刷されないという返事がきました。そして問題を修正してインターネット上に再度アップしたところ、2日で多くの人がダウンロードしていました。その後、イギリスのある会社の代表から連絡があり、「あなたのデザインをウェブサイトで販売したい。これからは無料でデザインデータを配信しないでほしい」という申し入れがきました。私は何も考えずに許可しました。その会社は私の製品をウェブサイトに載せ3Dプリンターを宣伝していました。しかし、多くの人が無料だったものを有料にして販売したことに反発しました。その会社は私のデザインを他の会社にも売っていたそうです。このことを知った後、「Thingiverse」という300点も3Dプリンターの作品を掲載する大きなウェブサイトに自分が作った1つのモデルの写真を載せました。この時は3Dプリンターの開発がどこまで進んでいるかを知るために「誰でも私のデータを使用できます。だが、どんなプリンターで印刷したか、そのプリンターをどのように設定して印刷したか、出来上がった物の写真を撮って送って下さい。」という説明を載せました。すると読み切れないほどたくさんのメールが届きました。 

私はデザインデータを無料でアップしていますが、本当にそれを気に入った人からはチップが送られてきました。今では多くの企業から連絡がきます。2ヵ月前に家庭用3Dプリンターを初めて製造したイリノイ大学から30分の講演をしてほしいという依頼を受けましたが、彼らはアメリカに滞在する宿泊費だけを出すと言っていたため行くことができませんでした。

ここで著作権をどのように保護するかという問題が出てきています。正式なライセンスを持つ企業がモデルを印刷することに問題はありませんが、私の様などこの誰かもわからない人が作ったモデルは世界のどこでも誰でも印刷できます。ですから著作権に関する調整が必要です。

J: あなたのデザインを印刷するため、正式な許可を求められた事はありますか?

ビャンバスレン: ドイツ、アメリカ、イスラエルなどの国の人からは、正式な許可を受けて販売し売上の10%を払うという提案を受けたことがあります。今のところ3ヵ所に正式な許可を出しています。私はデザインデータを作って売ることはできます。しかし、正式に許可も取らずにデザインを印刷して売られることが多々あります。

また、アニメのキャラクター制作の提案もきています。キャラクターを作って著作権で稼ぐことも可能です。

J: 3Dプリンターのことを良く知り、うまく絵を描くことができれば、モンゴルの子どもは必ずしも経済の専門家、法律の専門家になる必要はなく、新しい専門分野で生きていくことが可能です。この分野は始まったばかりです。これからの若者に何か伝えたいことはありますか?

ビャンバスレン: 社会において既存の、消費されているものを私たちは日々目にしています。しかし、市場において成熟しているように見えるものも、実際はそうでもないのです。どんな時代でも新しく創造するものは必ずあります。

ビャンバスレン * ジャルガルサイハン