新しいウランバートル市長が任命された

国会議員を辞任して市長になる理由とは

この秋に行われた地方選挙では人民党が圧勝し、ウランバートル市に新しい市長が任命された。第35代市長スミヤバザル氏は、今年6月の総選挙で当選した国会議員である。今回、国会議員を辞任して市長になるという出来事は史上初めてだ。市民代表議会の定数45のうち34議席を獲得した人民党は、市長にスミヤバザル氏を指名し、市民代表議会の71%の支持を得てウランバートル市の新しい市長に任命された。スミヤバザル氏は地方選挙前の取材では市長になることを否定していたが、市長に任命された後、「市長になるつもりはなかったのだが、勇気を出して国民に寄り添って仕事をする道を選んだ。」と言っている。ウランバートル市役所に務めることは国民に寄り添っていて、国会議員を務めることはそうではないような発言をしたが、趣旨として市長にならないという考えを変えたということだろう。市民代表議会議長には、バトバヤスガラン氏が選ばれた。バトバヤスガラン氏は、2016〜2019年の間、アマルサイハン前市長の下でグリーン開発及び大気汚染の副責任者を務め、今年6月にアマルサイハン前市長が国会議員に当選した後、市長代理を務めていた。

一連の人事の背後には何があるのか。スミヤバザル氏がウランバートル市長に任命されたことは、政治文化的に問題はない。最も合理的なのかもしれない。なぜなら、スミヤバザル氏は人民党のウランバートル支部長を務め、候補者を指導し、地方選挙に圧勝したのだから。地方選挙で公約したことを実現させるためにも市長になるのは適切だ。しかし、国会議員を辞任し市長になる理由はこれだけではない。与党は、党内に対立がある。この対立は8ヶ月後に行われる大統領選挙に何の役にも立たない。憲法改正により、モンゴルの大統領は6年間の任期で選ばれるようになる。また、国会議員による閣僚との兼務は4人を超えてはならない。そのため、フレルスフ首相は内閣を構成する際、人民党のウランバートル支部に大臣のイスを与えていない。これが原因で党内に大きな対立が起こったとされている。

首都ウランバートルの市長は大臣と同じくらい重要な職務だ。では、市長が大統領選挙にどれほど影響を及ぼすのか。人口の半分、企業の75%が集中しており、GDPの70%が生み出されるウランバートル市の市長は大統領選挙に大きく影響する。ウランバートル市で勝つことは、全国で勝つことと同じである。大統領選挙までにウランバートル市を上手く管理し、党の団結を確保し、党の評判を高く維持しなければならない。そのためにも党内の団結を図る必要があり、今回の人事となったと思われる。

来年の大統領選挙に向けて政治は既に動き始めている。バトトルガ現大統領も地方を訪問するなど次回の選挙への準備を進めている。最近、日本担当のバトトルガ大統領特使だった朝青龍が辞職した。朝青龍が所有していたサーカス劇場を国に返還するように大統領が命じたことが辞任の理由のようだ。また、エルベグドルジ元大統領が民主党に復党した。民主党の大統領候補者を誰にするかという問題が背景にあり、これでエルベグドルジ元大統領の名前が挙げられていた事件が凍結されることとなった。これには政治取引があったのではないかとされている。

重要なことだが、市民がウランバートル市長を直接選ぶようになるのはいつになるだろうか。モンゴルと同じ共和制の先進国でも、市長を市民が直接選挙で選ぶ。ウランバートル市を政争の具にさせない権利が市民に与えられていない。市長は、市民代表議会が提案し、首相が任命する。政府が変わったら、市長も変わる。与党に党内対立があった場合も市長が変わる。2018年には党内対立があり、内閣もS.バトボルド市長も変わった。

モンゴル国家行政・地方単位管理法改正が議論されている。しかし、この改正案では市民による直接選挙について何も述べられていない。モンゴルと似た政治体制を取っている国、日本や韓国では市民が市長を直接選ぶ。内閣が変わっても、市長は変わらないため、市は政治的安定性を確保できる。一方で、そうなった場合、政治政策を実施することが困難になるという意見もあるが、市民が直接任命、解任できるということは直接責任を取らせることでもある。それから、市長はある程度の財政権限を持たなければならない。例えば、地方開発のために債券を発行して資金調達を行うなどだ。そして、債券購入者に対し、金利分を免税にできるなどの権限を委譲し、病院や学校をいつ、どこで建設するかを中央政府ではなく、地方が決めるようにすべきだ。

市長を内閣が任命することによって、市民が不利益を被る。例えば、2021年の予算案では、住民36万2千人のバヤンズルフ区には570億トゥグルグの交付を予定している。一方で、住民が7万6千人と5分の1のヘンティー県には2.5倍の1250億トゥグルグの交付を予定している。例外もあるが、もし予算を集中して交付するのであれば、基本的には人口に比例した配分にならなければならない。そうでなければ当該地方に経済的に独立できるよう権限を与えるべきだ。政府に対しては、地方政府改革をいつから始めるのか聞きたい。

市や地方自治体の財源は、いったん財務省へ集められた全ての税金を再配分されるものだ。2019年、市の収入が1.3兆トゥグルグだったのに対し、支出が1.3兆トゥグルグだった。4年前の数字は、8460億だった。経済が拡大し、人口密度が増加するにつれ、市の収入や支出も増えた。予算法の第23条によれば、予算収入は23種類の税金及び税金以外の収入から成り立つ。そのうち、市の予算は16種類の税金及び賃料収入、民営化収入からなる。ウランバートル市の税金収入の60%が所得税、10%が固定資産税、10%がその他の税金が占める。税金以外の収入は、道路使用料、利息と罰金の支払い、国有財産の賃貸収入等だ。ここで一つ注意しておきたいことは、ある市、特に首都での不動産の評価を高く維持するためには、不動産からの税金の半分をその周囲の道路の修繕に使う必要がある。世界各都市で採用されるこのシステムを、モンゴルも採択しなくてはならないことをウランバートル市の渋滞、交通機関、都市計画、土地の不正売買などのニュースを聞くたびに、また誰も責任も負わない状況が思わせる。


大学の数を減らすべきか?

一部の大学は他の都市に移転される

G.ガンバヤル教育・科学副大臣が10月26日、科学技術大学をエルデネト市、教育大学と医科大学をホブド県、ドルノド県、鉱山大学をドルノゴビ県に移すためのフィジビリティスタディ(実行可能性調査)を行っており、来年度から実行に移ると発表した。この発表は全く新しいものではない。政府は同じようなことを以前も2、3回発表していた。ただ政権が変わり、実行されずに終わっていた。なぜなら、これは何十万人に関わる問題であり、受け入れる県に何の準備もない状態で決めることは難しい。目的は、ウランバートル市の渋滞を減らし、地方の発展に繋げ、人口を増加させるためだ。多くの国で、同じような取組がなされている。

2018〜2019年の学年には、高等教育機関94校のうち、86校が首都、8校が地方に位置する。大学35校、専門学校49校、短期大学7校、外国大学の支部3校がウランバートル市に所在する。これらの違いは何か。大学は、学部、大学院、研究所を有する機関である。専門学校とは、ある分野だけの学位を提供し、修士号のプログラムも設けることができる機関である。これらの高等教育機関に在学中の学生数は15万8千人だ。その92%がウランバートル市にいる。2.3%がダルハン市、5.1%がその他の県にいる。大学移転には、これらの人口移動が伴うということだ。量より質という声にも応えようとしている。

質の高い教育は学費が高額である。モンゴル国立大学の1単位は、平均10万トゥグルグであり、1学期に200万トゥグルグ、1年には800万トゥグルグとなる。サント高校は700万トゥグルグ、新モンゴル高校は450万トゥグルグとなっている。モンゴル国立大学の学部のうち、就職率が一番高いのが国際関係、社会学部が90%、ビジネス学部が86%、法学部が85%となっている。学生数は、モンゴル国立大学が2万3千人、教育大学が1万3500人、科学技術大学が1万7200人となっている。つまり、1万7200人をエルデネト市に移すということだ。実行には数年かけて準備しなければならない。ただ、移転先では世界基準となるキャンパスを設計、建設することを期待している。だがモンゴル政府の寿命が4年以上続かなくなったことに注意しなければならない。また前政権の決定を度々変更することを忘れてはならない。

教育の質を上げるためには、全ての小中高、高等教育機関での教員の能力を向上させなければならない。教師は生徒の才能を発見し、発展させ、成熟させ、最終的にはモンゴル人を作り上げるという偉業を成し遂げなくてはならない。だから供給も上げるべきだ。また、高等教育機関を再編し、短大をより技術化し、そのために必要な費用を計算しなければならない。高等教育機関の進学要件を高くし、質を高く、数を少なくすべきだ。学費が低いため、研究、開発、学習環境に使える予算がない。また、高等教育機関と労働市場の需給を関連付けるべきだ。在学中の学生のうち、経営管理専攻の学生が一番多く3万1千人おり、卒業生の20%を占める。教員、教育研究専攻2万3千人、医学専攻2万2400人、エンジニア専攻1万6千人、法学専攻1万2千人、その他専攻の5万1千人の学生がいる。

大学をその専攻分野ごとに再編し、地方に移転させるという決定が度々出されるが、いつも実行されずに終わる。国の地方開発政策と合わせてこれを考えなければならない。ある程度の予算権限を与え、教員の質を上げる必要がある。ウランバートル市の人口密度を減少させるにも有効だ。ただ、いつ実行されるかが問題だ。


モンゴル国営放送社長L.ニンジジャムツが辞任した

モンゴル国営放送はいつ国民に奉仕するようになるか

モンゴル国営放送局(MNB)社長L.ニンジジャムツが辞任した。自らの意思ではなく、圧力を受けたという。MNBにおいてこのような問題が起きるのは3、4度目だ。ニンジジャムツ社長の前任者だったオユンダリ、ナランバートルも同じように辞任していった。一体何が起こっているのかを調査すべきだ。MNBはモンゴルラジオという名前で1934年に設立された。その後、1967年にモンゴル国立テレビが設立された。1998年にメディアの自由に関する法律が制定された。そこでは、政府がメディアを持つことが禁止された。MNBの存在が違法となってしまい、7年間の混乱が続いた。2005年には、公共ラジオ・テレビに関する法律が制定された。国有だった放送局を公共に奉仕するものとした。民主主義国でもこういう例がある。例えば、日本のNHK、イギリスのBBCがそうだ。

MNB社長ニンジジャムツが辞任する際、こう発言した。「私は、同僚たちの安定した協力関係、その他諸事情により、辞任することを決断した」。MNB社長は、全国公共ラジオ及びテレビ評議会(国営評議会)によって3年間の任期で任命される。MNB社長ニンジジャムツは、2017年1月に任命され、今年任期を2023年まで更新したばかりだ。前社長のオユンダリは2015年1月から2017年12月までの2年間務めた。法律には、公共ラジオ及びテレビは公共の利益に資するものであり、国民に奉仕しなくてはならないという条文がある。また、外国人視聴者向けの番組を制作し、放送するという条文もある。MNBの管理組織が国営評議会である。公共の利益を代表する非常勤15人、任命期間6年間の評議会である。国営評議会はMNB社長と契約を締結、解除する権限を持つ。大統領任命の4人、国会大会議任命の7人、内閣任命の4人から成る。今年の12月に全国評議会議員6人の任命期間が終了となるが、MNBの職員たちは彼らに対して辞職を求めている。

また、犯罪防止や公共の利益が侵害されたと裁判所が公開を指示した場合以外、MNBの職員は情報源を公開しない権利を有するという。その他の放送局の記者にはこのような権利はない。MNBの組織変更や活動目的、原則を法律によってのみ変更することができる。

収入源は6種類あるが、主に国家予算だ。全ての世帯、企業に対して受信料が課される。この受信料の価格は、国営評議会の意見に基づき、内閣が決定する。受信料はMNBの総費用の4分の1を占める。イギリスでは、1世帯にテレビ視聴ライセンスを与え、ライセンス料でBBCの資金を調達している。その際、運営費用は総費用の例えば5%を上回らないという上限を設定する。こうすることで、管理職の給料が高く、職員の給料が安いなどということはなくなる。

MNBは国家から独立しなければならないと法律に書かれているが、実際には独立していない。その証拠が次々と起こる社長の辞任だ。ナランバートル社長を辞めさせるために、予算を半分に減らした。2012年に民主党が与党となり、ナランバートル社長を解任し、自分たち側の人物を任命するために様々な手口を使った。その後の2年間は、民主党事務総長のオユンダリが社長を務めた。それから、人民党が与党となり、同じく予算を2倍減少させると言いオユンダリは辞任した。その後、ニンジジャムツが社長となった。2017年に52億トゥグルグ、2018年に39億トゥグルグの資金を調達した。しかし、人民党は内閣を変え、新しい内閣は別の人をMNB社長に任命しようとしていると考えられる。 MNBは公共放送と言われるが、政府が自らの放送局を持つことを禁止されているため、実際は政治家が自分の名声を上げるために圧力をかける傾向にある。MNBが事実上公共のために働くことができるような権限を与えられ、独立することがいつ実現できるのか。MNBは本来、民間放送局がやるべきでないことを担当する。あまり利益があがらない教養のための、民族のアイデンティティーを維持するための番組制作などだ。また、予算のうち従業員への給与が少ないのも事実だ。今回の辞任問題はこれも原因だが、政府が広報のためだけにMNBを使うことを防ぐべきだ。

ダムバダルジャー・ジャルガルサイハン