モンゴルに来る外国人投資家は年率50〜100%の利益を要求しています。この要求に応えることができる唯一の分野は鉱業、特に探査分野です。

J(ジャルガルサイハン): あなたの会社はディスカバー・モンゴリア・フォーラム(Discover Mongolia Forum)を実施して今年で15年目を迎えました。これについて簡単に紹介してください。またモンゴルの鉱業分野の現状と外国人投資家を呼び込む時の長所と短所は何ですか?

ビルグーン: 私自身はディスカバー・モンゴルリア・フォーラムを2012年まで主催していました。今は主催委員会に助言している立場です。同フォーラム主催のきっかけは、トロント市で行われる世界最大の鉱業イベントPDAC大会でした。そして2000年にモンゴルへ投資家を呼び込むために初のディスカバー・モンゴリア・フォーラムを開催しました。

J: それまで鉱業界ではモンゴルはそんなに知られていませんでした。今は世界の鉱業界でモンゴルという名は知られています。今年はモンゴルの対外債務額、経済危機などから状況は変わってきています。これは鉱業分野にどのような影響を及ぼしていますか?

ビルグーン: 現在、モンゴルの鉱業分野へは二つの形で投資することが可能です。一つは国内外の投資家が鉱物の採掘事業を行っている会社の株式や債券を取得すること。二つ目は、鉱物探査会社の株式を取得もしくは融資することです。最も良い方法はモンゴル或いは国際(トロントやオーストラリアなど)取引市場に上場している会社の株式を取得することです。

J: 鉱脈を探査することは簡単、しかし探査して鉱床を発見することは難しい。何百万ドルも使って探査したが何も発見できないケースもあります。これについてどう思いますか?

ビルグーン: 鉱業分野の中で探査はもっともリスクが高いと言えます。Explanation insideというウェブサイトには探査に関する情報が多くあります。同サイトでブラッドクックという地質学者が書いた記事によると、モンゴルのオユ・トルゴイ鉱山のようなメガプロジェクトを何もないところで探査して発見する頻度は100年に1回しかないとのことです。ボロー・ゴールドのような100万オンスの金の埋蔵量をもつ中位の金鉱山を発見することは1000年に1回とありました。

J: 一回のボーリング調査のコストはどのくらいですか?

ビルグーン: 今の市場価格でいうと1mのボーリングコストは100~200ドルです。しかし、この価格は探査対象物によって異なります。オユ・トルゴイのような地下深部にある鉱床は最低500~600m掘らなければなりません。これに対し比較的浅い部分にある鉱床の場合は100~200mのボーリングで十分です。ボーリング1本のコアを100mとすれば2万ドルとなります。しかし、国際取引市場でIPOするまでになるには最低100本のボーリングが必要とされます。探査地に鉱脈があるかを確定するために最低200万ドルのボーリング調査が必要です。

J: 小規模な会社が探査し埋蔵量を確定させる。それを大手企業が買う。大手企業は探査をしない。モンゴルで探査実施中の鉱山会社は外国の投資家を呼び込んでいます。これにはどんな問題がありますか?

ビルグーン: BHBビリトン、リオ・ティント、ヴァーレなど多国籍鉱業・資源グループは、あなたが言うように鉱山プロジェクトを買収する方法で資源を所有します。小規模な鉱山会社は今ある鉱山の採掘が終わった時、鉱山は再生不可能なためリスクを負いたがりません。そのため大手企業に売却するのです。2010年に大統領府は探査ライセンスの新規交付、既存の探査ライセンスの譲渡を禁止しました。理由は、探査ライセンス売却の増加と地元住民の苦情です。それにより探査して新しい鉱山を見つけることができなくなり、探査自体が持続できなくなりました。これを受け、鉱業・重工業省はオンラインで探査ライセンスを交付することとなりましたが、まだ実施されていません。

J: 2017年に14の探査ライセンスが無効になりました。その理由は?

ビルグーン: 私は鉱業・重工業省の人間ではないので理由は分かりません。無効となったライセンス情報をみると殆ど考古学的発見が多く、鉱山とした場合の自然環境に及ぼす悪影響が大きいと判断されたのではないでしょうか。

J: あなたは9月に開催されたUBエコノミークラブの会議で、産業の多様化政策について今はその時機ではないと話しました。どうしてそう思いますか?

ビルグーン: 2009年から2012年ではモンゴルの経済成長率は最も高く17.3%に達し、新興国の中で首位となりました。100億ドルの対モンゴル外国投資は2つも3つも入って来ていました。当時のモンゴル政府は国民全体が鉱業分野に集中することは良くないとし、非鉱業セクター強化による産業の多様化に取り組み始めました。そして国際市場に債券を発行し、多額の負債を作りました。その負債で非鉱業セクターの中小企業を支援するためにソフトローンプログラム、価格維持プログラムなどを実施しました。同時に鉱業分野への制限的な投資政策を行い、その結果対モンゴル外国投資が激減しました。モンゴルは過去5年間経済危機の状態にあります。これは基礎がない産業を強制的に多様化させようとしたのは間違いだったのではないかと私はみています。モンゴルは鉱業分野で次のオユ・トルゴイ、タワン・トルゴイとなる鉱山を発見していけば、産業の多様化は自然に進むと思います。

J: 産業の多様化がなくてもすべての国民に鉱物資源の恩恵を効率よく分配できるのですか?地下にある鉱物資源は私たちが作ったものではなく、自然が作ったものです。しかし、この資源が一握りの人々の財産となってしまっています。これについてはどう思いますか?

ビルグーン: 最も重要なことは透明性です。まず、鉱業分野だけで対モンゴル外国投資をどのくらい呼び込めるか、次の鉱山をどのように開発するかを優先的に考えなければなりません。そのためには自分たちが対モンゴル外国投資家の立場になって考えてみる必要があります。モンゴルに来る外国人投資家は年率50~100%の利益を要求しています。この要求に応えることができる唯一の分野は鉱業、特に探査分野です。

J: 先ほどあなたが言った透明性についてですが、モンゴル取引市場に上場している企業のうち、報告書を公表している企業は5、6社だけです。例えば、香港或いはトロントの取引所で上場している企業は透明性を求められており、もし求めに応じられない場合は上場できません。株式会社の透明性においてカナダは発展しています。最初から活動に透明性がある企業は、そうでない企業より資金調達が楽にできています。これをモンゴルでするには、どうすればいいと思いますか?

ビルグーン: とても興味深いことに触れました。モンゴルの鉱山会社と外国の鉱山会社では社会との関わり方が異なっています。モンゴルの場合は、自分たちが発見した鉱山の埋蔵量をできるだけ小規模に見せようとします。しかし、外国の場合はできるだけ有望性が高くより良く見せようとします。なぜならば、有望性があり、より良く見えるプロジェクトは資金を集めることがより簡単だからです。モンゴルではその鉱山に有望性があると見られてしまうと政治家や金持ちの会社が買ってしまいます。あるいは地方政府の戦略的鉱山と名付けられてしまいます。そうすると鉱山会社は自らの投資で発見したものを保護できなくなってしまいます。

ビルグーン * ジャルガルサイハン