ダワースレン氏はモンゴル国立大学、イギリスのマンチェスター大学、アメリカのニュー・ハンプシャー大学を卒業しました。経済学博士号を取得した経済学者です。彼女は世界銀行の「持続可能な生活」プロジェクトの主任、マイクロ金融開発基金の会長、世界銀行の顧問、アメリカの非営利団体ユナイテッド・ウェイの研究者を務めた実績があります。現在、モンゴル金融規制委員会の委員長を務めます。

J(ジャルガルサイハン): こんにちは。あなたはこの2年、金融規制委員会の委員長を務めてきました。あなたはモンゴル国立大学をはじめ、イギリスやアメリカの大学を卒業しました。モンゴルだけではなく、アメリカの銀行や金融機関に務めた経験もあります。そのため、今日はモンゴルの金融市場、その中で証券市場についてお話を伺いたいと思います。モンゴルの証券市場は規模が小さいため、資金調達は主に銀行を通じて行われています。そのため、銀行の金利が下がらないという現状にあります。これについてあなたはどう思いますか?

S.ダワースレン: まず、番組に招待して下さってありがとうございます。私は金融規制委員会の委員長に就いて2年半になります。モンゴルの金融分野全体を見れば、あなたが先ほど言った通り、証券市場の規模が小さく、あらゆる資金活動は銀行を通じて行われています。そのため、銀行の金利が高いという現状に同意します。金融市場は、世界標準でみれば銀行、保険、証券市場といった3本柱で構成されます。モンゴルの金融市場を見ると、過去20年間、銀行の事業内容は比較的高い水準で発展してきました。国民も銀行が提供するサービスに慣れてきました。その一方で、保険分野や証券市場はあるべき水準にまで発展していません。その原因を探ると、証券市場の場合は3つの要因が見えてきます。1990年に民営化が行われ、初めて証券委員会という組織が設立されました。この民営化に際し、当時国有企業だった457社が民間企業になりました。民営化について国民の理解が不十分だったことや証券市場の仕組みが明確ではありませんでした。さらに証券市場をどのように発展させていくかについての政策、具体的な証券市場への参加者、参加企業の立場などが不明瞭でした。このような状況の中で民営化が行われました。つまり、証券市場のあるべき姿、特徴、原則、活動といったものがはっきりしない状況の中で民営化が進められました。その中で証券市場に「株式会社」というものが出現したのです。

今日、モンゴルの証券市場には約300社が上場しています。しかし上場企業は、証券市場にあるべき本来の姿や形態に合わせることなく長年来ました。そこで今後新たに上場する株式会社には、上場企業としての責任や活動を期待しています。古い株式会社を証券市場から追い出すのではなく、どのように株式会社としてあるべき姿にしていくのか、何を見本にしていくのかを明確に示す必要があると思います。

J: 現在、モンゴルの証券市場の時価総額はいくらですか?

S.ダワースレン: 証券市場の時価総額は2兆5千億トゥグルグです。国内総生産の10%に相当しています。

J: あなたが金融規制委員会の委員長を務めている2年半の間にモンゴル証券取引所で7社がIPOをしました。今日、これらの会社が直面している問題は何ですか?例えば、株式の公開当初の価格は維持されていますか?それとも下落していますか?

S.ダワースレン: まず、金融規制委員会は証券市場への政策を改善する必要がありました。従って、証券市場について調査、分析を実施しました。この調査で私たちは、証券市場に上場している会社はどうして成果を上げられないのか?その原因は何かを探ることから始めました。経済が良くなれば証券市場も活性化するという人たちもいます。本当にそうなのでしょうか。例えば、証券市場の時価総額が国内総生産より何倍も高く、流動性も高く、活性化している場合は、経済成長と関連します。しかし、モンゴルのように時価総額が低く、流動性が弱く、活性化していない証券市場の場合、経済成長から受ける影響もしくは経済成長に与える影響は低いのです。

ここで考えたことは、証券市場の活性化を図るためにはまず証券市場で取引される商品の数を増やすこと、つまり企業がIPOに関心を高めることでした。IPOをする1つの理由は、長期的に資金を調達することです。また投資家から見ると、銀行だけではなく証券市場における株取引による新たな資産運用の場です。

IPOをする会社の株式は新規上場時に需要が高まり、株価も上昇し、仲介する株式ブロカーもその取引手数料で更に売買を活性化させようとします。しかし、時間が経つにつれIPOをした会社の株価は下がり、株式を保有している人たちは株を売り始める様子が見られます。

J: この2年でIPOを希望した企業は何社ありますか?

S.ダワースレン: 7~8社です。全部IPOをしました。現在、IPOを準備している会社はいくつかあります。

J: IPOの希望を受けてからどのくらいの期間で許可を出していますか?法律でその期限が決まっていますか?

S.ダワースレン: まず、IPOの申請書類を受理してから書類審査の期間は30日としています。もし、追加書類が必要な場合は受理してからさらに30日と定めています。

J: 会社はIPOを出す時は株式の何パーセントを公開しなければならないですか?

S.ダワースレン: 10年前、10社がIPOをして、彼らは株式の10~15%を公開していました。最近、IPOをする会社に対し、私たちは最低限で株式の25~30%を公開することを求めています。

J: 金融規制委員会が監視すべきもう1つの組織はノンバンクです。つい最近、政治家が中小企業開発基金からの低金利融資を不正に受けた事件がありました。ノンバンクを所有している政治家はたくさんいます。政治家たちは不正に受けた融資を自分たちが所有するノンバンクの活動資金に回したのではないかという疑惑があります。この件に関して金融規制委員会は何をしていますか?どんな措置を取っていますか?

S.ダワースレン: この件に関して、金融規制委員会は500のノンバンクの中で規模が大きい20のノンバンクに対して関係する司法機関や監査機関と協力して監査を行っています。

J: 最近の報道で、金融規制委員会が14億トゥグルグの特別予算を受けたとありました。これについて説明して下さい。

S.ダワースレン: 金融規制委員会は政府機関です。この14億トゥグルグは本年度の予算ではなく、過去2年間の経費削減や収入の増加によって受けたものです。金融規制委員会の活動は国家監査機関、財務省の管理下にあります。この14億トゥグルグは、金融規制委員会が実施しなければならない活動において、職員の仕事を評価し、改善を促進するための増給に使われることを目的としています。

J: 金融規制委員会の職員は何人ですか?

S.ダワースレン: 140人です。金融規制委員会は金融市場において証券市場、銀行、ノンバンク、保険、資金洗浄など様々の分野での金融規制を行い、監視しています。

ダワースレン * ジャルガルサイハン