アフリカ大陸の北西150kmに位置するカナリア諸島。ここは人口300万のスペイン領の群島である。大航海時代、コロンブスに発見された島でもある。その昔、この島で宮殿が発見され、そこは大量の金銀財宝で溢れていたと言われる。

気候は1年を通して温暖で過ごしやすく、年間数百万人の観光者が訪れる。20年前までカナリア諸島ラス・パルマス県の南部は荒涼とした丘だった。しかし、今では高級ホテル、カンファレンスホール、レースサーキット、高級カントリー・クラブが建ち並ぶ観光、国際カンファレンスの中心地となっている。

“西欧諸国では、どのような開発プロジェクトでも工事は必ず期間内に完了し、その投資に見合った利益を回収できる。しかし、モンゴルの大規模プロジェクトとは、一時の話題と起工式にしか過ぎない。この違いはどこにあるのだろうか?それは経済の自由度である。”

モンゴル経済の自由

カナダのフレーザー研究所が出す2018年世界経済自由度報告書をみて分かることがある。経済自由度が高い国(香港、シンガポールなど)の国民の生活水準は高く、経済自由度が低い国(ベネズエラ、リビアなど)の国民の生活は苦しく、貧困率や失業率が高い。これは過去20年間の調査から明らかになっている。

経済の自由は、個人の自由選択権の有無、市場経済制度と生産手段の私有、そして人と私有財産の保障で定義される。世界162ヵ国を10点満点で測定する経済自由度ランキングでは、モンゴルは7.4点で48位となっている。これは、

1)政府の規模(8点、15位)

2)法制度と財産権(5.5点、62位)

3)健全な資金(9.39点、42位)

4)国際貿易の自由(6.68点、104位)

5)規制(7.62点、87位)

という5項目で測られる経済自由度を示す指数である。そして、5)の規制には

5a)信用(8.44点、88位)

5b)雇用(6.65点、71位)

5c)ビジネスへの規制(6.69点、62位)

というカテゴリーで測定される。

この指数の主な意義は、他国に比べて自国がどの位置にいるかというより、どの分野において経済自由度が低いのか、その原因を突き止めて改善するための指標と理解することにある。経済自由度が高い国の国民は平和で豊かであり、海外に逃げることなく、自国で家族と一緒に安全に暮らしている。

揺れる法制度

法制度とは、全ての人や組織が法律を遵守し、法律が全ての人に平等に機能する原則を言う。この原則が機能しなければ、民主主義は徐々に独裁政治へと変わり、言論の自由が保障されなくなる。そして通貨の価値がなくなり、経済が破綻し、国民を軍事力で押さえつけるようになり、最後には紛争が起こる。

モンゴルの経済自由度の足かせとなっているのは法制度と財産権(5.5点)である。2018年の世界の経済自由度指数では、モンゴルは裁判官による司法権行使の独立性3.8点、裁判所の独立性3.77点、財産権の保護4.42点というスコアだ。この項目は前年のランキングでも下位となっていたことが目を引く。

2000年の憲法改正以降、司法制度での役割分担が曖昧になり、今では区別ができない状態になっている。国会議員の4分の1が内閣及び省庁の役職を兼任している。大統領が法案を出し、最高裁判所や賄賂対策庁の長官に自分の意に沿った人物を指名している。

“モンゴルの国民は選挙の時だけ民主主義に参加し、選挙が無い時は政治家による芝居を目にするようになった。”

国民と政治家の代弁者となるべき市民社会活動団体は、ソーシャルネットワーク上に話題を提供するだけの存在だ。モンゴルの法律が全ての人に平等に機能しなくなって久しい。世間を騒がせた逮捕劇も、直ぐ忘れ去られ犯罪者を釈放してしまう。或いは裁判の審議が闇に葬られる。裁判官や警察官が罪を犯すことに何の抵抗もなく、賄賂を受け取ることが今の社会では当たり前となっている。

フリーライダー

国民の生命と財産を保護することは政府の基本的な義務である。財産に関して言えば、個人、法人、共同、公共、国有という様々な所有形態がある。このうちどれかを不正に奪取すれば、他の形態にも直接影響する。財産を保護するための最低限の制度として、登記され所有者が明確にされなければならない。しかし、モンゴル政府はこの登記をしようとしない。登記されていない、つまり所有者が明確になっていない財産は、それが横領されても誰も文句を言わないからだ。

“この横領者たちを“フリーライダー”つまりタダ乗りする人という。その意味は、自分では何の努力もせず報酬だけを受け取る人のことである。モンゴルではこのような人たちを「ウサギ」という。”

このウサギたちに財産を横領する機会を与えているのは政党である。政党は土地や鉱物資源など国民の財産を横領し、自分たちの政党という秘密の「クラブ」の所有とした。このクラブは非公開なものであり、党員だけがサービスを享受できる。クラブのルールも非常に細かいようだ。クラブのルールに違反した者は党から懲罰を受け、党員は徹底的に恨むようになる。その代表的な事例は、民主党と元法務大臣Kh.テムージン、人民党と国会議員L.オユン・エルデネに見ることができる。

都心の一等地や山の手の住宅用地、鉱山、放牧地、国有企業の全てを政党というクラブが所有している。エルデネト鉱業の株式の49%を民主党クラブが、51%を人民党クラブが保有している。今日では双方が保有する株式を増やすために争っている。司法機関、賄賂対策庁、金融機関もどちらかのクラブの会員となっている。

“モンゴルのあらゆる財産と政権は、既にこれら秘密のクラブの会員であるウサギたちのものになっている。そして、モンゴル国民は自分たちが持っている財産の本当の価値を理解していない。”

モンゴルでは、私たち国民の財産を誰が保障できるというのか?

ダムバダルジャー・ジャルガルサイハン