ドゥグル・ジグジドマー氏はスペインのバルセロナ大学法学部、アメリカのコロラド大学経済学部、モンゴル国立大学、モスクワの国民産業経済大学をそれぞれ卒業しました。ジグジドマー氏は世界銀行グループの国際金融公社で民間セクターの専門家、プロジェクトリーダーとして勤めています。過去には、アメリカ合衆国国際開発庁のコンサルタント、グレンコアインターナショナル、モンゴルエルデネト鉱業、韓国サムスン出資のエルドサン合同会社などに務めていました。ジグジドマー氏は投資政策、農業分野の競争力について研究報告書を出しており、「投資環境の改善マップ」研究報告書を作成しました。

J(ジャルガルサイハン): こんにちは。この間、私はあなたたちが作成した「モンゴルの投資環境改善マップ」という報告書を読みました。この報告書には、モンゴルの投資環境をどのように改善すべきか、特に農業分野において何をどのように調整する必要があるのかなど、国際的な専門家たちによる提案や助言が数多く含まれています。この報告書を作成した目的から教えていただけますか?

ジグジドマー: モンゴル政府は、経済の多様化を図るという大きな目的を掲げています。これに関連してまず、モンゴルの経済発展に民間セクターの役割はどこにあるのか?次に、政府は民間セクターの発展にどのような役割を担っていて、どのような投資環境を整備すれば民間セクターが発展するのか?この報告書は、この2つの問題に着目していくつかの調査を実施し、その調査結果に基づいて作成したものです。

 私たちは何度も調査を実施した過程でわかったのですが、モンゴルは長い間外国投資についての具体的な調査研究をしてきませんでした。次に、外国投資を金額のみで評価する考え方が定着していることが見受けられます。また、政府がとる政策についても検討してみました。政府の政策には、経済発展を促進させるために、政府がどのように働きかけるかについて明示しています。しかし民間セクターがどのような役割を果たすのか?その中でも特に外国投資の役割は何かについての情報が非常に少ないという印象を受けました。

 モンゴル経済は鉱業で成り立っています。鉱業が成長すれば、経済も成長するという思い込みが国民に定着しています。しかし、鉱業のみに頼ることが、どのような歪みを生むのか、それを今私たちは実感しているとおもいます。私たちは、鉱業製品のみに頼ることなく経済を成長させ、産業の多様化を図るためには、外国投資が非常に重要な役割を果たすということが分かりました。

 そのため、私たちは3つの観点に立ち調査を実施しました。1つ目は、経済発展や外国投資誘致における現状と可能性。2つ目は、モンゴルに関心を向ける外国投資家と政府はどのように協力し、投資を拡大させる支援をするのか。3つ目は、経済発展と外国投資政策を持続可能なものにする組織の必要性です。

J: 現状では、モンゴルは鉱業国と見られ、外国投資は鉱業分野に集中しています。それが周期的に変化します。あなたは「モンゴルの投資環境改善マップ」で経済の多様化に関して、どのような提案をしていますか?

ジグジドマー: まず、モンゴルはどの分野で競争力があるのかを、政府が定める必要があります。鉱業分野については、地下にある十分な天然資源によって外国から投資を呼び込めます。しかし、その他の分野については、私たちは何を目指し、どこへ進むべきなのかというビジョンは不明です。

J: あなたは、報告書で農業分野を取り上げていました。農業分野にどういった提案をしていますか?

ジグジドマー: 私たちは農業分野を約30のサブセクターに分けて調査分析を行いました。この中でいくつかのサブセクターは外国投資を誘致し、協力して製品を輸出するようになれば、経済発展に寄与できる可能性があると判断しました。例えば、私たちの調査分析では、集中した家畜飼育、牛乳の搾乳ファーム、カシミアによる最終製品などのサブセクターの評価は非常に高いものでした。それ以外にも競争力を向上させることが可能なサブセクターがあります。それらのサブセクターがより競争力を付けるために、政府は法的環境整備、知識向上、人材育成を重視し支援すれば、これらのサブセクターに投資を呼び込む可能性があるとみています。これらのサブセクターは、例えば、果実生産、グリーンハウス、家畜の肥料生産などがあります。

J: 外国投資を誘致でき、経済発展に繋がる分野がいくつもあることがわかりました。こういったことを宣伝し、海外へ情報提供する外国投資局という組織がありました。私自身もこの組織に務めていました。この組織は後に経済開発局となり、今では国家開発エージェンシーになっています。この組織構造の変遷をどう見ていますか?

ジグジドマー: どんなことにも成果を出すには組織の役割が重要です。先ほどあなたが言ったように、外国投資局から経済開発省所管の経済開発局となり、その次に国家開発エージェンシーになりました。こうやって名称や組織変更が行われる過程で、外国投資を誘致することが忘れ去られたというのも事実です。この組織に働く人の数も少なくなりました。

J: 何人いますか?

ジグジドマー: 今では3、4人です。

J: 先進国の事例をみると、外国投資の誘致に成功した国は、経済を多様化できたように思います。これにより雇用は増加し、競争ができています。これに関してあなたは、モンゴル政府にどのような助言を提案していますか?

ジグジドマー: 今後、まず外国投資の誘致や、関連問題を取り扱う独立したエージェンシーもしくは部局を設置する必要があります。次に、国の宣伝や投資家を誘致するために必要な予算を計上する必要があります。他国の事例をみれば、こういった組織に対する予算は1,000,000ドル以上です。そこに働く人の数は約16人かそれ以上です。また、人材の教育も重視します。最低限MBAを取得させて、ビジネスの知識や用語を習得した人材でなければなりません。これらをしっかり整備しなければ、外国投資を誘致することは難しいと思います。もちろん、これは一夜にしてできることではありません。

J: 2000年まで外国投資局には16〜17人の局員がいました。局員たちは皆、外国語を習得し、修士号を取得した高学歴でした。しかし、政権が交代し、組織自体を変更しました。あなたが出した報告書にも、政府の政策を実行するためには、安定した政策の下で組織が強化されなければならないとありました。このためにあなたはどのように政府に働きかけていますか?

ジグジドマー: 私たちが主にできることは助言をし続けることです。しかしそれ以外に、外国投資政策や宣伝PRなどに携わる人たちに研修を実施しています。

J: あなたは2000年から国際開発庁、国際金融公社などに勤め、モンゴルに関係するプロジェクトに参加してきました。その中で最も成功したプロジェクトは何ですか?

ジグジドマー: 私が担当している分野は投資環境です。投資環境を担当する者として、モンゴルの投資環境には少なからずショックを受けています。その原因は、政府が唐突に実施する法改正です。政権が安定し、それが長期的に持続していれば、投資環境はそうそう揺れ動くものではありません。また、専門監察庁の構築を図るプロジェクトを数年間指導してきました。同庁のビジョン、民間ビジネスに対する関係、リスクに基づいた監察制度の導入に直接関わりました。

J: 昔は各分野にそれぞれの監察機関がありましたが、それを統合して専門監察庁と名付け、すべての分野の監察を行う機関となりました。専門監察庁の組織構造は、他国と比較してどうですか?

ジグジドマー: 専門監察庁の構造は非常に特徴的です。今の専門監察庁は、2003年に20あった監察機関を統合して設立された機関です。当時、これは大きな構造改革となりました。しかし、実際に何を監察するのか、何を見分けるのか、見分けた問題にどのような措置を取るのか、法律を遵守させるためどのように改善させるかが不十分でした。私たちはプロジェクトを通じて、それらの改善に取り組みました。他国の場合は、大きな構造改革に先立ち、まず類似した分野の監察機関を統合して試行します。ですから現在のモンゴルの専門監察庁の構造はよくないとは言えません。しかし肝心なのは、その活動内容です。

J: モンゴル政府と協力している国際機関は数多くあります。最近の世界銀行もしくは国際金融公社はモンゴルでどのような活動をしていますか?

ジグジドマー: 世界銀行グループは、モンゴルとのパートナーシップ協定の見直しをしています。特に私たちが注視している分野の1つが農業分野です。この分野への投資を誘致するために何を整備しなければならないか。これに関して引き続きコンサルティングしていきます。次に有望性があるサブセクターに投資を行います。

J: 世界銀行はモンゴルの発展に重要な役割を果たしてきた国際機関です。モンゴルが世界銀行に1990年に加盟して以来、モンゴルへおよそ10億ドルの投資やソフトローンを交付してきたとあります。世界銀行のみではなく、様々な国際機関がモンゴルに提供している援助や融資の成果を図るために、政府に対する国民の監視、NGOの監視を充実させる必要があります。一時期に比べて世界銀行やその他の国際機関は、モンゴル人を多く雇用するようになりました。昔は外国人ばかりでしたが(笑。

 最後になりますが、国際機関はモンゴルでどのような活動をしているのかを限られた時間の中で話しました。また、あなた方が発表した「モンゴル投資環境改善マップ」は非常に有意義だと思います。

今日はインタビューに出演して頂き、ありがとうございました。今後のご活躍をお祈ります。ありがとうございました。

ジグジドマー: ありがとうございました。

ジグジドマー * ジャルガルサイハン