2019年が終わり、2020年はモンゴルの民主化革命から30年の節目の年となる。この30年間、民主主義の道を歩み続けてきて、今モンゴルは岐路に立っている。

今日、私たちは政治を法の下に統治するのか?もしくは法律を自分の為に利用する政治家たちの下で生きるのか?経済においては自由市場を維持して残るのか?もしくはこれからもエルデネビレグリズムを続けるのか?市民にとっては、スモッグに覆われたコンクリート・ジャングルに住みつづけるのか?もしくは衛生的で緑に囲まれた環境に住むのか?私たちは何の道に進むのかを選択する必要がある。そして2020年はまた国政選挙の年でもある。

法律を私的に利用する政治家による統治か?
法律による統治か?

マネーロンダリング対策やテロ資金供与対策などを推進する国際組織である金融活動作業部会(FATF)の国際協力枠組であるアジア太平洋マネーロンダリング対策グループ(APG)の会合が9月にバンコクで開かれた。モンゴルはこの会合に参加し、相互審査を受けた。モンゴル政府は、FATFの20の勧告のうち15の勧告を実施しており、11項目の有効性評価のうち4項目で対応が不十分とされ、中程度という評価を受け「グレーリスト」に入ることとなった。

モンゴル政府はこのグレーリスト入りの責任を誰かに負わせる必要があった。そして金融規制委員会とモンゴル銀行のトップを解任した。モンゴルはなぜグレーリストに入ったのか?そしてグレーリストからどのように抜け出せるかについては、私が執筆したグレーリストに関する記事に詳しい。

長い協議の末、ついに国会は憲法を改正した。この憲法改正がどのような結果をもたらすかは、時の経過とともに明らかになるだろう。だが重要なのは、すでに制度上の問題として顕在化している「モンゴル化した半大統領制」を正すことができなかったことだ。

司法制度改正では、「独立した司法」の構築の第一歩となったと期待している。しかし、憲法改正に伴ってその他の法律をどのように改正するのか、多くの課題が残されている。憲法改正については、私たちはデファクト・ディベートを数回行ってきた。詳しくはこちらをご覧いただきたい。

2019年は司法制度が政治からどれほど独立しているか、特に大統領からどれほど独立していたかを知る年でもあった。大統領は、6月にサルヒト銀鉱山事件に関与した17人の裁判官を解任した。しかし未だにその後任を任命していないため、最高裁判所の民事裁判は停滞したままである。

また、国家安全保障委員会の権限で裁判官、検察官、賄賂対策庁長官を解任・任命することが可能となる法案が可決成立した。これは、立法権が司法権に直接影響を与えるという悪しき慣例が法制化されたということだ。国民はいつになったら法律による統治が機能するようになるかを待っている。司法の独立がなされなければ、大統領を辞任させる動きが2020年に起こるかもしれない。

経済の自由か?
エルデネビレグリズムか?

過去30年の間で、モンゴル経済に明らかな変化をもたらした2つの大規模プロジェクトがある。

1つは、社会主義時代から始まったエルデネト銅鉱山の開発プロジェクトである。この銅鉱山を開発するエルデネト鉱業は、モンゴルの政財界を表からも裏からも支援してきた。そのため、この会社は設立当初から国民の大きな関心を引く話題の一つとなった。

そのため、2019年もエルデネト鉱業の株式49%を取得する事件を巡っては、誰もが関心を寄せる大きなニュースとなった。この株式取得事件では、TDB銀行の取締役会長D.エルデネビレグ氏が逮捕された。しかし、国民へ何の説明もなく逮捕されたエルデネビレグ氏は間もなく釈放された。モンゴル政府は緊急としてエルデネト鉱業を監視下に置き、内部監査を実施した。公共の財産を政府高官と共謀し横領したこの事件については、「エルデネビレグニズムⅡ」という記事を読んでいただきたい。この問題は、現在のモンゴルの政治、経済の本当の姿を表している。

もう1つは、21世紀の幕開けと同時に開始されたオユトルゴイ鉱山プロジェクトである。2019年は、モンゴル経済史上最大とされる同プロジェクトの実施契約が締結されて10周年となった。このプロジェクトが動きはじめてから、その契約内容にまつわる問題が絶えず話題になってきた。

モンゴルの裁判所は、政府の決定により締結された「ドバイ契約(坑内掘り鉱山への融資に関する契約)」が違法であると見ている。国会は「オユトルゴイ鉱山利用においてモンゴルの利益を保障する」という決議案を発表した。とにかく、2020年にはオユトルゴイに関する契約が変更されることとなっている。この契約書にどのような欠点があるかについてはこちらの記事を読んでいただきたい。私たちは、この契約書をどのようにモンゴルの利益となるように変更できるのか疑問に思っている。なぜならば、私たちはこれほどの大規模プロジェクトの契約交渉に取り組むことができる専門家を未だに養成できていないからだ。

2020年にオユトルゴイ・プロジェクトは前に進むのか、止まるか。それはモンゴルへの外国投資がどうなるのかに繋がっている。

クリーンエアか?
スモッグのジャングルか?

U.フレルスフ内閣は、ウランバートル市内での原炭(採掘されたままの、加工されていない石炭)の使用を全面的に禁止した。その代わりに練炭をゲル地区の住民に供給し始めた。その効果は、市内の有害スモッグの減少に見ることができる。これは暗闇の中に一条の光となった。市内の有害スモッグの明らかな減少は肉眼で確認できるほどだ。しかし、大気中の粒子状物質、二酸化硫黄などの削減への取り組みが残されている。

国際連合による2019年の調査では、大気汚染がモンゴル人の死亡原因上位10項目の1つとなっている。大気汚染削減のためには41億ドルが必要だが、その80%は、どのように工面するのか決まっていない。大気汚染削減のためにどれだけ投資をしようと、「クリーンエア基金」のように資金が横領されてしまっては、穴の空いたバケツに水を注ぐようなものだ。

2019年を表すもう一つの出来事は、自然歴史博物館を取り壊したことである。自然歴史博物館の取り壊しに反対し、ウランバートル市民は様々な形で戦ったが、結局勝利することはなかった。市民は、歴史文化遺産の1つが姿を消し、代わりにコンクリート・ジャングルがまた1つ増えることを恐れて戦った。一部の人は、自然歴史博物館の取り壊しの裏にまたも土地売買が違法に行われたとみている。

ウランバートル市にはどのような土地問題があるかについて「THREE PECULIAR THEFTS」(英字記事)で分析したことを読者は覚えていると思う。 ウランバートル市に建てられたほとんどのビルが「腐敗の歴史像」である。これから自然歴史博物館の跡地に次の像が建てられるのを見ることができるだろう。

ダムバダルジャー・ジャルガルサイハン