モンゴルの教員たちは23年間停止していた総会を今年再び開催した。人口学的に1つの区切りとなるこの期間に教育分野の範囲、法的環境、組織構造、教育カリキュラムなどが大きく変わった。モンゴルの人口は100万人増加し、320万人となった。私たちは過去16年間で教育法を24回改正し、300もの条項を変更・付け加えた。これは教育分野がどれだけ揺れてきたかの証左である。過去を振り返り、評価し、将来を計画する時がきた。

モンゴルの教育を数字でみる

2018〜2019年の最新の統計では、モンゴルには小・中・高校合わせて803の学校がある。そのうちの80%は国立(モンゴルの学校は国が設立する)、残りは私立の学校である。国立学校の70%、私立学校の80%が高等学校である。全学校の70%は地方に、30%がウランバートルに所在している。人口の45%がウランバートルに居住しているので、ウランバートルでは学校が不足し、地方には生徒が不足しているという現状である。そのため、全国の28校(そのうちウランバートル市内25校)の212クラス8,451人の児童生徒が3部制で就学している。その85%は小学校、12%が中学校、3%が高等学校である。低学年の生徒が夜遅くに授業を終え帰宅するようになっている。

小・中・高等学校に60万人の生徒が在籍している。この数字は前年より2万人増加している。生徒の93%は国立学校に通学しており、1クラスあたりの生徒数は平均28人である。しかし、ウランバートルの35校、地方の3校では、1クラスに平均38〜54人の生徒が学んでいる。

小・中・高等学校の教職員数は5万人であり、その90%が国立学校に在職している。教職員全体の3万人が教員であり、その82%が女性である。また、教員の中で学士号取得者は22,000人、教員専門の短期コース修了者3,000人、修士号取得者4,347人、博士号取得者19人である。経験年数で見ると、教員全体の3分の1は2〜5年、5分の1が5〜10年となっている。

高等教育機関94校の内訳は、大学院37%、大学52%、短大7%、外国の大学の支部校3%となっている。このうち大学14校、大学院4校が国立である。高等教育機関全体の86%はウランバートルに所在している。

高等教育機関には158,000人の学生が在籍しており、そのうち56%は国立、44%が私立、0.2%が外国大学の支部校に在籍している。学生の専攻は、ビジネス・経営・法律27%、教育15%、技術・工業・科学14%、保健・社会保障14%、芸術・人文およびその他9%である。

高等教育機関には13,000人の教職員が在職しており、そのうち正規教員6,700人であり、その63%が国立大学に在職している。

教育格差、社会的格差

国立と私立学校の両方が全ての教育段階で学校を運営している。小・中・高等学校の20%は私立学校である。しかし、この私立学校には全生徒の僅か7%しか在籍しておらず、教員も9%が在職しているのみである。高等教育機関について言えば、全体の80%、学生の44%、教員の37%を私立学校が占めている。

新興国では、国の予算ですべての教育ニーズに対応できないため、私立学校が出現する。モンゴルでは、私立学校と国立学校の教育の質の差が拡大するにつれ、社会における格差が急激に広がり始めた。私立学校の授業料は高額なため、教員に残業代が支給される。生徒の教育環境も快適である。私立学校の授業料はもともと高いが、年々授業料が引き上げられている。これに保護者は憤りを感じている。

2017年に世界経済フォーラムが出した「グローバル・ヒューマン・キャピタル指数2017」の報告書では、モンゴルは能力11位、発展力49位、開発力59位となっていた。モンゴルでは教員、その中でも特に初等教育の教員たちの力で子どもたちの能力を引き出している。

モンゴル社会は昔から教員を尊敬してきた。教員の努力でモンゴルは将来の国民を育成し、子どもたちに知識や能力を身に付けさせ、国を発展させ、生活環境を改善してきた。しかしこれからは、加速する科学技術の変化に適応でき、思いやりや知識のある子どもを育てるために、モンゴルは教育システムの改善と教員育成を重視しなければならない。

教育改革

まず、モンゴル政府は教育分野への予算額を増やし、国立学校の物的リソースを充実させる必要がある。さらに教員の基本給を引き上げるべきだ。特に初等教育の教員、就学前教育の教員の給与を引き上げなくてはならない。

モンゴル政府は地方開発政策を復活させ、地方行政機関に財政運営権を与え、地方における教員養成学校の設立を促進し、教育システムを再構築していかなければならない。これが都市への人口集中の減少に繋がる。

教育は社会における不公平を無くし、バランスを維持する手段である。そのためには全国で統一されたカリキュラムの下で教育を実施する必要があり、その環境を整備しなければならない。私立学校への国の予算配分を凍結させ、その分を国立学校に充てるべきである。また、国立学校における3部制を早急に廃止し、近い将来には2部制も廃止する政策を実施する必要がある。さらに、小・中・高等学校に対して投資を行うなど、教育活動への支援を実施した企業の税金を控除することも可能だろう。

新たな変化に適応した教育政策を充実させることが重要だ。特に教員の養成、そして教員の持続可能な開発を科学的な根拠に基づいて改善しなければならない。こういった取り組みを担当省庁付属の教育研究所が実施していくべきである。

教員は生徒一人一人を彼らの知識や希望などを把握した上で指導し、支援できる機会と環境を整備する必要がある。そして、全ての生徒が学校で給食を食べるように、知識を吸収し可能性を伸ばすことができる環境整備が望まれる。さらに学校は生徒に対して保健サービスや心理相談、個別指導などができる環境を整えなければならない。教員や生徒にとって学校の施設や学習環境は快適な場所であるべきだ。それは教員の休憩スペース、授業の準備などをする部屋を確保するなどで実現できるだろう。

子どもが子どもでいられることが大切で、強制的に長時間学習をさせないようにしなければならない。そのために1日の授業数を減らし、学習時間においては午前9時前、午後3時以降は授業を行わないようにすることである。担任教師が度々変わるのではなく、1人の教員が長期に担当し、子どもの相談相手となり、子どもに対して成績や国家試験などで圧力をかけないことである。宿題の所要時間を30分以内にすれば、子どもの発達により効果的だという結果もある。

教員という職業を尊敬し、教員の名誉を高めるために道徳教育を実施しなければならない。教員の評価を生徒の成績で行わないこと。教員同士は競争するのではなく、互いに助け合い、協力して教育に取り組むようにすることが重要である。そうすることで教員になるための真の競争制度が成り立つと思う。

バルト海の北部に位置するフィンランドはこれらのことを実施した国である。この国では、教員の採用率は10人に1人という人気職業となっている。フィンランドの子どもたちは高い学力を持っており、国際ランキングでもトップレベルを維持している。フィンランドの教育は世界で最も良いとされ、最も国民が幸福でいる国の1つと言われる。それだけではなく、環境の質も高く、世界で最も汚職が少ない国でもある。

フィンランドの人口はモンゴルより200万人多く、国土はモンゴルの5分の1であるが、1人当たりの国内総生産は5万ドルである。つまり、モンゴルより12倍も大きい。

50年前は農業を生業とした貧困国だったこの国は、今では最も現代的な先進国となった。その要因を彼らの教育システムに結び付けて見ることができる。

ダムバダルジャー・ジャルガルサイハン