今日、世界中の経営者がフランチャイズ・ビジネスに注目している。世界中で知られるブランドの商標を使用する権利を得て、そのブランドの商品やサービスを国内市場に導入するようになっている。フランチャイズ・ビジネスの利点として、新しいビジネスをゼロから始めるよりリスクや投資を少なくできるという点が挙げられる。リスクが低ければ、そのビジネスは安定して成長し、経済においてさらなる価値と成長をもたらす。これはまた、融資を受けることなく、また追加投資を増やさずにビジネスを拡大させるチャンスと言えるだろう。

フランチャイズ契約を提供する側であるフランチャイザーは、フランチャイズ契約を受ける側となるフランチャイジーに対して、ビジネスを継続して展開できる機会を提供する他に、必要な投資も行う。このように、フランチャイズは他者の資金で自分のビジネスを成長させることができる。フランチャイジーにとって黄金のチャンスをもたらす。

顧客が世界中どこにいようと、自分が知っている、慣れ親しんだ商品が販売され、世界基準のサービスを受ける機会をフランチャイズ・ビジネスがもたらしている。フランチャイザーは市場を拡大させるときに直面するリスクを低く抑え、ブランドのノウハウや規格が守られることを監視し、また改善することを義務としている。一方、フランチャイジーは既に知られているブランドの暖簾を守るだけではなく、知識や経験、実績に基づきリスクを軽減させ、営業活動を行うこととなる。 フランチャイズ・ビジネスは、フランチャイザー、フランチャイジー両者のウィン-ウィンの協力関係によって成り立つと言える。フランチャイズ・ビジネスが成功し、成果を上げてこそ、両者がそれぞれ恩恵を受けることができる。

世界のフランチャイズ

今日のグローバル時代に、フランチャイズ・ビジネスは多くの国で経済成長のための大きな原動力の一つとなっている。世界最大の経済大国であるアメリカでは、2016年にはフランチャイズ・ビジネスは民間企業の雇用全体の10%に当たる1,600万人の雇用を創出している。また国内総生産の7.4%に当たる1兆2千億ドルがフランチャイズ・ビジネスによって作られている。

人口でモンゴルに近いニュージーランド(470万人)は、国民一人当たりのフランチャイズの数で世界上位にある。ニュージーランドでは、2017年の時点で631業種37,000のフランチャイズ・ビジネスがあり、そこに12万4千人が働いている。フランチャイズ・ビジネスの貿易取引高は、5年間で150億ドルから276億ドルに増加し、国内総生産の11%を占めるまでになった。 基本的なフランチャイズ・モデルは、世界の市場のどこかで試され、そこで成功が証明された方法をスタンダードとして他の国にそのまま導入することである。フランチャイズの語源は、中世の時代に王族や貴族が税金の徴収や道路建設などの仕事を個人もしくは団体にアウトソーシングし、その仕事を行うために与えていた権利をフランスでは「Franche」と呼ばれていたことに由来する。

モンゴルの民業において

近年、モンゴルでも経済成長にともない海外のブランド名や商標を使用した商品やサービスの販売が増えてきている。モンゴル人は新しいものを受ける入れることに対して開放的であり、またそれに慣れ親しむことが比較的に早い。モンゴルの人口の3分の2を35歳以下の若者が占めている。最近では、そういった若年層が柔軟に受け入れられる世界的なフランチャイズが数多くモンゴルに入ってきている。例えば、世界的に有名なファーストフードチェーンのケンタッキー・フライド・チキン(KFC)ブランドが挙げられる。KFCがモンゴルに入ってきたことを機に、モンゴル人はフランチャイズ・ビジネスの理解をより深めるようになった。

幾つかのフランチャイズ・ビジネスは、若い世代のニーズや需要に応じ、彼らの生活スタイルに影響を与え、モンゴル市場への進出に成功を収めている。例えば、韓国のコンビニ・チェーンのCUは、ウランバートル市内に1年間で55店舗を新たに展開し、小売やサービスの新しい形を提供している。さらにCUは、小規模スーパーマーケットのオーナーと協力し、独自のフランチャイズ・プログラムを提案している。今後3年間で店舗数を300店に増やし、3,000人の雇用を創出する予定だ。CUはモンゴルで現代的なサービスの提供を目指さしている。

またモンゴルの中小企業経営者たちは、自社で製造する商品をCUモンゴルの店舗だけでなく、他の諸外国にあるCUのチェーン店でも販売する機会を得ようとしている。これはモンゴルの製造業がビジネスを拡大させ、国際市場に進出し、商品を輸出するチャンスにもなっている。

世界に知られるブランドと業務提携している企業にとって、フランチャイズ・ビジネスは事業活動が分かり易くターゲットとなる市場が明らかなため、容易な資金調達や迅速な市場獲得ができることを他国の事例が示している。フランチャイザーから事業を展開する上でアドバイスを受け、協力して共に成長している。こういったチャンスがフランチャイジーにも開かれている。 フランチャイズ・ビジネスは、モンゴルの中小企業経営者にとってよりリスクを少なくし、ビジネスの安定した成長機会をもたらす。モンゴル経済にとって現実的な成長を促すものとなるだろう。

非営利事業分野において

最近、「ソーシャル・フランチャイズ(Social franchising)」という言葉が話題となっている。これは国際援助やボランティア活動をフランチャイズ形式で導入することである。その1つの例として、2008年に設立されたインドの「世界保健パートナーズ(World Health Partners)」という非営利団体が挙げられる。世界保健パートナーズは、インドでソーシャル・フランチャイズの導入に初めて成功した。その活動内容は、貧困家庭に医療支援を行うことだ。ソーシャル・フランチャイズの主な目的は利益ではなく、社会における特定の問題の解決を目指し、より多くの人を対象にすること、また活動を地方にまで届けることである。

これは、ウランバートルで活動している非営利団体が、その活動を地方に届ける機会をソーシャル・フランチャイズによって実現できる可能性があることを示している。しかしそのためには、フランチャイズのリスク対策や実施するための法整備が必要である。世界各国ではフランチャイズ・ビジネスに関わる人々を保護するために、自由競争・貿易・投資・ビジネスなどフランチャイズに関する法律が整備されている。モンゴルにはこういったビジネスには民事法に反映されているが、フランチャイズの関係、特にソーシャル・フランチャイズを対象とした法整備はまだまだ不十分である。

フランチャイズ・ビジネスは、投資家の目から見ればリスクが少ない。そのため平均的だが持続的な成長をもたらすビジネスと言える。また、フランチャイズ・ビジネスの成長につれて、モンゴルの小売業界の競争が激しくなり、サービスの質の向上につながる。これは最終的に消費者にとってより高い満足感と利便性をもたらすことになるだろう。 フランチャイズ・ビジネスという新しい選択肢と、そのビジネス・チャンスを十分に活用できる条件が整備されることによって、モンゴルの自由市場経済の発展は次の段階に進むだろう。

ダムバダルジャー・ジャルガルサイハン