U.フレルスフ首相はモンゴル経済フォーラムに出席し、農牧業、観光業など多様な産業の柱からなる経済を構築し、鉱業以外の分野への投資を促進する。特に物流、交通インフラを整備し、フシギーン・フンディ新国際空港の開港へ向けた包括的プロジェクトを実施すると公表した。 また、J.バトエルデネ道路・輸送開発大臣は先週開かれた航空業界管理職会議に出席し、観光の促進と新国際空港のキャパシティーをフルに活用するために航空改革を行うと述べた。

前内閣が遣り残したことを今の内閣が一刻も早く行うしか他に選択肢はない。これまで鉱業以外の発展についてろくに話もしてこなかったので、航空業界の発展も遅れた。何度も新国際空港の開港が延期され、国営航空会社の負債増加などが航空市場の開放を急かすこととなった。

失敗を克服する機会

2013年の国家大会議で採択され、空の自由化を政府主導で段階的に実施する「2020年までの航空政策」ではめぼしい成果を得られなかった。国営企業と民間企業では健全な競争はできないことを、苦しい経営が続く民間航空会社の状況と倒産したエズニス航空1が証明している。ウランバートル・ソウル線、ウランバートル・北京線に第2の航空会社を参入させず独占化し、それによる高額な運賃などに利用者は不満をもっている。

MIATモンゴル航空2以外の航空会社をソウル線、北京線以外の国際線や国内線で運行させようとしたことが航空市場を縮小させてしまった。国際航空の「一路線一社」という政策が観光分野の発展に大きな壁となった。

現内閣が現状を打破するために航空政策を今春の国家大会議で改正し、2020年までにソウルと北京への国際路線を自由化する。外国の航空会社との公平な競争条件、遠隔地への運航サービスの提供、国内路線を拡張すると公表している。

経済規模、各航空会社の機材、運航、路線の数には大きな差があるが、トルコとモンゴルの航空政策の違いからどの様な結果が生じるかを見ることができる。

トルコの航空開放と新空港

トルコは2008年に航空市場を開放した。どの航空会社もトルコ線を運航できる。トルコの延べ空港利用者数は2007年に5400万人だったが、2017年には1億3800万人となり、2.4倍に増加している。また2017年のトルコへの観光客数は3000万人を越えた。2023年までに年間5000万人を目標としている。トルコは次の10年間の利用者数増加に対応するため世界最大規模の新空港を建設中である。新空港と都市中心部を地下鉄や舗装道路で繋ぐ計画だ。ターキッシュ エアラインズは、2023年には保有機材を500機、年間利用者数1億2000万人規模の世界の航空会社トップ10入りを目指している。同社は現在、世界14位である。

黒海のヨーロッパ側に建設中の新空港は、年間利用者数2億人規模(アタテュルク国際空港の7倍)の4つの旅客ターミナル、6本の滑走路、総面積7650万平方メートルとなる巨大な空港だ。新空港の開港予定日は今年の10月29日で、これはトルコ建国記念日である。開港に向けて3万5000人が3交代で工事に取り組んでいる。500機を収容できるキャパシティーをもち、145本のボーディングブリッジ、ターミナルの総面積は150万平方メートルで、単一のターミナルとしては世界最大規模の空港となる。

トルコの新空港建設の入札では、国内建設大手4社から成る共同事業グループが落札した。建設にはBOT方式3(20年間操業後に引き渡す条件で最初に2000億ドル、次に1000億ドルの投資をする)で建設している。2019年から政府に毎年10億ドルの料金を支払うことになっている。

モンゴルの航空非開放と新空港

モンゴルの航空市場の開放については10年近く話してきたが、何もしなかった。道路・運輸開発省による2013年と2017年の比較調査では、旅客数は110万人から120万人に微増したが、発着回数は16,500から13,500、輸送貨物量は6,500トンから5,000トンにそれぞれ減少している。しかし、モンゴル上空を通過する航空機は同期間で86,000便から110,000便に増加している。これは他国の航空便がどこへ向かっているのか、モンゴルの航空便はどこへ行っているのかを明らかに示している。2017年、モンゴルの国際線の利用者数は130万人、国内線の利用者数は25万人だった。これを2024年までに国際線の利用者数190万人、国内線利用者数を40万人にする計画だ。この数字を達成するため観光分野の開発を促進し、新空港の需要が高まってきた。

首都ウランバートルから52㎞、トゥブ県セルゲレン郡フシギーン・フンディに位置する新空港の建設は完了している。新空港はキャパシティーにおいてチンギス・ハーン空港より2倍大きい。新空港は日本政府のODA(政府開発援助)による40年の円借款(5億4000万ドル)で建設された。そしてウランバートル市内から新空港までの道路は中国政府の借款で建設されている。道路建設完了の時期は毎年延期を繰り返し、今年11月に完了すると言う。

新空港の運営を日本側と協力してコンセッション方式で実施する。これにより30年間空港を運営し、その収益で日本政府からの円借款を返済する。日本側が運営を担うことによって空港外の収入の増加、ノウハウの導入、地域を結ぶ大規模な空港となる事業活動の拡大が期待される。

イスタンブールはアジアとヨーロッパの境界である。ウランバートルは、アジアと北アメリカを、北極を挟んで繋ぐ道の中心にある。モンゴルのように広大な国土を有し海岸線をもたない国にとって、空路が世界のビジネスと繋がる唯一の道である。にもかかわらず私たちはそれを利用せず、何もせず居座っている。

モンゴルが航空市場を開放すれば、就航する航空会社の増加に伴い旅客数も増え、競争が加速し航空券も安くなり、観光分野に革命が起こる。この競争が始まれば、運営費の3分1を占める燃料の独占の問題が解消される。

2011年に実施されたモンゴル航空ネットワークの自由化についての調査では、「自由化を実施して2〜3年後に国際路線が112%増加する。モンゴルと他国との関係が緊密化し、ヨーロッパ・北アメリカなど大きな市場に路線が拡大する。航空券の価格は平均42%下がり、利用者は総額1億2100万ドルを節約できる。国際貨物輸送量は62%、国内旅客数は43〜87%まで増加できる」と書かれている。

また「国際線の利用者数は毎年117,000人増加し、9400万ドルがモンゴルに落ちる。民間航空と観光以外の分野に21,540人の雇用が生み出され、全体の雇用率は2.1%増加する。毎年インバウンドにより約1億ドルがモンゴルで消費されれば、国内総生産を2.5%引き上げることができる」とも書かれている。モンゴルは航空市場の開放を一刻も早くする必要があるということをこの調査が明らかにしている。

ダムバダルジャー・ジャルガルシハン


※1エズニス航空:モンゴル国内線最大規模の航空会社だったが2014年5月に運行停止した。全日空とパートナーシップを締結していた。

※2 MIATモンゴル航空:モンゴルのナショナル・フラッグ・キャリア。元々モンゴル国営の航空会社だったが1993年に民営化している。しかし、現在も100%国が出資している非上場の国有会社である。

※3 BOT方式:Build, Operation and Transfer system、施設の建設だけでなく、一定期間の操業も当該企業が行うことによって、操業期間の収益で投下した資本を回収し、その後国に施設を引き渡す方式。