携帯電話は私たちの生活に革命的な変化をもたらした。しかし、私たちは携帯電話を毎日使用しているにも関わらず、この変化に気づいていない。今では、携帯電話は私たちの日常生活の一部となっている。そのため、今日、携帯電話がない生活を誰も想像できなくなっているほどだ。

では、この革命の原動力は何か。それは、情報通信の競争市場の存在であり、止まることなく進歩して来たデータ通信技術にある。モンゴル初の携帯電話会社であるMobicomは、1996年に設立され、事業を展開してきた。その後、SkytelG-MobileUnitelなどの携帯電話会社が設立され、情報通信市場には競争が生まれ、消費者にサービスを提供してきた。

今、世界中で次世代通信技術となる「5G」の波が到来している。5Gの技術を、モンゴルはいつから利用できるようになるのか、私たちはこの新しい技術を活かすための準備ができているのか、5Gを4Gよりも効率的、かつ積極的に利用できる方法は何なのか?

情報通信技術の世代

情報通信技術は急速に進歩し、人々の生活に革命的ともいえる変化をもたらしている。情報通信技術の現在までのこの急激な変化は、1G、2G、3G、4Gと世代に分けて呼ばれている。情報通信技術のこれらの世代は、通信速度、技術、機能においてそれぞれ異なるものである。

1Gは、アナログ無線技術のモバイルネットワーク第1世代のことであり、音声のみの通信だった。2Gは、データ通信に移行し、音声の他にテキスト(文字)の通信が可能になった。3Gはテキストに加え画像(ビデオ)の通信が、4Gはインターネット技術全般の利用を可能にした。これら各世代が生まれる度に、新たな生産性が生まれた。

今、世界では一部の国が実用し始め、将来的にモンゴルにも導入される次世代通信技術5Gは、私たちが想像もしなかったほど大きな可能性をもたらすだろう。5Gでは、すべてのモノがインターネットに接続され、機器と機器が互いにアクセスし、データを提供し、機能する(Internet of Things)。ここには人が介在することはない。自動運転、ロボットによる手術などが人工知能(AI)によって、人間の仕事を代替する新時代が到来する。

5Gは4Gに比べて通信速度の高速化、同時接続数の増加、通信遅延の減少といったメリットがある。4Gの周波数は最高2.4GHz(GHzとは1秒間に繰り返される周波数を表す単位を言う)である。しかし、5Gは3.5〜24GHzに達する。例えば、4Gでは、あなたが車である距離を走るのに15秒かかっていたものが、5Gでは、同じ距離を1ミリ秒で走り切ることができるようなものである。しかし、24GHzという高周波数をもつ5Gの帯域は100m以上の距離を通信できないため、多数のルーターを設置する必要がある。

韓国では2019年4月、初の5Gネットワークが商用利用できるようになった。次いでアメリカ、中国、日本も、この5G環境の実用化を着実に進めている。

モンゴルでの5Gの可能性

モンゴルのような内陸国では、この新たな5G時代の到来により、世界市場へ家に居ながらアクセスすることが可能になるということである。5Gを利用することによって、消費者は携帯電話でデータを今より30倍も速い速度で受け取ることができ、満足度も高くなる。

また、すべての機器がネットワークに接続されることによって、大量のデータの送受信、保存、作成が可能になる。複数の機器がネットワークに接続されれば、様々な業種で生産性が上がり、自動化が進むだろう。

DBSグループの調査によれば、2018年に世界中でインターネットに接続された機器は110億台になる。5Gの普及によって、この数字は2030年までに1,250億台になると予測されている。また5Gによる自動化は、各業界で生産性を高め、効率を9%増やすといわれている。

モンゴルに5G技術を普及させるためには、通信ルーターの数を既存の通信ルーターより10倍も多く設置しなければならない。そのため、4Gの設備に比べて約10倍の投資が必要となる。モンゴルには登記されている企業が約80,000社あり、そのうち60,000社が中小企業である。中小企業には労働人口の43%が勤めているが、輸出額では僅か2.3%を占めているにすぎない。そのため、5G技術は大企業で利用され、中小企業では普及が遅れる可能性が高い。

他方、モンゴル人は偽の情報から自分たちを守ることができていない。膨大なデータの海に飛び込む前に、私たちは個人および国家安全保障に関する情報をどのように守るのか、その解決策を探り、法環境を整備しなくてはならない。

投資と時間

モンゴルで事業を行う携帯電話会社4社は、それぞれ独自の通信インフラを構築してきた。これは、自分専用の道路を作って自分の車だけを走らせることと同じである。だから、消費者の携帯電話料金は安くならない。モンゴルでUnitelが初めて4G技術を導入し、2016年以降1,200億トゥグルグの設備投資を単独で行ってきた。そのため、投資した資金の回収期間が必要である。Mobicomも同様である。

こういったことから、5G技術のインフラをどうすれば早く、そして消費者に比較的安価で提供できるかを、社会全体で話し合う必要があるだろう。今までと同じ形でインフラを構築する場合、そこには莫大な投資が必要となり、それに見合った効果を出すことは難しい。費用だけが膨らみ、この技術革新をモンゴルで普及させるには、より時間がかかることになってしまう。

携帯電話事業者が協力し1つのインフラを構築し、共同で利用する上で何が障害となるのかを話し合う時が来たと思う。モンゴルでは今まで、各世代で情報通信技術の導入が他国より遅れていた。今回も再び同じことが繰り返されるのだろうか?

ダムバダルジャー・ジャルガルサイハン