私たちが海外へ行く時は、如何なる国であれそこで出会った人々が自国について話すことを注意深く聞くものである。それはまるでFMラジオを聞いているかのように。東京で開催された第6回インベストモンゴリア東京フォーラムに参加し、知り得たことをここにまとめた。

モンゴルのような外貨準備高が少ない国は他の新興国と競争し、外国投資や技術を自国に誘致する他に方法はない。モンゴルの政府や民間企業は、外国から投資家を誘致するために過去20年間、世界の大都市に出向いてはモンゴルへの投資メリット、ビジネスチャンス、住環境、法的環境などを説明してきた。

日本のフロンティアジャパン社が毎年開催しているインベストモンゴリア東京フォーラムは2018年11月19日に東京・市ヶ谷のJICAグローバルプラザで開催された。フォーラムには在日本モンゴル国大使館、両国の研究者、記者の他にモンゴルで活動する日本企業、モンゴルで事業展開を予定している日本の企業、日本のビジネスパートナーを探しているモンゴル企業などから約250人が参加した。

ちょうどこの日、モンゴルではフレルスフ内閣を解散させるか、もしくは国会を解散させるかという政治的な駆け引きが繰り広げられていた。そのため、同フォーラムに招聘されていたD.スミヤバザル鉱業・重工業大臣をはじめ、政府代表者の来場はかなわなかった。彼らの代理として来た少数の政府関係者、在日本モンゴル国大使館の職員がフォーラムの開会時に姿を見せ、一部が挨拶しただけで会場を後にした。会議は終日続いたが、彼らの誰もが戻って来ることはなかった。

ここにインベストモンゴリア東京フォーラムで取り上げられていた問題の一部をまとめた。

石炭の輸出について

モンゴルの主要産業は鉱業である。しかし、国内最大の石炭埋蔵量を誇る鉱山から中国国境までのインフラ、特に鉄道が作られていない。輸送は大型トラックとなるが、大型トラックで輸送する場合のコストは石炭1トン当たり28ドルであり、鉄道で運ぶ場合は6ドルである。そのため、モンゴルは石炭1トン当たり22ドルの損失を出している。3000万トンの石炭を輸出した場合は6億6千万ドルの損失を出す。1年間の損失額で270kmの鉄道を建設できる額である。

国有企業であるエルデネス・タバントルゴイ社は石炭を鉱山で売買し引き渡している。輸送会社は運搬に劣悪な車を使うから交通事故が多発し多くの人命が失われているというニュースが後を絶たない。国有企業には社会的責任というものがない。

しかし、民間企業であるエナジーリソース社は石炭を精鉱し、ガンツ・モド国境検問所で1 トン当たり135ドルで売買している。さらに中国国内の輸送環境も整備し、中国東部に運搬し1トン当たり175ドルで取引している。しかし、エルデネス・タバントルゴイ社は炭鉱で石炭1トンを60〜70ドルで販売し、国境検問所では約100ドルで取引している。中国企業は国境検問所で買った石炭を国内で精鉱し、150ドルで販売している。つまり1トン当たり50ドル、石炭3000万トンを輸出して15億ドルの利益を失っている。これは年間1500万トンの石炭の精鉱が可能な工場を4〜5箇所建設できる金額である。

エルデネス・タバントルゴイ社の株式の国際証券取引所での上場に関して、政府によって役員が任命される国有企業の株式を保有したいと思う投資家があまりいないのが現状だ。

農牧業の輸出について

モンゴルは製品の生産やオーガニック製品の証明と生産性の向上にブロックチェーン、IoTなどの技術的なソリューションを活用し、農牧製品の品質、出荷時の包装などを重視する必要がある。

輸送ロジスティクについて

日本から出荷される貨物は韓国の釜山や中国の港湾都市まで船で輸送し、そこから先は貨物自動車、もしくは鉄道でウランバートルまで運ばれる。そのため輸送コストが高く、時間もかかる。最短ルートとなる中国の天津を経由する場合は、コンテナ1台に同一種の荷物を運ぶという規定があるため、国際運送会社のDHL社は天津以外のルートを選んでいる。

中国の政府高官がモンゴルを公式訪問した際、「ウランバートル〜天津間の輸送に関しては国境などでの手続きをスムーズにし、鉄道を使ったトランジット輸送を許可する」と言っていたが、その話はどうなったのだろうか?

政府政策について

モンゴル政府とその政策には持続性がない。人民党、民主党どちらも、与党となった政府は数多くのプロジェクトを発表する。しかし、結果的にどのプロジェクトも実施されない。実施を延期する。実施されたとしても価格設定などで全て赤字となる。モンゴル政府は国内の鉱山に沿って発電所を建設すると長年話してきたが、未だに1つも建てられていない。政府は電力の価格をあまりにも安く設定し、政府が補助金を出している。電力料金が安いから発電所は技術的改善や配・送電などのインフラ修繕のための資金を蓄えることができない。

電力料金は単に安くするのではなく、適切に設定されるべきだ。全ての人に補助金を交付する必要はない。古くなった発電所が未だに稼働しているのは、モンゴルのエンジニアたちが優秀だからだ。モンゴルには新しい技術と新しい発電所の建設が必要不可欠である。

証券取引市場について

世界最大規模の銀行や企業はモンゴルに投資を行う際、現地で協力するパートナー企業のビジネスの効率性の他に社会的責任を見る。しかし、モンゴル企業は自然環境や人権に重きを置かず、社会にどのような貢献や支援を行っているかが明確ではない。株式会社であるにも関わらず、事業活動報告書や株主名簿などが不透明な状態である。モンゴルの証券取引所は民主化して28年経った今でも政治的な影響を受けている。

労働人材について

日本は海外から労働人材を受け入れる新しい法律を2019年4月1日から施行する。もし施行されれば、モンゴルから日本に行く人が増加するだろう。その理由は、モンゴル人の殆どが大学を卒業しており、日本語の習得が早く、良く働く人材だからだ。現在、日本にいる外国人の中で最も多いのは中国人であるが、人口比率で言えばモンゴル人の方が多い。また、不法滞在者数でモンゴルは上位となっており、バングラデシュと順位を競い合っている。

新国際空港について

2年前に開港するはずだった新国際空港はどうなったのか?日本側はフシギーンフンディ新国際空港の建設を期限内に完成させた。しかし、モンゴル側が空港までの道路建設を終えていない。今日では、新国際空港のオペレーションを担う会社を未だに決められず先送りにしている。2014年以降A.ガンスフ、M.ゾリグト、D.ガンバト、J.バト・エルデネ、Ya.ソドバートルなど、モンゴル道路輸送・開発省の歴代の大臣5人が新空港のオペレーションを日本の企業が受け持つことで合意していた。

「現在のチンギスハーン国際空港にあるサービス、免税店は政府の大臣や高官の所有物である。そのため空港移転の決定を急いでいない。彼らは新しい空港でも利権を確保するため、国民である私たちの利益を踏みにじっている。(D.ジャルガルサイハン)」

フシギーンフンディ新国際空港の“開港”はいつになるだろうか?

ダムバダルジャー・ジャルガルサイハン