バヤルマグナイ・ガンティグ氏は、モンゴル国民工科大学を経営管理学専攻で卒業しました。2011年〜2017年はオユトルゴイ社のシニア・ロジスティクス・スペシャリスト、2017年〜2018年はデジタル・エクスチェンジ・モンゴルLLC、Trade.mn社長、2018年〜2021年はBitmonex社長を務めています。

ジャルガルサイハン: まずブロックチェーンの話から始めたいと思います。ブロックチェーンは「次世代のインターネット」だと言われています。本当にそうなのですか。そうであれば、その理由は何ですか?

B.ガンティグ: 時として考えすぎることで間違った理解をする場合があります。ですから、とても簡単に説明したいと思います。私たちは技術者ではありません。消費者である場合がほとんどです。消費する側としての理解で十分です。その上で、ブロックチェーン技術とは、簡単にいうとデジタル登録システムです。もう少し説明すると、登録情報を世界中に拡散した状態で、一つではなく、多数のサーバーで行うというシステムです。「次世代のインターネット」というのは少し不正確です。インターネットは、様々なことを可能にする基盤となる技術です。インターネットを使った登録制度を、ブロックチェーンで構築するということが1990年代から言われてきました。それを実現したのがビットコインでした。

ジャルガルサイハン: その違いを教えてください。ビットコインがブロックチェーン技術を生んだのか。ブロックチェーンが発明されてビットコインが生まれたのか。それとも同時に始まったのですか?

B.ガンティグ: ブロックチェーンのアイデアは以前からありました。情報の登録は、集中型ではなく分散型でもできるのだというアイデアです。ただ実現はされていませんでした。ビットコインとは、ブロックチェーン技術を使って開発された新しい仮想通貨です。ビットコインとブロックチェーンは同じものだという人もいますが、そうではありません。ビットコインを動かしているエンジンがブロックチェーンだということです。

ジャルガルサイハン: あなたはブロックチェーンとは登録システムだと理解していいと言いました。その登録も特定の人や機関に集中されているものではなく、世界中の人がインターネットを通じてアクセスでき、また不変(immutable)であります。こういう特徴を持つ登録システムを合わせてブロックチェーンだというわけです。ブロックとチェーンはそれぞれどういう意味合いを持っていますか?

B.ガンティグ: 登録というのはデータを保存するということです。大量のデータを一つの場所に入れ続けると容量が不足し、正常に使えなくなります。ですから、データは多くの小さな入れ物に分けていく必要が出てきます。そうすると、一つの小さな入れ物に入ったデータ容量だと、通常のメンテナンスができるようになります。コンピューターではファイルのサイズが1GB、1MBとかありますよね。それと同じです。ビットコインは1つのブロックに1MBのデータを保存できます。1MBに達したらブロックが封じられ、次のブロックが開けられます。その途中でどういうプロセスがあるかというと、前のブロックの最後のデータが次のブロックの最初のデータとなって入れられます。そこでチェーンが作られていきます。ブロックチェーンに関していうと、今申し上げたデザインは2008年にアイデアが提案され、2009年からビットコインで使われ始めました。ただしこれで終わりだということではありません。こういうものもできるのだということです。インターネットを黎明期から振り返ってみると、今私たちが使っているHTTPアドレスが基本とされていますが、開発当初は多くの原案がありました。テストされて、最もシンプルで、最も使いやすいものが残ったわけです。ブロックチェーンについても同じで、改善されていっています。より強く、より速くなるように今も開発中です。

ジャルガルサイハン: 分散型と言いました。1つのブロックに1MBのデータを入れるのに全員が平等に参加可能です。そのため、相互に競争をしますね。

B.ガンティグ: 分散型の理由は何かというと、例えばデータの登録を2人だけでするとしましょう。そうすると、他の参加者がその2人を信用できるのかという問題が生じます。参加者が多ければ多いほど信用度は増します。10人の参加者がいるとしたら10人とも当該データが正確であることを証明します。それを受けて、ブロックチェーンにデータを繋ぐことができます。

ジャルガルサイハン: プルーフですね。

B.ガンティグ: はい、プルーフ・オブ・ワークやプルーフ・オブ・ステークなど色々あります。

ジャルガルサイハン: ビットコインの採掘とありますが、どういうブロックを誰が終了したかというのをどうやって分かりますか?

B.ガンティグ: 暗号法(cryptography)で、アルゴリズムを組みます。採掘とはプルーフ・オブ・ワークのことを言います。ここでいうワークとは、数学のアルゴリズムを組むことです。これはビットコインのブロックチェーンにて行われていることです。その他の分野にも普及し始めました。

ジャルガルサイハン: ブロックチェーンという概念は数学のアルゴリズムを組むことですよね。最初に正確にアルゴリズムを組んだ人がそれを証明します。不変ということは、一つのブロックを変えると、それに伴って無数のものが変化しなければならないため、これを変えることは技術上不可能だということですね。

B.ガンティグ: その通りです。

ジャルガルサイハン: もう少し実用的な話をしたいと思います。私がビットコインを所持していたとしましょう。基本はどんなコインでも良いのですが、例えば、イーサリアムというプラットフォームにはイーサというコインがあります。そこでブロックチェーンを使用して、私が持っているビットコインをあなたに送金しようとします。この情報は公開されていて、誰もが見ることができます。送金されたビットコインへのアクセスキーは2つありますよね。

B.ガンティグ: アクセスキーが2つあることの意味ですが、ハーン銀行のオンラインアプリを例に説明すると、1つ目のキーが口座番号、2つ目のキーが暗証番号ということになります。

ジャルガルサイハン: あなたたちが翻訳した『ビットコイン&ブロックチェーン』という著書にありましたが、送金したという領収証を見ると、数字だけが並べられています。1バイトには234個の整数が含まれています。ですから、私が送金した際の暗号がA4サイズ1ページくらいになります。人がアナログでそれを考えてやるということは不可能です。ですから、元帳を使っていますね。こういう話があります。1つのブロックは10分くらいで生成されると言われています。この10分は私たちの関与によって短縮されたりしますか、それとも誰が関わっていても10分なのですか?

B.ガンティグ: ブロックチェーンごとに異なります。ビットコインの場合、合計2100万個のブロックがあり、2140年まで生成されるとされていますが、この計算はその10分という単位で計算されたものです。10分毎に新しいブロックが生成され、前のブロックが閉じられていきます。1ブロックが1GBの容量で、ここに1000くらいの取引情報が入ります。ブロックを閉じて、開けることをマイニングしている人たちが決めています。ブロックが閉じられる際に新しいコインであるミントを造ります。最初は10分に50個が作られていましたが、4年毎に半々に分けられ、今は6.75くらいとなっています。

ジャルガルサイハン: それはつまりマイニングがどんどん難しくなっているということですか?

B.ガンティグ: 量が少なくなっているということです。マイニングの難易度はどれくらいのマイナーが同時にプルーフ・オブ・ワークをしているかによります。

ジャルガルサイハン: マイナーが多くなれば難しくなるわけですか?

B.ガンティグ: そうです。2人だけでマイニングをしていた時は2台のパソコンでやっていました。それが100人ともなれば通常のパソコンでは対応できなくなります。より強力なプロセッサが必要になります。1千、1万、100万になっていくと、マイニング専用の機械でやります。あなたも見たことあるだろうと思いますが。

ジャルガルサイハン: 見ただけでなく、多くのモンゴル人がその機械を持ってきて、大量の電気を使ってビットコインのマイニングをしようとしています。2年前に比べて、マイニングに必要な時間や難度は増加しました。いったいマイニングはモンゴル人にとって有益なのでしょうか。

B.ガンティグ: 技術の発展があまりにも速く、今話に出た機械はもう古くなってきています。というのは、スマホにコインを入れて、それを使って買い物をするのは実用的ではないのです。なぜなら、そのためのプロセスがあまりにも複雑で、電気を使いすぎるマイニングであるからです。一方で、仮想通貨市場の価値の決定要因ともなりました。仮想通貨については30分では話し切れません。ブロックチェーンについて知らない人も多いです。登録システムだと言ったら、そんな単純なものだったのかと言います。しかし、登録システムとは全ての社会関係の基礎を成す重要なツールです。銀行や国家登録局など、人は生まれてから死ぬまで登録され続けます。国際取引も登録に基づいて行われるため、ブロックチェーン技術をそこで利用できるのだということになったわけです。様々な分野で利用できますし、応用の試みが続いています。最も有名なのがビットコインなので、ブロックチェーンと言えば仮想通貨だと認識されているだけです。5年後、10年後には、この技術は日常生活でも利用されていくことでしょう。インターネットがどのように運営されているかを聞いても答えられる人はそれほど多くいません。しかし、インターネットは多くの人々の日常生活の一部となりました。日常で使っていても、その背後にどういうプロセスがあるかなど知りません。

ジャルガルサイハン: 知っていなければならないわけでもないですね。

B.ガンティグ: そうです。技術者や金融関係でもなく、消費者ですから。

ジャルガルサイハン: ブロックチェーンというのがインフラであるとしたら、様々な車がその上を走っています。ビットコインのようなコインは世界中に何千とあるということですね。

B.ガンティグ: 正確なデータはないだろうと思いますが、そうです。

ジャルガルサイハン: モンゴルではどういうコインがありますか?

B.ガンティグ: モンゴルでは、例えばアルドコインがあります。私たちが実施しようと考えているプロジェクトもありますが、まだ市場には出ていません。モンゴル人に一番広く知れ渡っているのはアルドコインです。

ジャルガルサイハン: アルドコインはボーナスポイントを付与していました。ポイントがアルドコインでありました。今は株式会社となって、1株200トゥグルグとなっています。アルドコインはブロックチェーンのコインですか?

B.ガンティグ: そうです。以前、アルドコインはブロックチェーンのコインか否かといった議論があったと思います。しかしれっきとしたブロックチェーンに基づいたコインです。アルドコインは実用的ではないなどという批判もありました。ポイントについての一般的な既存の認識があります。つまり、ボーナスポイントといったらノミンやE-mart等のスーパーマーケットのポイントを人々は想像しがちです。私が見る限りでは、アルドコインは消費者に大きな決定権を与えています。世界四大会計事務所の一つであるデロイト社が、ボーナスポイントをブロックチェーンで行う利点についてのレポートを発表しました。既存のボーナスポイントは、ポイントを発行する会社の中央サーバーに登録され、いくら発行するかは会社の裁量に委ねられています。アルドコインの特徴は、公開可能でかつ多くのポイントに交換できます。ノミンのボーナスポイントはノミンだけ、E-martのボーナスポイントはE-martだけで利用可能です。それに対してアルドコインは多くの場所で使えます。

ジャルガルサイハン: 例えばどこで、何に使えますか?

B.ガンティグ: 私が見た限りでは、例えばアルドショップを利用して商品を購入する場合、ポイント利用の規定に従って、その商品の50%までに使えます。他の暗号通貨に変換することも可能となっています。

ジャルガルサイハン: アルドショップでの買い物にポイントを利用するよりも、アルドコインの価値が上がるのを待って、コインを売った方が利益になるのではないですか?

B.ガンティグ: 消費者にそれを決める権利を与えています。人々はそれについて様々な意見を表明しています。暗号研究者であり、暗号通貨の分野で4、5年務めている者としては、良いアイデアだと思っています。その分野に詳しくない人は何とでも批判はできるでしょう。その分野を少し分かる者としては、アルドコインがこれから国際市場に出る可能性もあると考えています。

ジャルガルサイハン: アルドショップが似たような国際通販市場に参入することを言っていますか。それともアルドコインのことを指していますか。アルドコインはアメリカの仮想通貨取引所コインベースで取引されているようですね。

B.ガンティグ: そのプラットホームで株価を見られます。

ジャルガルサイハン: ドルで見られますか?

B.ガンティグ: 見られます。ビットコインが仮想通貨の標準となっているため、これと比較して見られるようになっているわけです。

ジャルガルサイハン: アルドコインは、イーサリアムプラットフォーム上にあるイーサの一つであり、コインベースという仮想通貨取引所が扱う情報にアクセスするとアルドコインの株価が分かるということですね。なぜなら、ブロックチェーンを使って作られたからだと。

B.ガンティグ: そうです。

ジャルガルサイハン: アルドコインは、当初1コインが1トゥグルグだったのが、今では200トゥグルグになりました。多額の投資をする人もいます。アルドコインは株として扱うべきなのですか。株だとしたら、大手企業の株を買ったが、たまに企業が倒産して株が紙くずと化します。あるいは逆に、企業がさらに成長する場合があります。

B.ガンティグ: 中央銀行、国際通貨基金(IMF)の立場はどうかというと、暗号通貨は株と違って、会社の占有物ではありません。消費目的のものです。コインの価格変動は全て公開市場での需要と供給によります。株の取引に関してはモンゴルの証券取引所が管理しています。暗号通貨に関して、今のところそのような管理組織はありません。ビットコインは昨日62,000だったのが、今日54,000となっています。これほど急激な変動は予想しにくいというところはあります。

ジャルガルサイハン: ビットコインは世界の富と同じように、ビットコインの保有者の1%以下が、ビットコインの半分以上を占有しています。コインが紙幣の役割を果たし始めました。ある国ではビットコイン用のATMが設置されました。

B.ガンティグ: 私は2017年末にDigital Exchange Mongolia (DAX)の社長を務めていた際、モンゴル初のビットコイン用のATMを設置しました。ビットコインをトゥグルグで買えるのです。そのATMはシャングリラ、それからITパーク内に置いてありました。広告用ではありましたが、仮想通貨が実際の生活に普及し始めていることを意味します。テスラ、マイクロストラテジー等の大企業がビットコインに投資しています。これはつまり、大企業がビットコインを信用しているということです。15億ドル、20億ドルの投資は、社長がある日思い付きで決めるような決定ではありません。調査に調査を重ね、戦略を練り、取締役会の承認を得てからの決断です。なぜ投資をするかというと、まず、ビットコインへの信頼、それから、ドルへの不信がその裏にあるからです。例えば、私たちは去年コロナウイルス感染拡大に伴い、どういう結果があったかを見てきました。ビットコインの主たる目的は、インフレは無くすべきであり、少数の人がボタンを押して紙幣を発行してはいけないということでもあります。

ジャルガルサイハン: 世界に新しい通貨が誕生したわけです。6000年前に塩や羊、ヤギを交換したり、大きな石で商売をしたりしていたのが、金や銀となって最後は紙になりました。では今日、初めて手に取ることはできないが、価値を交換できるようになろうとしています。人類の次の通貨への移行がスタートしました。これをどのように管理するかはこれからの課題となります。中央銀行の役割も変わってきました。今までは管理できていた通貨が今は身元不明のものとなってしまいました。国際化されたとも言えます。どの国の政府にも支配されません。これを管理するためにモンゴルでは、モンゴル金融規制委員会がサンドボックスという名称の規則を制定しました。つまり、人類の次の通貨への移行のプロセスがモンゴルで行われているという理解で良いですか?

B.ガンティグ: 通貨の改革は容易なものではありません。新しいものを採択するには、常に時間がかかるものでした。マルコポーロがモンゴルの紙幣をイタリアに持って行き、散々笑われ、紙幣を燃やされました。その300年後にヨーロッパでは初の紙幣が使われ始めました。ここからも分かる通り、唐突に切り替わるようなものではありません。ただ幸運なのは、私たちは情報技術の時代を生きています。情報交換は1秒以内にできるような時代です。つい最近まで遠い未来のことのようでした。通貨に関しては、今まで消費者がこれをコントロールしたことは一度もありませんでした。これは革命的なことです。もちろん大きな壁にぶつかります。ですが、モンゴルはサンドボックスを採択したことなどで評価されています。他方、中央銀行の電子通貨に関する研究が加速され、また開発されています。これによる利点は大きいと思います。通貨というものは国境を超えます。その利点として、通貨の管理が非常に良くなることがあります。中国では電子マネーを導入することによって、個人の財務状況を全て監視できるようになりました。そのためにブロックチェーンを使っています。アメリカでは民間企業に特許を付与します。例えば、フェイスブックでは2年前にリブラが開発され、政府関係者のリブラについての理解が不足していたために反対されましたが、今年からは名前をディエムに変え、政府の理解を得ています。これは何を意味しているかというと、世界中のビジネスマンがフェイスブックで口座を開き、コインを送り、受け取ることができるようになります。これからの5年で急速に普及すると見ています。

ジャルガルサイハン: 人口が少ないモンゴルでは、仮想通貨をいち早く採択したら、仮想通貨国民になる可能性が高いということですね。

B.ガンティグ: サンドボックス規則の趣旨は、法律の監視内で試してみようということです。簡単に言うと、10億トゥグルグの不動産を10億コインとして評価し、世界中がこの一部を所有し、賃借料を利益としてコインで受け取ることが可能だということです。問題は、今まで法的整備がなされなかったことでした。

ジャルガルサイハン: 重要な情報を共有してくださり、ありがとうございました。

B.ガンティグ: ありがとうございました。

B.ガンティグ * ジャルガルサイハン