ベグズジャブ・ムンフバートル氏は、中央県立第2学校、技術大学を化学技術者、モンゴル国立大学を政治学者として卒業し、イーストロンドン大学で経営管理学の修士号を取得しました。ムンフバートル氏はモンゴル民主・社会主義的学生連合事務総長、モンゴル人民党ウランバートル委員会上級役員、教育・文化・科学省行政局副長官、外交部長、ウランバートル市都市開発政策課長、バヤンズルフ区長、ウランバートル市副市長、人口開発・社会保障副大臣、建設・都市開発副大臣を歴任しました。またムンフバートル氏はエルデネス・オユトルゴイ社社長、オユトルゴイ社役員を務めました。

ジャルガルサイハン: こんにちは。新しい首相が就任しました。再び建設・都市開発大臣に任命され、おめでとうございます。あなたたちはモンゴルが直面している極めて困難な問題である住宅問題を解決するため、新しい政策として「ザルース(若者)1・2・3」住宅を建設しようとしています。住宅建設で問題が全て解決できるのならば、すでに多くの住宅が建設されていたことでしょう。今回のこの「ザルース(若者)1・2・3」住宅の特徴は何ですか。具体的に何を計画していますか。問題の解決になると考える理由は何ですか?

B. ムンフバートル: まず住宅は、人が生活をする上で必要な基本的ニーズの一つです。これまでの内閣は、住宅化政策を段階的に実施してきました。社会主義時代も第3、第4地区住宅の建設、500戸の集合団地化などを実施していました。民主主義体制に移行してからは、4千戸の公務員向け住宅、4万、10万、15万戸規模の住宅化など、それぞれ目標を立て、実施してきました。この内閣は、15万戸の住宅化を目指し、それを成し遂げるために6つの目標を立てています。5万戸の住宅は地方で、残りの10万戸の住宅はウランバートルに建設される予定です。10万戸の住宅のうち、3万戸は既に市の都市計画課の承認を得て、民間企業に建設が委ねられています。

53ほどのゲル地区再生計画のプロジェクトが実施されており、そのうちの20がより活動的に進行しています。都市計画に関しましては、建築基準を満たさない建物を一度壊してから建て直す必要があります。ウランバートル市の1970年以前に建てられた建物は、耐震化がされておらず、また統合エンジニアリングネットワークもなく、居住に適さない状態になっています。これらの建物の再建築において、ウランバートル市が競争入札を行い、選ばれた民間企業によって建設された建物に住民を移住させるというプロジェクトが実施されています。2013年からは、民間企業による住宅建設が、住宅ローン政策によって行われました。合計10万人以上に住宅ローンを提供しました。全国90万の世帯があるとして、ウランバートル市だけで7万〜8万人が住宅ローンを利用し、アパートを購入しました。年に1万5千棟のアパートが新しく建設されており、その3分の1は住宅ローンを利用、また3分の1は銀行がローンを提供、残り3分の1は市民が購入するという割合になっています。住宅ローンの金利が8%でしたが、前内閣はこれを6%に引き下げました。金利8%である場合、住宅ローンを利用するために平均所得が140万トゥグルグでなければなりませんが、金利を6%にすると平均所得が110万トゥグルグの人でも住宅ローンを利用できるようになりました。金利を6%に引き下げた際は、既に8%の住宅ローンを利用していた6万8千人が不満を漏らしていましたが、より多くの人が住宅ローンを利用できるように中央銀行、市中銀行と話し合い、金利を引き下げました。これが昨年の10月15日から開始され、12月31日には1850人が6%の住宅ローンの提供を受けました。中央銀行には30億トゥグルグの資金があって、それを住宅ローンとして活用しています。市中銀行の20億トゥグルグと合わせて、現在は50億トゥグルグが市場で調達されています。資金を増やすことができたらより多くの人が住宅を手に入れることができます。殆どの人が住宅ローンを利用できるようにはなってきていますが、それでもまだ家庭で夫や子が失業しており、妻だけの所得では足りず、ローンの返済が滞るという世帯が少なくなりません。そこで賃貸住宅が議論されています。政府が国有地にインフラを整備し、賃貸住宅を建設する事業が始まりました。このような賃貸住宅は、現在3000戸ほどあり、半分が地方、半分がウランバートル市にあります。ボヤント・ウハー1・2には1500戸の住宅があります。ハンガイホトホンにもあります。物件の面積によって異なりますが、賃貸料はだいたい月に28万トゥグルグになります。賃貸物件を後に購入する場合は、賃貸料が少し高くなります。月に40万〜45万トゥグルグを支払うことになります。これに関連して、オユン‐エルデネ首相は「ザルース(若者)1・2・3」住宅を建設するという目標を立てています。これは政府が民間企業と競合することになるわけではありません。モンゴルの建設分野は自由市場の原理で動いています。建築図面、建材生産、建設工事など全て民間企業が営んでいます。政府は特定の社会集団向けの住宅を建設することによって問題を解決しようと考えています。しかし、これは今日、明日にできるものではありません。一週間前、首相は建設業界の方たちとの面会でこのプロジェクトについて話をし、私たちはウランバートル市内の2、3カ所で実地調査をしました。まずは、住宅を建設する土地が国有地でなければなりません。建設・都市開発省所管の国家住宅金融公社、ウランバートル市所管の首都住宅金融公社という組織があります。現在の空港の先に続いているモリンギーンダワーに、国家住宅金融公社の名義で60ヘクタールの土地があります。また首都住宅金融公社の名義では120ヘクタールの土地があります。

ジャルガルサイハン: モリンギーンダワーとはソンギノ山へ登る小山ですね。

B. ムンフバートル: そうです。空港のさらに行ったところです。

ジャルガルサイハン: 先にある山の丘陵地ですか。ちょうどそこにウランバートル市が何かの事業をやっていたことがありましたよね。

B. ムンフバートル: そうです。

ジャルガルサイハン: 国家住宅金融公社の土地と首都住宅金融公社の土地、両方を合わせて「ザルース(若者)1・2・3」住宅になるのですか?

B. ムンフバートル: そうです。両社の保有する土地を合わせて、内閣の公約に含まれている国立住宅金融公社という公社が設立されます。

ジャルガルサイハン: このプロジェクトについて聞きたいのですが、つまり自分たちが住宅を建設し、その建設資金も自分たちが調達をするということなのですか。以前のモンゴルモーゲージコーポレーションとは何が違うのですか?

B. ムンフバートル: モンゴルモーゲージコーポレーションではありません。例えば、国家住宅金融公社の住宅は、県及びウランバートル市に10カ所あります。首都住宅金融公社はウランバートル市に住宅を建てています。両方とも国有企業です。これを合併させるというのが内閣の目標の一つとなっています。

ジャルガルサイハン: いつ合併するのですか?

B. ムンフバートル: 近いうちに合併します。まずは、定款を作成します。

ジャルガルサイハン: 合併したとして、建設工事と資金調達はどうなりますか?

B. ムンフバートル: 着工する前に国有地を調べます。モリンギーンダワーの土地に住宅を建設する計画を始めました。

ジャルガルサイハン: 今は何もない土地ですよね。その方が完成まで早いですからね。

B. ムンフバートル: そうです。国有地であるので土地の権利に関する紛争もありません。そこで、計画を立てます。まずは、フィジビリティスタディをします。例えば、国家住宅金融公社の60ヘクタールの土地に8千〜1万戸の住宅を建てると考えます。しかし、その際に住宅だけを考えればよいというものではありません。そこに住む人達の職場を考えなければなりません。どう雇用を創出するかを考えるのです。ウランバートル市はサービス都市です。工場はほぼありません。ヤールマグにも多くの建物が建設されています。それなら、どういうビジネスの中心にするのか、住民が公共サービスを受けるためだけに街の中心に移動する必要のないようにしなければなりません。現在は書店も街の中心にしかありません。ですから、「ザルース(若者)1・2・3」住宅の住民は、そこで全てのサービスを受けられるように、どういうビジネスを中心とするかを計画立てなければなりません。ただ、それを実際やるのは民間企業です。ウランバートル市は、渋滞など都市集中の問題を抱えています。今は、ほぼ全ての行政機関がイフ・トイルーにあります。これを分散化する計画を立てるのです。例えば、60ヘクタールの土地、人口、スポーツコンプレックスを何カ所建てるかなどフィジビリティスタディができたら、続いてインフラ整備の計算がなされます。暖房、水道、下水処理場、電気が届くかなどです。この地域には、トルコ政府の支援を受けて、空港地区に2万立方メートルの下水処理場が建設されており、現在1日1500立方メートルの水を処理しています。こういったインフラがあるからこそ街づくりができます。水道も空港地区から引くことができます。電気もソンギノ110発電所から電気を引くことができます。暖房は空港の暖房から引くか、あるいは火力発電所を建てる必要があります。

ジャルガルサイハン: 暖房の問題はモンゴルより寒い国でも電気を用いて解決しています。火力発電所よりも10倍以上有益な解決策です。そういう解決策は採択されませんか?

B. ムンフバートル: 1戸、2戸ならできます。多くの集合住宅となると、インフラがまだ整備されていません。

ジャルガルサイハン: 例えば、バッテリーを使ってやっていますよ。

B. ムンフバートル: 新しい技術を使い、節電し、熱の損失が少なく電気で室内を暖かくしている家はあります。しかし、何千戸もの住宅にそれだけの電気を供給するエネルギー源、インフラ、容量となると問題がたくさん出てきます。多くの家が暖房をつけたら容量を超えてしまい、停電になります。ですから、新しい技術を導入するにしても、節電を考えなければなりません。

ジャルガルサイハン: その建設にあたって競争は誰が管理し、技術は誰が導入するのですか?

B. ムンフバートル: 住宅だけでなく、工場、オフィスなど様々な建物が建設されます。それらすべての建物の暖房を全部電気で賄うことはできません。一部では可能かもしれません。熱損失を減らし、太陽光発電を使うなどという試みはあります。しかし、ある住宅の全戸を電気暖房にすることはできません。暖房、電気の供給は基本的にエネルギー省が担当します。

ジャルガルサイハン: 資金調達についてはどうですか?

B. ムンフバートル: 今までは土地について話してきました。次に、フィジビリティスタディがなされ、建設可能な戸数が明らかになります。それからインフラの設計図を描き、整備を始めます。そしてインフラ整備のための費用が分かります。内閣では建設担当者が、そして財務省の職員が加わったワーキンググループが国内、国外からの資金調達の可能性を探っていきます。

ジャルガルサイハン: 資金調達についてです。私はアメリカに住んだことがあります。あなたもイギリスに住んだことがあります。政府はインフラの地下埋設化を整備し、土地を分けて建設業者らに提供し、建設業者がその上に建物を建て、売却し、必要な改修も適宜していきます。今回、政府が国有地で建設を行うのであるなら「ザルース(若者)1・2・3」それぞれに債券を発行し、国民から資金調達をすることができるのではないですか。どうですか?

B. ムンフバートル: 資金調達手段の複数のバージョンを検討中です。あなたが言ったように債券を発行して民間企業にプロジェクトを任せることもできるのですが、しかし、民間企業があれこれ資金が不足したと言ってプロジェクトがなかなか進まなくなることが往々にしてあります。ですから、どういう企業に参入してもらうかが大切です。資金調達のやり方はいくらでもあります。今はインフラ整備を中心に図面を描く作業にお金を使います。しかし、住宅の建設と言っても、例えば、新空港がもうすぐ開港します。人の移動が新空港へと向かいます。ヤールマグ地区の人口密度が高くなり、渋滞も増えています。ですから、まず考えなければいけないのは道路です。新しい道路の設計をしなければなりません。空港から住宅街への道路、そこから新空港への道路の図面を描き、道路を建設しなければなりません。住民が街の中心に出る必要はなく、例えば、その地区で大学に通えるようにすべきです。

ジャルガルサイハン: それをどう実現するのですか。例えば、私立学校も建てられるのですね。

B. ムンフバートル: 計画に何もかもを入れたら、入札では民間企業がいくらでも参加します。雇用創出も常に考えなければなりません。新空港が開港すると、公務員だけで4つの国家機関の800人がそこで働きます。新空港に伴った都市開発に関していうと、例えば社会主義時代は計画チームが担当し、全てをそのチームが実行していたのですが、今はメガプロジェクト実施に暖房・電気はエネルギー省、上下水道は建設・都市開発省、道路はまた別の省が担当し、土地は地方自治体が交付するといったことになり、最終的に都市経済であることを誰も分からない状況になってしまいます。その都市が何を経済基盤とするのかということです。例えば、ウランバートル市はサービス都市で、ダルハンは工業都市だなどです。都市開発とは細かい計画と関連作業です。何をどこに置くか、どういう雇用を創出するか、その周辺の町との物流、人の移動をどう考えるか全て調査し、計画を重ね、実行しなければなりません。

ジャルガルサイハン: 都市開発において、外国の著名な都市開発設計者を採用しますか?

B. ムンフバートル: そこはオープンです。まずは、モンゴル人が一体何を、どう考えるべきかの概要を理解する必要があります。外国人エキスパートに仕事を外注することもできますが、4年ごとの選挙で、2年おきに変わる内閣がメガプロジェクトを成功させることはかなり難しいです。権威主義、社会主義であれば、作業は順調に進みます。しかし、民主主義で安定性を欠く状態ではかなり困難です。住宅建設の後に、中央積立基金です。今日の社会保障制度は、給料から税金を払って、それが高齢者に年金として給付されます。シンガポールは中央積立基金を作り、政府が全ての住宅を建設しました。今の内閣はモンゴルでもシンガポールのようなシステムをつくる可能性を考えています。ウランバートル市は、住宅ではなく雇用創出の面で考えなければならないことが多くあります。

またウランバートル市の下水処理場を建設しています。1日26万立方メートルの水を処理できます。ソンギノビオの周辺でミレニアム・チャレンジ公社の援助を受けて、飲料水の水源を作りました。今までは、7つの地下水井戸を使って飲料水を提供していました。

ジャルガルサイハン: 7つの地下水井戸から水を汲んで、どこで浄水するのですか?

B. ムンフバートル: 今は浄水施設がありません。井戸から水を出して、塩化ナトリウムを入れて提供します。ミレニアム・チャレンジ公社の援助を受けて作ったのが水処理設備です。

ジャルガルサイハン: その水処理設備はモンゴル初ですか?

B. ムンフバートル: 初めてです。これによってウランバートル市の飲料水の水源が20年延長されます。

ジャルガルサイハン: 特に夏場に空港に下り立ってすぐに悪臭が人々を迎えます。これはいつ無くなりますか?

B. ムンフバートル: 悪臭の原因は1965年に作られた下水処理場ですが、これを改善することができずに1990年代を迎えました。そのため下水処理場のスラッジを外に出して乾燥させます。本来はスラッジを脱水した後、燃焼して無くすべきです。新しい中国製水処理施設ではそれができるようになります。

ジャルガルサイハン: その水処理施設は中国からのローンで作ったのですか?

B. ムンフバートル: 2億5000万ドルのソフトローンです。

ジャルガルサイハン: 今はどこまでできていますか?

B. ムンフバートル: 昨年の秋、中国人技術者45人が来て作業を開始しました。2023年には完成します。それから1年間、試験運用をしなければなりません。しかし、ここで一つ問題があります。この水処理施設は下水道と繋がってないのです。下水道との接続はモンゴル側がやらなければなりません。中国との契約にそのことについての記載がありません。ナライフ、ガチョールトからの下水道がウリアスタイ橋の下で合流して中央下水処理場に繋がるプロジェクトがもう3、4年間、停止しているのです。

ジャルガルサイハン: そもそもなぜ距離の離れたナライフからソンギノまで下水道を通さなければいけないのですか。ナライフで処理できませんか?

B. ムンフバートル: ナライフが発展したらできるでしょうが、今は下水道と繋ぐしかありません。

ジャルガルサイハン: 下水道を繋ぐために一番困難な問題は土地に関するものですか?

B. ムンフバートル: 一番重要なのが仕事の相互関連性です。このプロジェクトはウランバートル市役所の責任で進められるべきです。

ジャルガルサイハン: なぜそれができないのですか?

B. ムンフバートル: 予算が足りません。

ジャルガルサイハン: ウランバートル市はGDPの70%が集中している大都市です。ウランバートル市にはたくさんの固定資産がありますが、それに対する課税はされません。なぜしないのですか?

B. ムンフバートル: モンゴル国の経済にウランバートル市の影響は大きい。にもかかわらず、ウランバートル市は県と同じ法的地位にあります。つまり、全て財務省に依存しているのです。

B. ムンフバートル * ジャルガルサイハン