Ts.ジャムバルドルジ氏はロシアのモスクワ国際関係大学を卒業し、イギリスのウェストミンスター大学のロンドン外交アカデミーで修士号を取得しました。1985年からモンゴル外務省の国際協力課課長、ASEAN諸国における初のモンゴル国代表、駐オーストラリアモンゴル国大使などを歴任。2016年7月から駐イタリアモンゴル国大使に就任しています。
J(ジャルガルサイハン): こんにちは。あなたはいつ駐イタリアモンゴル国大使に赴任しましたか?
ジャムバルドルジ: 私は駐イタリアモンゴル国大使に任命されて2016年8月1日にイタリアに来て1年余りになります。
J: 在イタリアモンゴル国大使館の職員は何人いますか?
ジャムバルドルジ: モンゴルは2011年10月にイタリアに大使館を開設して6年になります。イタリアの首都ローマにあるモンゴル国大使館には大使、次席、二等書記官、三等書記官、機械技術者の5人がいます。
J: あなたは駐オーストラリアモンゴル国大使をしていました。イタリアとオーストラリアという先進国で大使をしてこの2つの国の異なるところはどこだと思いますか?
ジャムバルドルジ: 私は1985年にモスクワの国際関係大学を卒業して以降、イギリス、アメリカなどの国に赴任してきました。その後オーストラリアに初のモンゴル国大使として任命されました。イタリアでは二人目のモンゴル国大使です。そのため、イタリアに赴任して来た時は大使館の活動は非常に落ち着いていました。イタリアはヨーロッパの中心で「G7」の1つ、そしてモンゴルと歴史的な関係がある国なので、見習うべきことは何かと探っています。イタリアとモンゴルの貿易、経済関係に最も注目し、考古学分野における観光資源の活用などで共通点を模索しています。
J: モンゴルとイタリアの関係及び大使館ができた経緯について話してください。
ジャムバルドルジ: モンゴルはイタリアと1970年6月に国交を樹立しており、2020年に両国国交樹立50周年を迎えます。この記念行事を盛大に行う予定です。13世紀にフビライハンがモンゴル帝国を支配していた時代、イタリアの旅人やローマ法王の代理人がモンゴルに来ていた歴史があり、これが両国の国交関係の始まりだと言われています。モンゴルとイタリアの政治関係は良好ですが、貿易・経済関係はあまり進んでいないので、この関係を進展させるために両国間で話し合いを持っています。
J: 13世紀にモンゴルからイタリアに手紙を送っていたという話があります。これについて何か話はありますか?
ジャムバルドルジ: バチカン市国は世界のキリスト教の中心地です。バチカン市国はイタリア国内に位置していますが、独立国家なので駐ローマ大使、駐バチカン大使と別々に置くべきだと考えられています。モンゴルはバチカン市国と国交があるため、大使を置く必要があります。バチカン市国の文庫にある歴史資料を視るためには、必ずバチカンを担当する大使に許可を取らなければなりません。私たちは、イタリアとモンゴルに関連するどんな歴史資料があるのか、それを視るためにどんな書類を用意する必要があるかについてイタリア側と話しています。そしてモンゴル関連の歴史資料の詳細なリストがないことが分かりました。現在は在スイスモンゴル大使館がバチカンを担当しています。
J: バチカンの図書館を見学するためにモンゴルの科学研究所、歴史研究所が要望書を出しているそうです。いつ見学できるようになりますか?
ジャムバルドルジ: 大使館はナポリ東洋大学と連携しています。この大学のM.ベルナルディーニ教授はペルシャ語を話す方で、モンゴル王族の歴史を研究した人です。モンゴル関連の歴史資料やそのリストを見つけるため、大使館やモンゴル科学研究所、モンゴル国立大学と協力しています。来年には良い結果を聞かせてくれると期待しています。
J: 両国の経済関係について話したいと思います。距離が遠く、市場が小さいモンゴルにイタリアの大手企業より中小企業が関心を示すかもしれません。
ジャムバルドルジ: モンゴルは世界のカシミアの30%を供給しています。そのカシミアを買っている主要な国の一つがイタリアです。ロロ・ピアーナやブルネロクチネリなどのブランドはモンゴルのカシミアを使って紡績、コーミングをして良質な製品を作り、国際市場で競争しています。
J: ゴビカシミヤ社の民営化の時にイタリアの企業が参加していたら大規模な投資が入っていただろうと思います。カシミアの他に何がありますか?
ジャムバルドルジ: モンゴルからの輸出でカシミアの次にくるものは革です。イタリアは皮革製品が世界でも有名です。羊、山羊、牛の革を生地のまま買いつけイタリアで鞣し加工します。しかし、量はそんなに多くありません。モンゴルとイタリアの間での貿易額は6000万ドルです。モンゴルからの輸出量は34%、イタリアからの輸入量は33%です。
J: イタリアからモンゴルに輸出されているものは何ですか?どのように輸送していますか?
ジャムバルドルジ: イタリアの食品、家具、日用品の輸出が急速に増えています。この2年ほどの間にイタリアの家具ブランドがモンゴルに10店舗オープンさせました。
J: イタリアに住むモンゴル人はどんな仕事をしていますか?
ジャムバルドルジ: イタリアに住むモンゴル人は少ないです。私たちが把握している限りでは210人です。そのうち140人が学生です。以前はビジネス、経営、国際関係、ジャーナリズムなどを専攻する学生が多くいました。最近では食品技術、観光、スポーツ管理などの分野を専攻する傾向にあります。工学系は比較的に少ないです。イタリアでは私立ではなければ学費は比較的安いのです。
J: 奨学金制度はありますか?
ジャムバルドルジ: イタリア政府には奨学金制度はありませんでした。しかし2016〜2017年から大使館を通して専門分野において6つの奨学金を交付することになりました。
J: あなたは、モンゴルを宣伝するためにどのような活動を計画していますか?
ジャムバルドルジ: モンゴルとイタリアの関係を進展させる可能性はたくさんあります。モンゴルの農牧業、イタリアの食品産業がそれぞれの国で有名です。そのため、イタリア食品及び農牧製品の生産方法、技術を学ぶ必要があります。2011年にモンゴルとイタリアの政府間合同委員会の初会合がミラノ市で開催されました。その後、2回目の会合を2017年4月にウランバートルで開催しました。イタリア側の委員長をイタリア経済開発副大臣が務め、また上院議員も委員にいます。モンゴル側の委員長を食料農牧軽工業大臣が務めています。第2回の会合では幅広い分野について協議することができました。
J: イタリア人にモンゴルを知ってもらうためにどんな活動が実施されていますか?
ジャムバルドルジ: モンゴルはイタリアから学ぶことが数多くあります。イタリアの人口は6100万人です。首都ローマを年間1500万人の外国人観光客が訪れています。2017年8月の統計では、イタリアを訪れた外国人観光客は延べ5000万人になったと発表がありました。イタリアは観光分野に力を入れ、今では国内総生産の70%を観光業が占めています。モンゴルの観光業を発展させるためにイタリアの経験を研究し、モンゴルを訪れるイタリア人観光客を誘致するなどの活動を行っています。
J: イタリアはつい最近、選挙制度を変えました。そして新しい制度による選挙が迫っています。これについて話して頂けますか?
ジャムバルドルジ: イタリアは議院内閣制の国です。議会は共和国元老院と代議院の2つの議院による両院制で構成されています。共和国元老院は315議席あり、代議院は630議席あります。それぞれ上院、下院と呼ばれていますが、すべての法案を全議員で協議します。両院は同じ権限をもっているため、アメリカの議会の上院・下院とは異なります。前の選挙法では両議院の議員は完全比例代表制で選ばれていました。新選挙法では両議院は同じく36%が小選挙区制、64%が比例代表制で選ばれるようになります。 イタリアの大統領セルジョ・マッタレッラは2018年3月18日にこの新法のもとで選挙を行うと発表しました。
ジャムドルジ * ジャルガルサイハン