7月、オクタン価92ガソリンの価格が600トゥグルグ値上げされ、2,050トゥグルグになった。輸送費の上昇によりほとんどの消費財やサービスの価格が値上げされている。5年前に1,530トゥグルグだったガソリンの価格は毎年上昇し続けてきた。モンゴルでは、価格が上昇することはあっても下落することは起きないことが特徴である。人々は、初めは苛立ち、時にはデモを起こし、価格の引き下げ、もしくは給与の上昇を政府に求めるが、そのうちに慣れてしまうことが多い。ほとんどの人は社会主義時代のように、価格は政府によって決められるものだと信じている。政府もまた価格を引き上げないと公約する。特に選挙前はそうだ。

政府は「価格を維持する」ために、数多くの方法を試みてきた。例えば、燃料やガソリンの特別税の引き下げ、もしくは関税をゼロにする。また、国が備蓄用として食肉を購入する、小麦栽培や山羊の飼育にソフトローンを提供するなどである。電力価格を低く抑え過ぎているため、電力会社は内部留保を確保できていない。そのため、既存の数少ない発電所に小さな故障が起きただけで停電が発生し、電力供給がストップする寸前の状況にある。

人類の歴史の中で、最大の物質的富を生み出したのは自由市場だけである。自由市場の基本は自由価格にある。自由価格は誰にも抑制できない。これを可能だと公約するのは政治家のみである。政府による価格設定によって一部の人だけが得をし、国民全体が損をする。政治家たちは、価格が上昇し、商品やサービスの不足が生じた後、実に様々な理由をこじつけ、綺麗事を並べて逃れてきた。

価格とは何か。それを誰がどのように決めているのか。なぜインフレが起きるのか。その根本的な原因は何なのかを人々は知るべきである。真実は、真実であることが最良なのだ。

価格

商品とサービスの価格は、それらを生産するためのコストに基づくのではなく、買い手(需要)と売り手(供給)の仮定した(主観的な)評価で構成される。その価格が高くなるほど買い手が増え、売り手が少なくなる。価格が低くなる場合はその逆となる。これは自然な動きである。自由市場は仮定を現実的にする。市場とは、異なる方法で価格を設定しようとすればするほど、需要と供給が歪められ、当該商品やサービスが消滅するか、もしくは特定の集団が過剰な利益を吸収する。価格自体が市場情報であるため、参加者は間違った情報を受け取り、ビジネス上の判断を見誤る。

例えば、モンゴルのガソリン市場を見てみよう。このビジネスは収益性が高いため、輸入業者は100社、配送業者は30社もある。メディアは、このビジネスに政府の指導者たちが裏表で深く繋がっていることを十分に暴いてきた。私たちはこのビジネスによって国会議員になった人が何人いるか、その名前も良く知っている。ガソリンのビジネスは、なぜ収益性が高いのかと言うと、政府は価格を引き上げないように要求し、その穴埋めを税金で補填している。つまり、販売が保証されているビジネスだからである。

もし、価格が自由で競争によって調整されていたならば、最初は上昇するが、すぐに下落する。担当大臣はガソリン価格が市場によって調整されるのが妥当だと見ている。モンゴルは、ロシアのアンガルスクにある唯一のガソリン生産者に依存しており、すべての業者が同じ価格で購入しているため、競争する上で際立つ唯一の方法はコスト削減のみである。これができた者は生き残り、できなかった者は淘汰される。そして価格は安定する。

消費者は、私たちが価格を制御できない要因を良く理解し、価格がいつどのように変動するのかを知ることによって、正しく消費を計画し、購買力に応じて自動車を買うかどうかを決定する。自動車を買えないならば、公共交通機関の充実を要求し、政治家を選ぶ時に賢明な選択をするだろう。

この分野にロスネフチが参入する話がまた持ち上がってきた。キルギスがロスネフチの国内参入を認めたとき、国民の参政権が制限された。モンゴルの法律では、市場で25%以上を供給している企業は、小売市場に参入することはできないので、ロスネフチの参入は認められないはずだ。

私たちは既に始めた石油精製所の建設を期限内に完成させ、原油パイプラインをできるだけ早く建設する必要がある。また、同時に石油埋蔵量を増やす探査活動も急がなければならない。国内でガソリンの生産ができれば、価格が下落するほかに供給が保証される。現実にロシアがガソリンの輸出を停止すると発表したため、私たちは中国に頼り、高値でガソリンを買わされている。

価格上昇=インフレ

今日、価格上昇が加速している。建設用鉄筋の入荷が滞ったため、住宅価格は急激に上昇している。ガソリン価格も上昇し、その他の商品やサービスの価格がどのように急騰しているかは上述した通りだ。価格上昇、つまりインフレは、人々の富を蒸発させる。インフレは、人間の体温が上昇することで、それが全身の危機の現れであるかのうように。

政治家は今回の価格上昇について、新型コロナウイルスにより人々はコストを削減し、お金を節約した後の需要の急増、中国と国境での輸送や物流の混雑、ロシアからのガソリン輸入が急激に減少し、モンゴル国内で価格が上昇したからだと説明している。これらは現実ではあるが、表面的な説明である。インフレの根本的な原因は、行政の経済政策が失敗したからだ。そのため、インフレは政府の「見えざる税」と言われている。

モンゴルの経済政策の根本的な失策は、市場の長所を最大限に活かすより、あらゆる分野に政府の、政治化した、外部監査のない関与を過度に導入したことにある。政府の関与の増加は、公的資金によって直接的および間接的にサポートされ、倒産しないプレイヤーが出現し、自由競争を歪めている。

価格維持という名目で、政治家が関与しているオリガルヒ企業に独占権が与えられている。これらの企業や銀行は、独占の代償に政党や政治家に資金を提供し、自分たちの立場をより強固にし、事業拡大の決定を出させている。オリガルヒたちは司法制度を「私有化」し、競争相手を脅迫している。私たちは、将軍や検察官の家から数百万ドルから数十億ドルの現金、また盗聴器が発見されたことに驚かなくなっている。

個人的な利益のために公職を悪用することが横行し、腐敗の増加では、私たちは世界をリードしている。腐敗について、特にエルデネト鉱業の49%の株式を公的資金で買収し、私有にした事件については数多く言及し、指摘した。首相となったL.オユン・エルデネは、権力を手に入れてから沈黙するようになった。おそらくその理由は、人民党内のオリガルヒの政治力の比率が均衡し、現状が確立されたからだろう。

人民党は2016年以来、政治的独占状態となり、いかなる法律も制定・施行できるようになったが、何年にもわたる腐敗を抑えることはできていない状況である。賄賂対策庁が機能していないため、政府はワーキングチームを設立し、ライオンや虎ではなく、ネズミやリスを追いかけている。それでいて2年以内に「腐敗を嫌う新しい社会文化を創造する」と言っている。

モンゴルでは、あらゆる腐敗が種類によって権力者のグループに分けられ、彼らは互いに弱みを握っている関係にある。ウランバートル市の土地、山脈の麓、鉱山ライセンス、銀行や金融機関の権限、建築事業など、オリガルヒが多様化し、拡大しており、大規模なプロジェクトを実施するために人民党内の派閥が競争するようになった。

腐敗はインフレの根本的な原因であり、現在、モンゴルの経済を抑圧し、発展を妨げ、国民を貧困に追い込み、人々は外国に逃げる事態にまでなっている。首相にとっては進むも地獄退くも地獄で、人民党内の現状を変えれば政権が変わることになるし、変えなければモンゴル国が変わってしまう状況である。

ダムバダルジャー・ジャルガルサイハン