今日のモンゴル経済危機の根本的な理由の一つは、価格を市場ではなく政府が決めていることにある。これは何の結果も得られないポピュリズムともいえる。市場経済の意味を分かっていない、無知或いは自分勝手な一握りの政治家のせいで、国民はガソリン価格が上がらないと信じてしまっている。そしてガソリン不足が起こり、政治家は名声を得て、国は衰退へと向かう。

政府は原油価格が上がった時に特別税率を下げ、価格が下がった時に特別税率を上げる形で2008年から価格の変動を小さくなるよう調整してきた。しかし、2017年から国の負債が増加し、予算歳入の4分の1を負債の利息に回すようになった。そのため海外に支援を求め、国際通貨基金(IMF)から再び融資を受けた。

政府は「IMFからの要求」という名の下に各種税率を引き上げた。その中の一つがガソリン特別税である。原油価格が上昇している中で2017年7月と11月、ガソリン特別税を2回にわたり引き上げた。これが石油を輸入している企業の赤字の原因となり、ガソリンを値上げせざるを得ない状況に追い込んでいる。値上げしなければガソリン不足に陥る状況になっている。

価格制限は不足と倒産を産む

政府の命令で何らかの価格を決定しようとする行為は、最終的に商品の不足を産む。なぜならば商品の需要と供給は多様な要素によって常に変化し、その変化は自由競争でのみ適切に調整され、市場を正常に動かすものだからだ。これはある商品の需要が供給を上回った時は価格が上昇し、供給が需要を上回った時は価格が低下するという黄金の市場原理である。この市場原理に反した時、不足と倒産が到来するのだ。

供給者と消費者が消費と生産を調整する結果、需要と供給は相互にバランスを保ち、経済活動が正常に動く。このバランスが多少崩れる度に価格が変動してバランスを保つようになる。しかし、政府が価格を強制的に決めることにより、ある期間の後に需要と供給のバランスが一気に崩れ、瞬く間に不足と危機に陥る。

この現象は、モンゴル政府が電気、燃料など消費財の価格を調整し、国の発展を邪魔していることからみてわかる。ここで燃料、ガソリンの価格構成をみてみよう。モンゴルは輸出収入の5分の1を石油の輸入に使う国である。ガソリンの供給はロシアに完全に依存している。ロシアの石油会社がシンガポールの市場価格に基づきガソリンを供給している。

2018年1月現在、ガソリンA-92の1kgあたりの価格は1630T(トゥグルグ)だ。これに 税金512 T(関税として81 T、道路税25 T、特別税210 T、付加価値税195 T)つまり30%プラスされる。さらに鉄道輸送料16 Tが上乗せされガソリン1kgの輸入価格は2158 Tとなっている。これを1リットルにすると1662 Tとなる。しかし、販売する時は1リットルあたり1620 Tで売られている。企業は運営コストを含めない状態で42 Tの赤字を負っている。この場合、企業は販売を停止するか、もしくは倒産する。いずれにしても価格を決めた政治家の誰もが責任を負わない。消費者にしわ寄せが行くだけだ。

ガソリン輸入企業は政府が「調整」した価格で3ヶ月間耐えてきた。政府が特別税を下げるのを待っていたが、その期待が外れ、値上げするほかなかった。『価格委員会』という名をもつ機関は、問題をどのように解決すればよいか分からなくなっている。政府は税率を引き上げ利益を取った上で、全てを企業のせいにして自分たちの「名誉」を守り始めている。今、モンゴルではガソリン・燃料の不足が始まっている。モノの価格を維持するというモンゴル銀行の思惑はすでに幕を閉じている。

ガソリンが不足すればウランバートル市内の車が減り、馬が多くなるだろう。そのため、車のナンバー規制も不要になり、渋滞も大気汚染も減るかもしれない。

自由価格選択は発展をもたらす。

では私たちが馬に乗るような事になる前に、価格を政府が調整しない場合はどうなるのか。価格を政府ではなく、国民が決めた時のどうなるのかについて見てみよう。

もし、政府が価格を調整していなかったら、政府・企業・労働組合の代表からなる価格委員会で嘘の演技をする必要がなくなる。この委員会の中には消費者の代表がいないので市場における消費者の力がない。しかし、自由市場では消費者がより安いものを自分で選ぶ。モンゴルのガソリン輸入企業が小売価格を決め、運営コストを削減するために競争する。この自由競争が価格を低下させる。もしガソリンスタンドが相互に話し合って価格を決定した場合は、その企業に高額な罰金を課す。さらにライセンスを剥奪するまでの措置を取る。もちろん、法律に則って。

自由価格はニーズを適正にし、新しい消費を掘り起こす力がある。ガソリン価格が上昇したら消費者の車の使用が減り、公共の交通手段を利用するようになる。すると公共交通の改善が進み、人々はタイムテーブルの適性を要求し始める。自動車数が減り、渋滞が緩和され、大気汚染が削減されるだろう。

化石燃料による暖房を太陽光や風力発電に変えたらどうなるか。建物の屋上に太陽光パネルを設置し、さらに電気による自動車を求めるようになる。このように消費構造が変わり、ガソリンの消費が減少することによって価格が自然と低下する。これが「消費者が価格を決めている」ということである。

政府が価格を制限するのを止め、特別税を廃止にすることでガソリンの価格が30%下がる。

ダムバダルジャー・ジャルガルサイハン