2050年ビジョン政策案が可決成立した

先週、国会はモンゴル国の長期発展政策となる「2050年ビジョン」を可決成立した。この「2050年ビジョン」は、長期発展のロードマップとなる9つのビジョンと50の達成目標からなる大きな政策文書である。あなたはこの政策文書に関していくつかの批判を書いてきた。そこで、あなたはこの2050年ビジョンを総体的にどう見ているか?

この「2050年ビジョン」は、国の発展のために打ち出された国民にとって重要な政策文書の1つである。これまでにこの2050年ビジョンに類似した数多くの政策文書が出されて来た。それらの政策文書と今回の「2050年ビジョン」の異なる点は、30年先を見捉えており、達成目標を10年毎に設定していることだ。また9つの大きな柱となるビジョンを設定している。その9つのビジョンとは:

第1.国民の統一した価値観である。ここでは1つの言語、1つの歴史、1つの文化、1つの理念を国民全体が共有するように形成するとある。

第2.人間開発である。ここでは、人間開発指数を0.9に引き上げ、幸福度が高いと言われる世界の上位10ヵ国にランクインするとある。2050年には人口の80%が中所得者層になると言う。経済に関していうと、モンゴル経済は30年後に現在の6倍に拡大し、約800億ドルになる。一人あたりのGDPは4倍になり15,000ドルになる。つまり今日の韓国の水準になるということである。

良いガバナンスの構築、グリーン開発、平和と安全な社会、地域別開発、ウランバートル衛星都市などといった9つの基本方針を立て、何を達成すべきかが記述されている。しかし、どのように達成するかについての記述は非常に少ないことが問題である。これまでに政府が打ち出してきた政策文書もそうだった。数多くの目標が掲げられてきたが、目標達成のために何をするのか、それに必要な資金はいくらなのか、誰が実施するのか、政府なのか、民間なのかといったことが示されていない。

そのため、デファクト研究所は「2050年ビジョン」を批評し論じてきた。その記事をまとめて「2050年ビジョン批評」という手引きを出版した。050年ビジョン批評には9つのビジョンそれぞれに何が足りないのかについて書かれている。言うまでもなく、これは「2050年ビジョン」について国民の議論に貢献するために出版したものである。

今回の「2050年ビジョン」という政策文書を、国民が十分に議論していないうちに政府は急いで可決成立させた印象を受けた。あなたの見解は?

相対的に議論する機会を与えたと思う。政策文書自体は4ヵ月前に発表され、各区や各県などに配られていた。しかし、私たちはそれにどれだけ意義を見出せたかは個人の問題である。だから、デファクト研究所は批評を書いた。批評とは、単に批判し否定することではない。対象についての長所や短所を生産的に指摘することを言う。私たちは外国人にも分かるように英語、ロシア語、日本語でも出している。

私的年金制度は確立するのか?

先週水曜日、N.ウチラル国会議員をはじめとする5人の国会議員は、私的年金法案を国会に提出した。この法案が可決成立すれば、モンゴル初となる私的年金制度が確立されると言っている。これについてあなたの見解は?

モンゴルには年金制度が確立されている。1958年に初めて年金法が可決成立し、つい最近まで施行されていた。この法律に高齢年金受給についての規定があり、勤続年数25年以上の男性60歳、勤続年数20年以上の女性55歳は高齢年金を受給する資格があると定められてあった。1958年当時、モンゴル人の平均寿命は59歳だった。今日、モンゴル人の平均寿命は男性69歳、女性79歳である。

モンゴル政府は1985年に年金改革政策を打ち出し、それ以降1999年、2015年に改訂してきた。最近では、1960年生まれ以降の人に個人口座を設置するといっている。それで1960年以降に生まれた人に個人口座を設置し、年金額を計算して給付しようとしたら、金額が現在給付されている年金額より低くなったという。そのため、この年金分野には改革が必要である。

その1つが、単に掛け金額を変えるという改革ではなく、現在、年金を受けている人の80%が労働最低賃金以下の年金を受けている。その背景には貨幣価値の問題がある。インフレ率が高い国では、例えば、20〜30年で貨幣価値は何パーセント下落しているかを考慮する必要がある。また、モンゴルの年金基金は“B”つまり収入に基づいた方法で年金給付額を決めるペイ・ゴーというシステムを用いている。これで計算すると、国民は定年してから毎月25万トゥグルグの年金を受けることになる。

しかし、労働最低賃金は2019年に32万トゥグルグだった。そして2020年には42万トゥグルグに引き上げられた。だが支給される年金額は平均が25万トゥグルグのままである。これは私たちの考えうる生活に必要な学と、現実に年金受給者たちに届いている金額が、どれだけ異なっているかを現している。

そのため、この年金制度を改革する時が来ている。単に表面上の改革ではなく、基本的な原則から根本的に変える必要がある。

今回、国会に提出されたこの法案は可決成立するのか?成立した場合、原則的に年金の計算は変わるのか?

現在、モンゴルの年金基金には年間2兆トゥグルグが集まる。そのうち1兆9千億トゥグルグを給付すべき人たちに給付している。残りは基金の負債にも充てられていない。政治家は口に出さないが、基本的にモンゴルの年金基金は制度として完全に破綻していることを強調したい。

そのため、年金改革は必ず必要である。従って、今回の私的年金制度という新しい改革は必要不可欠である。この私的年金制度とは、積立金を指している。積立金とは、現在、私たちは年金掛け金として収入の17%を給料から差し引かれている。この17%のうち4%を私的年金のための積立金に入れようということである。これはどういう意味かと言えば、私的年金で積み立てたお金は、積み立てた本人が受け取れるということである。例えば、個人が給与から差し引かれている17%のうち4%を積立金に入れるとすると、30年後に7,700万トゥグルグの個人資産をもって定年するということになる。さらに、これは長期雇用にも繋がる制度である。そのため、今回の私的年金制度は導入すべき案だとみている。

モンゴルの鉄道に関する陰謀

憲法裁判所は、国会が「鉄道運輸に関する政府政策実施における一部措置について」という第64決議案を議決する時に、それが憲法第12項を違反しているという判断を出した。憲法裁判所のこの判断を受け、憲法について研究をしている学者たちが「この憲法裁判所の判断は政治化したものであり、政治の指示によるものだ」と強く批判している。これについてあなたの見解は?

このことに関して、私は法律家ではないので法律家や法律を研究している学者たちの意見を共有したいと思う。

例えば、モンゴル国立大学法学部の准教授A.ビャンバジャルガル博士は「憲法裁判所の司法の全権ではあるが、一般法すべてが憲法の支配にあるとの原則をもって法解釈している。だが今回の内容から見れば、これが誰の指示であるかは明確であった」と批判している。

このことを深く掘り下げてみた時に興味深いことがあった。憲法裁判所は、ある人物のクレームを受け、5月13日の憲法裁判所の中間審議会で審議し、同日国会の常任委員会がそれを承認した。その翌日5月14日に国会は閉会前に審議し、2014年に国会が出した「タバントルゴイ炭鉱から南へ伸びる石炭輸出用の鉄道を狭軌で作る」という決議について、憲法裁判所の「憲法、民主主義、正義」に反しているという判断を受け、無効にした。

国会はいち個人の影響を受け、モンゴルの鉄道の発展のために20〜30年も話し合ってきた政策を24時間で無効にしたということである。この結果、タバントルゴイ炭鉱から南に建設される鉄道の軌間は広軌になるという。この鉄道問題に関して社会全体が分裂している。

一部の人たちは、確かにモンゴルは既存の鉄道を旧ソ連の影響下にある時に建設されたものだ。しかし他の鉄道はビジネスに直接繋がっていることを考えると、狭軌で建設されるべきなのにそれが止められたと見ている。また、その意見に反対の人たちは、モンゴル国内の鉄道は統一した1つの軌間で建設されるべきだと言う。さらにもう一部の人たちは、鉄道の軌間交換サービスは大きなビジネスである。この軌間変換場がモンゴル国内にあれば、ロシアと中国の85mmの軌間差は、モンゴルにとってビジネスチャンスとすることができる。それに加えて、政治的にこの2つの大国とバランスの取れた関係を維持できるようになるという。このように社会全体の意見は3つに分かれている。 法律学者たちの意見をみれば、この憲法裁判所というところには、政治家のためにどんな判断でも出す集団がいるという印象を社会全体に与えている。