10月15日投開票の地方選挙

地方選挙が10月15日に行われる。地方選挙は4年に一度、総選挙後に行われる。総選挙によって政府が変わることに対応するため、地方自治体でも選挙が行われるものだ。投票日の1ヶ月前から首都ウランバートル市でも地方選挙候補者名が公表された。各県の選挙候補者名はまだ公表されていない。与党人民党は、45名の候補者を擁立した。その他の党は連立し、民主党は37名、モンゴル人民革命党8名の候補者を擁立した。新党からは候補者の擁立はなく、連立の決定に賛同するという。27名の候補者を擁立する全国労働党は、地方選挙が公正に行われるかどうかについて疑問視している。

市民代表議会は、県・区・郡の民主主義の基盤となる地方自治の原則を実現する唯一のメカニズムだ。ただ、それが機能しているかどうかが問題だ。国会議員は国全体へ奉仕するのに対し、市民代表議会はその地域、地方が抱える問題を解決するために務めるべきだ。地方自治体とは知事と市民代表議会を指す。県の人口に比例して、市民代表議会議員数は異なる。

市民代表議会に関する問題をいくつか指摘しておきたい。まず、市民代表議会が果たす役割、市民代表議会議員は何をしているのかが市民にとって分かりづらい。県、郡の市民代表議会議員が実際には当地に住んでいないこともある。市民代表議会議員はパートタイムでボランティア、その上無報酬の割には仕事の量が多い。市民からは、総選挙で政党から擁立されない者が地方選挙に出馬すると受け止められている。最近、人民党党首がウランバートル市の市民代表議会議員の候補者を公表した。これに対し、それまで市民代表議会議員を務めた党員の声を一切聞かずに発表されたとしてCh.ガントルガが反対の声を挙げた。党内の意思統一がなされておらず、誰を地方で活動する党員として選出するか話し合われていない。

次に、市民代表議会議員は市民の代表ではなく、党の代表となっている点だ。議員自身は責任を取ることはなく、党が責任を取る。法律の規定によれば、市民代表議会は行政機関を監視する役割を持つ。知事は市民代表議会に対して報告義務を負う。ウランバートル市の予算支出に目を光らせ、報告の提出を要請すべきだ。しかし、市民代表議会議員の3割を占める議員が監視すべき行政機関で働いている。これは地方レベルの「ダブハル・デールテン(重ね着した者)」である。市民代表議会議員であると同時に地方政府職員であれば、自己に対して厳しく批判をし、律することは困難である。市民代表議会議員は、インセンティブは手にするが、報酬は受けていない。

最後に、ウランバートル市の腐敗問題、土地の不正売買、断水問題、道路建設、停電等の社会問題に関して、個人がその責任を追及することは難しい。だが市民代表議会ならば責任追及が可能だ。モンゴルではこういった仕組みが未だに整っていない。

市民代表議会議員は党ではなく、市民を代表しなければならない。区・郡などの小さな地域では党から立候補する必要はない。現在、こう言った問題を前提に新たに地方自治体法案が議論されている。そこでは、首都と区という2つの行政区画があるが、首都市民代表議会を各区からの代表者で構成できないかという提案が議論されている。外国でもそういう制度はある。注意しておきたいのが、県・郡の市民代表議会議員を務める者が、その県・郡に居住せず、会議に参加するためだけに移動する者がいることだ。その地に住んでいない者が住民を代表することは合理的ではない。

また各県知事は政党内で立候補して、首相が承認する。すると、少数の政治家だけで誰がどの職位に就くかを決めることになる。ウランバートル市の知事は政党ではなく、市民が直接選挙で選ぶべきだ。そして、病院や学校、インフラなどの公共の問題を国会ではなく、知事・地方自治体が解決すべきだ。また地方発展基金の収支も監視すべきだ。公共サービスが効率よく、円滑にならなければならない。モンゴルにはそのための良い例がある。Check My Serviceというスマートフォンアプリが開発され、公共サービスに対してオンラインで評価することが可能となった。このアプリを国に対するものとしてだけでなく、市民間の意見交換のプラットフォームにするべきだ。意見交換の場としてフェイスブックのグループもあるが、管理が1人の個人になるので、こういったプラットフォームの方が良いだろう。


新型コロナウイルス危機での経済

新型コロナウイルスの影響により、2019年前半の経済成長率は前年比10%減少した。石炭と銅の輸出量が減少した。当初の国家予算は、22億トゥグルグの赤字であった。新内閣はこの予算を変更し、財政赤字はGDPの9.9%となるとした。パンデミック下における国民の収入、雇用確保についての国会令が4月29日に第21号命令として発出された。これにより個人、法人の所得税及び社会保険料が免除された。また失業保険基金から200万トゥグルグの現金が支給されている。モンゴル政府は今のところ、こういった経済対策を取っている。

先週、商工会議所で会議が行われ、モンゴルの大手企業の代表が参加した。彼らは、政府が予算の無駄遣いをしているという。当選した国会議員が地元で建設、調査という名目で事前調査、計画のない高額プロジェクトを実施している。建物や道路を建設すべきだという。

もう一つ経済学者が指摘する大きな問題は、債務管理が悪いことだ。財政赤字を債券発行でまかない、対外債務は再び国債を発行して支払うとしている。国内債券を発行し、政府の関与を高めるというのだ。問題は、現在債券を債券で償還する比率が非常に高くなってきたことだ。2002年にはわずか2.4%の金利だったが、今は10 %程となっている。借金の返済に借金を重ねていくと、いずれ破綻することになる。

では何をすべきか。案件の重要度により、歳出の順位付けするルールを作るべきだ。電子ガバナンスを普及させることで、政府の支出を減らし、至急解雇された2000人に再訓練を受けさせるべきだ。また電子ガバナンスを普及させることで、公共サービスの速度が上がる。これに伴い資金の流通量を上げる必要がある。特に、建築業は春以降、業務が停止した状態が続いている。借金返済ができず、信用収縮につながる可能性が高い。金融市場で信用拡大するための対策を取るべきだ。そのためには国有企業、国有銀行を民営化し、上場株式会社にすべきだ。

外国からの資金流入を促進させる機会を与えるべきだ。そのためには、モンゴルの信用格付けを上げるべきだと銀行関係者が商工会議所での会議中に主張していた。IT化を広く普及させるために情報通信業界でのビジネスを応援すべきだ。他にも観光業界を政策的に応援すべきだといった意見が出た。モンゴルは新型コロナウイルスの国内感染が確認されていない国として、旅行者の興味を引きつけるのではないかと期待されている。


自由市場と政府の規制

フレルスフ首相は「自由市場が存在しない」と発言した。首相は月曜日に外務省を訪問した。その際、「政府の対外債務は72億ドル、モンゴル銀行は20億ドル、商業銀行は22億ドル、企業の対外債務は182億ドルである。モンゴル国の対外債務の大半は企業によるものだ。だが企業の対外債務を担当する部署がない。現状では企業がモンゴル国を破産に追い込んでいる。自由市場だからという理由で政府、外務省はその事実を知らない。自由市場は存在しないと私は理解している。私は政府指導者であり、私の考え方はこうだ。今は政府規制による市場だけが存在する。誰もが好き放題にしていた自由市場は無くなったのだ。世界中どこでもそうだ。」と主張した。

来年はマザーライ債券の償還期限を迎える。これに政府はどう対処するのか。規制なき市場は格差社会を生んでいる。首相は自由市場というものはなく、政府による規制市場だけがあると言った。しかし、1990年、民主主義に移行したモンゴルは政治制度として民主化、複数政党制の確立、自由市場へ移行するとあらゆる公式文書に記載されている。

経済における政府の役割は2種類ある。一つは保護すること。権利の保護、安全の保護、財産の保護といった個人が1人では遂行不可能な保護機能を担う。もう一つは開発すること。企業が単独で大規模開発をすることは難しい。インフラ整備など国民がアクセス可能な環境づくりが必要だ。それを開発するために国民に税金を課しているのだ。

経済を規制するときは、営利目的のビジネスが国民の健康を害さないようにするため、環境破壊予防、独占防止のルールや基準を設け、実施されるべきだ。そのために、公正な競争を応援し、独占を廃止し、不公平な競争を排除しなければならない。企業に社会的責任を負わせ、権限の悪用を防止しなければならない。政府は民間部門にビジネスをする自由を常に提供すべきだ。企業の大中小、国内、海外等と差別することなく、公平な経済環境を作り、何らの負担もかけてはならない。政府規制とは、自由競争、協力ができる環境を提供することを指す。また、民間部門が担えるビジネスを国家が奪うことを止めるべきだ。

モンゴル国憲法第5条4項は、「国は、国家の経済的安全、すべての経済分野の発展、および人口の社会的発展を確保するために、経済を規制するものとする。」と規定している。モンゴル は、自由市場において自由な価格設定も出来ていない。政府は、価格をコントロールし、国有企業をつくり続けている。国有企業の事業内容も非公開だ。政府ではなく、民間部門が雇用を創出するものである。雇用を創出する民間セクターを応援しなければならない。国民が仕事に従事し、収入を得て、生活の質を向上させ、そして経済が成長する。

ダムバダルジャー・ジャルガルサイハン