世界のデジタル化
スイスに所在するIMD(International Institute for Management Development:国際経営開発研究所)が、毎年世界デジタル競争力ランキングを調査・発表している。直近では2020年に調査が行われ、世界63の国・地域のデジタル技術の活用能力を測定している。ビジネスのみならず、社会生活にも深く浸透し必要不可欠となったデジタル技術を、どのくらい活用できているかの国単位の指標となる。これにより、自国が世界の中でどのレベルにあるのかを知ることができる。
この調査で、日本は63カ国中27位となっている。これは世界第3位の経済大国としては少々情けない順位であり、アジア地区ではシンガポール(2位)、香港(5位)、韓国(8位)、台湾(11位)に大きく遅れを取っている。もし人口がそれらの国に比べて多いからというのならば、中国が16位になっているのだからそれは理由にはならない。現実、日本はこのランキングでマレーシアに次いで、ヨーロッパの小国ルクセンブルグの一つ上となっている。
菅内閣もデジタル庁の創設など、日本社会のデジタル化を進めようとする意思は感じられるものの、その歩みは遅いと言わざるを得ない。2月9日、政府はデジタル庁の設置法案を含む6つのデジタル改革関連法案を閣議決定したが、発足は9月1日を目指すという。日本は法治国家なので、もちろん法律を整備した上でデジタル改革を進めていくこととなる。
しかし日本の物事の進め方は、全てが整ってからスタートさせるというものであり、それは習慣として根付いている。半年以上も先の9月1日の発足を目指すという閣議決定も、全てを滞りなく整えようとする日本的価値観からきているし、国民の「政府の失敗を認めない」という不寛容な考えも影響しているのだろう。他国ではまず始めてみて、走りながら考えるという手法を取っている場合が多い。デジタルに限らず、世界と競う場合、スピード感の無さは致命的である。こういったことが先の競争力ランキングに表れている。
成功したデジタル政府として有名なのがエストニア(21位)だが、モンゴル(62位)でも近年、急速に政府行政サービスのデジタル化が進んでいる。世界の国々のデジタル化がどのように進められているのかを知り、日本に適した形で取り入れていく必要がある。
行政サービスのデジタル化に欠かせないマイナンバーカードの普及も、昨年の定額給付金の支給時に進んだとはいえ、普及率は24%だという。未だに多くの人がマイナンバーカードの仕組みを理解していないことが一つの要因として考えられる。これは政府による説明の仕方が下手だったことも事実だが、国民が自ら知ろうとしないことも問題である。
意思決定と実行のスピード、今までの慣例を疑い変革を追究する姿勢、そして失敗を許容する風土の醸成。これらが日本社会のデジタル化を進め、世界と渡り合える国になるために必要なことだと言える。
中山拓