モンゴルは1990年の民主革命以降、民主主義国家として多党制を採ってきた。民主党は、2000年12月に社会民主党や国民民主党など複数の政党が合併し結成された。

モンゴルの国会に当たる国家大会議(定数76の一院制)総選挙において、2004年以降の獲得議席数は下表のとおりである。

選挙年

獲得議席数

議員数順位

政権

2004年

34議席/76議席

2位

与党(連立政権)

2008年

28議席/76議席

2位

野党

2012年

34議席/76議席

1位

与党(連立政権)

2016年

9議席/76議席

2位

野党

2020年

11議席/76議席

2位

野党

民主党は2016年の国政選挙で大きく議席を減らした。理由は、それまで好調だったモンゴル経済が、当時政権与党だった民主党政府の失策により景気が低迷したことが挙げられる。モンゴル経済のピークは2011年で、GDP成長率17.3%を記録していた。それが2015年には2.4%にまで落ち、選挙年である2016年は1.2%と低迷した。これにより国民の民主党への信頼は一気になくなってしまった。また共産党時代を知る高齢者が、この不況時で人民党への支持を再び持ち始めたことも関係すると分析された。

日本も経済的に中国へ依存しており、チャイナ・リスクが問題となっているが、モンゴルは日本以上に中国に経済的に依存している。そのため、2015年の中国株の大暴落(チャイナ・ショック)により、中国への輸出が大きく落ち込み景気後退を招いた。これは中国への主な輸出品は石炭だったが、中国国内の鉄鋼需要が落ち込み、製鉄に必要な石炭の需要が下がったためだ。モンゴル政府も第三の隣国(主に日本やアメリカ)との関係を重視する政策をとってきたが、内陸国なので活発な貿易関係は築けていない(船舶や鉄道などによる大量輸送ができないため)。

2017年以降、モンゴル経済は回復基調にあったが、2020年は新型コロナの影響で経済成長率はマイナス7.3%となっている(2020年1月〜9月、出典:国家統計局)。一般的に景気が後退する中では国民も政権交代を望む傾向にある。だが厳格なコロナ対応で与党への支持率があがり、2020年の総選挙で人民党が圧勝した。これにより人民党政府が2024年まで続くこととなった。

このような状況で始まる2021年、モンゴルでは大統領選挙が行われる。民主党出身の現職バトトルガ大統領が再選を果たすのか。それとも国家大会議で圧倒的な議席数を有する人民党から大統領が選出されるのか(一部ではフレルスフ首相が大統領選に出馬すると噂されている)。それにより日本政府はどのようにモンゴルと関わっていくのか。日本企業がモンゴルでビジネスを展開していく上で、政府の外交方針はとても大きく影響する。

日本の要人としては、2020年10月に茂木外相がモンゴルを訪問している。フレルスフ首相やバトトルガ大統領を表敬訪問している。この訪問時の外相会談で、新型コロナによる経済的影響を受けたモンゴルへ250億円の緊急支援融資が決まった。日本政府はこういった関係を軸にモンゴル政府の独裁化を防ぎ(最近、与党人民党は国内での言論統制を強めており、報道の自由が日々奪われつつある)、日本とモンゴルのビジネスシーン拡大に繋げてほしい。モンゴルと関わる日本企業も、これからのモンゴル政府と大統領選の動向には注視していく必要がありそうだ。

中山 拓