モンゴルは輸出で稼いだ外貨の5分の1を海外からの石油製品の輸入に充てている。輸入先を見てみると、主にロシア94.5%、韓国3.4%、中国1.8%、その他の国0.3%となっている。全ての石油製品の消費量は1500万トンで、その内訳は軽油56%、オクタン価90以上のガソリン24%、オクタン価90以下のガソリン4%、ジェット燃料2%、その他燃料油、アスファルトの材料となる歴青、ガスなど13%である。
モンゴルの石油製品の消費量は、2007年以降の10年間で2.3倍に増加した。そのうち軽油2.6倍、ジェット燃料1.5倍、オクタン価90以上のガソリン3.3倍、その他は10倍となり、オクタン価90以下のガソリンだけが60%減少している。鉱業分野の開発に伴って軽油の消費量が急増している。ガソリンについては、最近の自動車にはオクタン価が高いガソリンが必要とされていることがわかる。
私たちは国際市場価格で石油製品を購入している。だから国内でのガソリンの小売価格は国際市場価格によって変動するはずだ。政府は国内のガソリン小売価格の上昇を抑制するために、2008年からガソリンに対して変動性の揮発油税となる“特別税”を導入し、税率をその都度変更してきた。輸入価格が上昇すると税率を引き下げ、輸入価格が下落すると税率を引き上げ、時には税率をゼロにしてきた。
政府は1994年からガソリン、軽油に揮発油税を課税しはじめた。法律では、揮発油税の目的は価格を制御するのではなく、“国が徴収する一般税である”と定められている。その意図は揮発油税による収入は、一般財源として社会的、つまり公共施設への投資である。
特別税で価格を制御しようとした過去10年の歴史を振り返ってみれば、実際には石油製品の価格を維持できなかった。さらに市場経済への政府の参入が大きくなり、財政の赤字を招いた。つまり“小銭に賢く、大金に愚か”といったところだ。
偽造ガソリンという表現
通過する国境検問所やオクタン価によってガソリンと軽油の1トン当たりの税率が異なり、トゥグルグで課税されてきた。国境検問所を通過する時点での市場価格が変われば、税率も変更してきた。だから過去10年で、特別税の税率変更に十数回も歴代の内閣が政令を出してきた。
また、前内閣はガソリン輸入業者のために外貨ソフトローンまで交付し、“価格維持”という非現実的なプロジェクトを実施した。その結果、ガソリン輸入業者は原油価格が下落している時でも小売価格を引き下げず、原油価格が上昇すると小売価格を引き上げるという、消費者には到底納得できない慣習が作られた。(ガソリン輸入業者にとっては)これは特別税が生んだ1つの“功績”である。
もう1つの“功績”は、最終製品とは見なされず特別税の対象外となる原料であるナフサ、アルキレート、メチルtert-ブチルエーテルなどを輸入し、モンゴルで精製して最終製品(ガソリン、ディーゼル燃料など)にし、市場に安価で供給している業者を生んだことだ。自由市場経済において、ビジネスは常に利益を追求するものだ。だからこれを機会にガソリン輸入業者との間で新たな競争が始まった。
ガソリン輸入業者の殆どが、モンゴルで精製したガソリンを自社のガソリンスタンドで販売している。一部大手企業は、自社の石油製造プラントを建設し、原料取引の持続性、製品製造について調査を進めている。
このような企業努力により市場に出回り始めた安価なガソリンについて、一部の人たちが「モンゴルで合成されたガソリンが販売されている。悪臭を放ち揮発性が高く、車のエンジンに悪影響を及ぼす偽造ガソリンだ」とマスコミを通じて積極的に喧伝している。彼らは「偽造ガソリンは400〜500のガソリンスタンドで販売されている。またオユトルゴイ、タバントルゴイ、チンファ・マック、ウスフ・ソース、ヒシグ・アリワン・インダストリアルなどの大手鉱山会社までが偽造ガソリンを購入している」と発表した。
通常、大手鉱山会社は、自社の高価な重機や機械に使う燃料を購入する際、検査機関で何段階にも及ぶ検査確認を行うものだ。そんな企業が安価だという理由だけで“偽造”ガソリンを使用するのか?それに今のところ、“偽造”ガソリンを使って車が故障したという声はどこからも上がっていない。
専門監察庁のエネルギー監察官T.ムンフボルドがあるインタビューで、「偽造と言われているガソリンを分析し確認したが、問題は見つからなかった。検査ラボの分析結果を根拠にする他に方法はないが、“偽造ガソリン”という表現は間違っている」と話していた。そして鉱業・重工業省は、ガソリンの原料となる化学物質も特別税の対象にする法案を国会に提出した。
ガソリン価格をどのように決めるのか?
国内で売られているガソリンの価格は、国際市場価格の他に為替レートにも大きく影響を受ける。だから必要に応じて特別税の税率をトゥグルグの為替レートの変動によって設定するのは合理的だと思う。例えば、1ドル2500トゥグルグの場合は1トン当たりの特別税を25万トゥグルグと定める。もし、1ドル3,000トゥグルグ、つまり20%上昇した場合は、1トン当たりの特別税を20%引き下げると定めれば、輸入計画が明確になる。トゥグルグ高になれば価格が下がるということだ。
もしくは、直接国境検問所での通過価格を定めることが適切である。なぜならば、如何なる価格も市場によって決定された方が、長期的には消費者にとって利益となるからだ。消費者は価格を事前に予測しやすくなり、加えてインフレ率を下げると期待される。
市場価格のみが消費者に現実的な情報を提供し、価格は何によって変動するかを消費者がわかるようになる。そうすると短期・長期における計画を客観的に立てることができる。政府による価格規制は、腐敗を拡大させ、価格は1日で乱高下するということを、私たちが歩んできた30年間の歴史から学ぶことができる。
私たちは全ての製品・サービスでなくとも、燃料やガソリンの価格は市場によって決まる様にしてもらいたい。そうすれば、ガソリン輸入業者の間で競争が生まれ、それがコスト削減に取り組むための刺激となり、ガソリン価格はより安定する。
もし、ガソリン輸入業者たちが裏で協定して価格を設定した場合は、その企業に対して月単位、あるいは四半期単位の売上に相当する罰金を科し、事業許可を取り消すまでの措置を講ずるべきだ。
特別税を定期的に徴収し、その収入を都市、地方の道路整備などに充てる。これが消費者のための真の行政サービスとなる。
ダムバダルジャー・ジャルガルサイハン