バトフー・ムンフバヤル氏は、モンゴル金融経済大学を卒業しました。またムンフバヤル氏はモンゴル科学技術大学でコンピュータ科学を専攻し、経営学大学院で情報セキュリティの修士号を取得しました。さらに、日本でプログラム・アウトソーシング・プロジェクトマネジメントを学びました。その後、ムンフバヤル氏はCRMC株式会を設立し、代表取締役となりました。またモンゴル人工知能研究所を設立し、所長も務めています。NEST高校顧問、GIZドイツ国際協力公社、司法システム顧問、アリグ銀行、ハス銀行情報技術部長、Mobicom Corporationマーケティング部長、システム管理者、T&C株式会社のゼネラルマネージャを歴任しました。

J(ジャルガルサイハン): こんにちは。新聞であなたの記事を読みました。そこで取り上げられた問題があなたの会社だけに限った問題ではなく、また入札だけの問題でもありませんでした。何千もの会社が入札に参加し、1つの会社が選ばれます。それがどういう流れで行われたかをあなたの会社を例に話したいと思います。まず、あなたはこう書いていました。「エルデネス・タバントルゴイ社で土砂の運搬作業が必要となり、一定の距離を超える場合はベルトコンベアで搬送する必要があります」と。これについて教えてください。

B.ムンフバヤル: こんにちは。コンベアによる土砂の搬送は、モンゴルでは比較的新しい技術です。エルデネス・タバントルゴイ社の社長であったD.アリウンボルドさんはCoal Mongolia(モンゴルで開催される鉱山に関する国際カンファレンス)の基調講演で「鉱山の土砂を運搬する距離がかなり長くなってきています。この解決策としてベルトコンベアの設置が効果的でしょう。」とおっしゃっていました。そこで、弊社はコンサルティング会社でもあるので、ベルトコンベアによる土砂搬送について調査しました。それがとても効果的であることが分かりました。それから、どのようにこれを設置すれば良いのか、2017年から3〜4年間に渡って調査を続けました。ベルトコンベアの設置は、ただベルトで土砂を運搬するだけではなく、3つのインフラが必要となります。まず、破砕機です。大きな石の状態では運搬に適していないので、細かく粉砕して100ミリほどの砂利にします。それから、5〜20キロメートルの距離をベルトコンベアで搬送します。最後に、建物で言えば5階の高さに匹敵する大きな鉄の構造物があります。これでヒープ(鉱山から出る土砂を山積みにしたもの)を作ります。このコンベアシステムは移動できる仕組みになっています。

J: 地上何メートルで搬送するのですか?

B.ムンフバヤル: 特定の高さが決まっているわけではありません。炭鉱のフィジビリティ・スタディを行い、ヒープ作成地の土地構造や年間排出量など、多くの要素を考慮して決められます。このように私たちは、エルデネス・タバントルゴイ社にコンベアシステムを提供するために色々と調べてきました。そして、2019年8月23日にフィジビリティ・スタディ作成の入札が告知されました。第一次選考を終えて、第二次選考の結果がつい最近発表されました。しかし弊社とのパートナーシップは断られました。その理由が、審査基準にない上、とても納得できないものでした。これに不服を申し立てているのです。

J: どの様な理由でエルデネス・タバントルゴイ社は断ってきたのですか?

B.ムンフバヤル: 2つの理由を言われました。一つ目は、入札書類をモンゴル語で提出していないとのことでした。しかし、私たちは入札書類をモンゴル語で提出しました。ただ、提出書類の中には、今まで行った業務を証明するものとして16通の中国語で書かれた契約書がありました。弊社のパートナーには中国のNHA社があります。モンゴルでのパートナーは科学技術大学の地質・鉱物学部です。そして、パートナーとの業務経験を証明するために、契約書あるいは業務完了証明書が必要だったのです。そこで、私たちは16通の契約書を、誰と、いつ、どこの鉱山で、どのくらいのボリュームでという内容をモンゴル語に訳して提出しました。その他の部分については、NHA社が提供してくれなかったので、入手は困難でした。長い時間交渉することになりました。

J: この業務を請け負うことができると証明する契約書なのですね。

B.ムンフバヤル: はい、請け負ったことを証明しているのです。ここ10年間で締結された契約書です。すると、エルデネス・タバントルゴイ社はその契約書を見て、これを英語、モンゴル語に翻訳していないという理由で拒否しました。もう一つの理由は、プロジェクトマネージャーの資格認定証の有効期間が切れているとのことでした。私たちは2つの資格認定証を提出しました。一つは、モンゴル国コンサルティングエンジニアの資格と同様の、勤続年数によって付与される最上級の資格認定証です。

J: その資格認定証はモンゴルのものですか?

B.ムンフバヤル: これは中国側のシニアエンジニアの資格認定証です。もう一つは、エンジニアリングプロジェクトマネージャーの資格認定証です。これは有効期限があったようですが、私たちはあまり注意を払っていませんでした。評価も重要性も低いものだからです。しかし、最上級の資格認定証、一番重要なものについて彼らは目も向けませんでした。これは修士号を取得している人に学士号を持っていないと言っているのと同じです。こういう浅はかな理由で入札を認められませんでした。モンゴルでは年間7000万立方メートルの土砂を運搬していますが、いままでコンベアによる土砂の搬送は経験がありません。3〜4年調べていくなかで、モンゴルの研究者たちと会い、話し合う中でこういったことが分かりました。そこから私たちが最も重要だと考えることは、この入札が終了して、モンゴルにノウハウや技術が残るべきだということです。

J: 他の企業も入札に参加していますよね?

B.ムンフバヤル: 参加しています。自己の利益のみを考えたら、自社にこのノウハウを保持することは可能でした。しかし、私たちは自分たちのことだけを考えず、大学と協力しました。大学は教育の場であり、今後このコンベアシステム、このプロジェクトで活躍する人たちは、大学の研究者や教授たちです。フィジビリティ・スタディの作業が終わったら、モンゴルにそのノウハウ、少なくとも計算や調査ができるような知識、能力が残るべきです。そして、大学の先生から学生に、その後々に受け継がれていくべきです。

J: 今回のあなたの会社に限らず、基本的に入札に参加する場合、その審査過程において今後どうすれば良いと考えていますか?

B.ムンフバヤル: はい、私たちがこうして世に訴えているのは、ただ入札審査に合格できなかったからではありません。合理的な理由を示した上での審査判断であったなら、私たちも抗議することはありません。不適切だと思うから、不服を申し立てています。この抗議がどこまで行って、どのような結果になるかを最後まで見極めたいと思っています。これは別として、私が今日あなたとお話したいと思ったのは、今回の私たちのケースは氷山の一角に過ぎないと思うからです。しかし、1日に何千もの入札が行われています。少し調べてみると、2019年度の入札結果に対する不服申し立ての統計がありす。昨年度1100件の不服申し立てがありました。これはモンゴル大蔵省のウェブサイトで確認することができます。2018年度のものも見たかったのですが、年間統計がなく、3ヶ月間の統計でした。1100件の不服申し立てを営業日で考えると、1日に6〜7件の不服申し立てがされているということです。その解決状況も確認しましたが、大蔵省は入札発注者が正しいとするものもあれば、入札審査に何らかの不正があったとし、再入札を命じたのもあります。一方、入札自体を無効としたのもありました。その中でとても気になるものがありました。それは「その他」という名目です。どのように解決されたのかは不明です。

J: 「その他」の数は多いのですか?

B.ムンフバヤル: 少なくはありません。はっきりした割合は分かりませんが、数は多いです。なぜ「その他」とされたのか、疑問が生じます。大蔵省の上記調査内容をもっと明確にする必要があります。今は、いつ、どの機関が発注した入札で、誰が不服を申し立てたのか。そして、どのように解決されたかだけが掲載されています。なぜそのように解決したのかがわかりません。これについて一般には「入札法」と言われる、国家及び地域基金による物品、作業及びサービスの調達に関する法律の一部を改正すべきではと思います。特に、国有財産が関わっている大企業は、入札法の規定に従う際、我が社のケースのように軽微な理由を用い、法律に定められていない根拠で不合格としているということは法律に瑕疵があるということです。そしてこのような不適切な審査に対して、どのように責任を負うかも不明です。時間があまりなかったので十分な調査はできていませんが、次はここ5年間で入札法によって国家による不正審査に対する制裁、処罰に関して調べたいと思っています。責任を追求しなければ、不正を働いた国家機関は健全にはなりません。

J: 責任制度がなく、どのようにして解決されたのか不明。ただ「そう解決しました」とだけあるわけですね。法改正となると、具体的な提案などありますか?審査基準や審査員に関してなど、何を変えたいと考えていますか?

B.ムンフバヤル: 法改正に関する具体的な提案はあります。しかしその前に、社会制度について話しておきたいと思います。私たちは民主主義の社会に生きています。私はこれまで数多くの本、研究成果、論文などを読んできました。そこには、民主主義は無責任な状況を生み出すと書かれていました。では、どうすれば無責任さを無くすか。市民社会が組織として強くなければなりません。国民は団結しなければなりません。しかし、モンゴルの現状について見ると、モンゴルには2万2千の非政府組織があるとのことです。その中で実際に活動しているのが220だとか。非政府組織が何か訴えて活動しようとすると、市民はそれには積極的に参加せず、テレビやスマホの向こうから無責任に参加します。全く関心を持たない人もいれば、関心を持った人でもただ批判するだけです。大事なのは、非政府組織は存在し、強力であり、戦うべきです。そして国民や企業は自由に発言すべきです。以前から、周りからもたくさん国の入札に参加するのを止めたということを聞いてきました。なぜなら、各段階で賄賂を贈る必要があるし、贈らなかったら入札に合格できない。だが贈ったら利益が無くなるからだそうです。私たちが暮らしているのは自由市場です。消費財の生産は競争が激しいです。値段も生産費用を含めた価格で付けられています。しかし、その上にまた賄賂の分も加えないといけなくなるわけです。民間企業は、ここまでして入札に参加したいという意思もないし、チャンスもありません。

J: それが、会社が倒産し失業して韓国へ移住していることの大きな理由であり、つまり腐敗がその費用となるわけですね。

B.ムンフバヤル: はい、そうです。これは無責任さの問題です。審査に関わる人々も結局は人間です。なぜその人たちは適切に仕事をすることができないのか。私たちは30年間、この社会の良くない点を見てきました。今は比較的、政治は清廉になろうとしているように見えます。ですから政治と経済を混同することなく、それぞれの道を歩むべきです。現状はこうです。政治権力者は国有財産を使い、入札を告知し、それがその政治家の収入源を作り出す道具になっているわけです。このプロセスに参加しているのは、誰も同じモンゴル人です。なぜ不正行為をするのでしょうか。個人が自身のとる行為の意味を理解しなければなりません。政治はクリーンになりつつあります。今は国有財産を有する政治家、企業の権限を持つ者、入札審査委員会の審査員など、各段階で正しくその業務を遂行する必要があります。不正をはたらく者を国民が見ています。公正な入札制度とは全く新しいものではありません。言ってみれば、一つ壁の向こうにあります。業務がとても正常な民間企業もたくさんあります。入札を行う企業もそれを見習うべきです。

法改正に関する具体的な提案ですが、今のところ5つあります。まず、入札審査委員会のメンバーを公表すべきです。審査員の氏名は秘匿されなければならないという入札法の目的は分かります。なぜなら、氏名が公開されると賄賂を贈ろうとする者の影響を受けることになるからです。しかし、現実を見てみましょう。その入札の審査員が誰であるかみんな知っています。たまに自分が審査員であることを自ら公表したがる者もいます。ですから審査員の氏名を公表すればいいのではないかと思います。氏名が秘匿されている場合、不正を働きやすいですが、公表されるとまず自分の名誉を考えることになります。次に、入札審査会議の議事録を作成すべきです。オーディオ録音、文章の形で、審査の場にいる者が署名をして議事録として保管します。この議事録も公開すべきです。そこに隠すべきものなどありません。それから、採点表というものがあります。審査員がそれぞれの基準ごとに点数をつけます。この採点表も公開すべきです。また、審査委員会独立メンバーをたてることです。審査委員会の構成員の人数によって決定されますが、1人か2人置きます。この人たちをどのように選定しているのか。これも公開すべきです。専門知識が必要な入札の場合、審査委員会メンバーに専門家を入れるべきです。もちろん、利害関係のない会計や法律の専門家をメンバーに入れるのは当然のことですが、しかし、その役割を担当し、審査をする者の参加はとても少ないです。そして、彼らの参加無しに多数決で悪い決断がなされ、その決断に対して審査員たちが責任を取っているかも不明です。

私は以上の5つの提案をしています。この中に秘匿されるべきものはありません。もちろん個人情報も含まれていますが、それだけを取り除けば問題はありません。あるいは、書類を提出する際にその部分だけ隠せるように指示すれば済みます。こういった風に私たちは取り組んでいます。最近、探査ジャーナリズムもこのことについて積極的に取り組んでいます。ですがジャーナリストは問題を指摘し、表面に出しておくだけです。そして、その問題が解決されるまで戦うのが市民社会です。現実にはそれがなかったり、あっても市民がその活動に無関心であったり、理解もせず注意も払わない状況です。ですからこの問題の解決には人々の参加が重要です。

J: あなたが今日、ここで話したことは大勢の人の関心を引くでしょう。国家はモンゴル国の経済において大きなプレーヤーです。そして国家のプロジェクトは入札という方法で行われなければなりません。あなたは今、入札制度、プロセス、関係者にこれらの問題があると言いました。この問題を解決しなければ、経済は良くなりません。何も生産していない人たちが、何らかの理由で報酬を受けています。それから、不正に得た利益がまた経済の流れに入る時、それは自然な経済の流れに沿わないわけです。その結果、失業者が増えています。能力がなくて、入札に合格していないわけではありません。一方、例えば門外漢の企業が道路を建設することになります。そして、下請け企業に業務を任します。この段階の数が増えれば増えるほど、予算は減っていきます。結局、被害を受けるのは国民です。きちんと整備されていない道路を走って人が死にます。こういったことからも市民社会の参加は果たされなければなりません。ただ、どのように参加を訴えるかについては、まずその分野での組織をより積極的に参加させようとする意見があります。これについてどう思いますか?

B.ムンフバヤル: そういう見解や良い経験もあります。それをどう導入するかです。例えば、国家権力の一部を譲り受けた、政治関連の企業が組織に入ってきて、その組織をいわゆる大きなマフィアシステムにしてしまうことがあるようです。ですが、普通の民間企業はそれに対して戦うべきです。戦わなければ、被害を受け続けることになるからです。

J: その分野での組織に関してプラス・マイナスの要素はあると思いますが、方針としては組織が積極的に取り組むべきだということです。その他に、例えばヨーロッパ諸国はそれぞれの地域に商工会議所があり、全ての民間企業が商工会議所に加入しています。こういう制度にしたら、より透明になるのではありませんか?

B.ムンフバヤル: 同感です。商工会議所制度に移行してもいいと思いますが、情報が非公開である場合、また同じ問題が発生します。ですから先ほど言ったように、情報を公開すべきだと思います。全てのキーは情報公開にあると思います。

J: 民主主義は無責任さを作り出します。かといって民主主義を諦めてはいけません。そしてその欠陥を埋めることができるのは市民社会です。市民社会は国家の透明性、責任を追求します。人類はそこまでは考え出しましたが、私たちはそれを実現できていなく、ただ選挙に振り回されているのみです。もっと核心的な部分に入っていくべきだと強く思いました。今日はお話をありがとうございました。

ムンフバヤル * ジャルガルサイハン