全世界が新型コロナウィルス感染症と闘いはじめて8ヶ月が経っている。人類は新型コロナウィルスのために健康だけでなく、仕事や日常生活においても損害を被っている。現在、世界中で2,000万人以上が新型コロナウイルスに感染し、74万2000人が死亡している。全世界の感染者のうち、アメリカ合衆国の感染者数は4分の1に当たる500万人となっている。 各国は広範囲において新型コロナウイルスとの闘いに尽力している。現時点では、モンゴルの感染者数は297人であり、そのうちの269人が回復しており、死亡者は出ていない。感染が確認された人たちは、全員外国からの帰国者であり、そのうち外国人は3人、他は全てモンゴル人である。

保健省は新型コロナウイルス感染症についての注意事項を1月上旬に公表した。4,709kmの長さで国境を接する中国とのすべての検問所を2月中旬に封鎖した。その後すぐに国境を完全封鎖し、全ての出入国を制限した。

人権問題

政府の国境封鎖の突然の決定は、外国にいた多くの旅行者や留学生などの若者を足止めすることとなり、それは家族を離れ離れにし、帰国できない状況に追い込んだ。政府は50回に及ぶチャーター便を運行しており、国境封鎖以降49ヵ国から16,000人の自国民を帰国させている。世界中で新型コロナウイルスの感染拡大が収束していないため、3月に入ってからは外国にいる3,000人のモンゴル人が帰国申請をしていた。この数は8月に入って11,000人に増加している。 MIATモンゴル航空は今まで就航したことがないアメリカ合衆国やオーストラリアなどの国々へもチャーター便を飛ばした。

多くの外国の都市では数百人ものモンゴル人がお金や泊まる場所もなく、厳しい状況下で日々を過ごしている。そのため、国民はモンゴル政府に対して外国にいる自国民への緊急支援と速やかな帰国を求めている。彼らは団結し、「外国に足止めされたモンゴル人たち」という運動を起こしている。

この運動は、過半数の利益を守るために少数の基本的人権を侵害していると主張している。世界人権宣言13条2項には「すべての人は、自国その他いずれの国をも立ち去り、及び自国に帰る権利を有する」と定められている。モンゴル国憲法では「非常事態宣言時には人の移動する権利を法律に則って一時的に制限することができる」と定められている。

しかし、モンゴルでは非常事態宣言が出されていない状況である。「外国に足止めされたモンゴル人たち」運動は、政府に対して資金がないのであれば、支出を節約し、無駄な支出を控え、仏像などの建設を延期させ、外国にいる自国民を迅速に帰国させるよう要求している。この要求には全国民が賛同している。

発展途上国の難題

政府も自国民をできるだけ迅速に帰国させることを目指している。以前よりチャーター便の運行本数を増やし、相手国の政府にも支援を要請している。政府はチャーター便で難病を患う人、妊婦、乳幼児を持つ女性、高齢者を優先的に帰国させる方針を採っている。チャーター便に乗る前に名簿を作成し、新型コロナウィルスの検査を実施し、飛行中に乗客の状況を監視し、帰国後は21日間隔離し、感染者を治療している。隔離期間は他国のように14日間ではなく21日間となっている。さらに14日間の自宅療養を要請している。その理由は、帰国後18日目で感染が確認された人が少なくないからである。

多くの帰国者を同時に隔離する宿泊施設が不足しており、特に感染した人に治療を行う専門の病床が少ない。モンゴルには国立感染症研究センターという唯一の専門病院があり、そこの病床数は250床である。この病院の隣には、新たに60床を確保できる病棟(Bio Safety Lab Level3)の増設工事が行われているが、工事は5年も続いている。もし、新型コロナウィルスの国内での感染が確認され、他国のように数百人規模で感染爆発すれば、感染症専門の唯一のこの病院は310人しか受け入れることができず医療崩壊を招く。言うまでもなく国や都市、県、区の病院は全力でこの危機に当たるだろう。それでも病院は人材確保と養成を行わなければならない。

現在、24時間働いている医師は200人おり、その半数は最近になって感染症についての研修を受けている。医療関係者は少ないながらも病院や飛行機の中で防護服を着て、長時間忍耐強く、全力で仕事をこなしている。彼らに私たちは心から感謝している。

モンゴルに帰国した人たちは、隔離施設の宿泊費や食費として、1日当たり50,000トゥグルグ(17.5米ドル)を支払っているが、これは実際に必要となるコストを回収できるものではない。また隔離専用ではない一部の施設の環境が悪いことも指摘されている。そのため、隔離施設をその環境で区分し、それに見合うように料金を柔軟に設定し、その人が隔離施設を選択できるようにすべきである。そうすれば、ホテルなども隔離施設として積極的に支援することができる。

個人や企業による、寄付を募るボランティア活動が見られるようになった。国家非常事態委員会は74億トゥグルグの寄付金を受け付け、その使途を公表した。国民は保健省に対して7億7500万トゥグルグの寄付金、外国からの支援金を何に使ったかについて、報告書の公開を待っている。

政府は一部の投資を中止し、医療保険分野への予算を1,180億トゥグルグ増やした補正予算案を2020年度会計に計上する案を国会に提出している。 外国に足止めされた人々や、国内にいる人々は現状を正しく認識し、感染から自分を可能な限り守り、さらなる感染を防止することはすべての人の義務と責任になっている。

ダムバダルジャー・ジャルガルサイハン