現在、日本で主流の通信ネットワークは4G LTEである。LTEとは、Long Term Evolutionの頭文字を取ったもので、それまでの3G(10Mbps:10メガビットパーセコンド、1秒間に10メガビットのデータを通信する。)よりも15倍と、飛躍的に通信速度が向上した。昨今、報道でもよく耳にするようになった「5G」は、さらに高速・大容量、低遅延、多数同時接続という特徴を備えている。それぞれを見ていくと、高速・大容量では、5Gの通信速度は4Gの100倍となる20Gbps(20ギガビットパーセコンド、ギガはメガの1000倍なので桁が変わる)で、動画のダウンロードなどが劇的に速くなる。低遅延では、4Gの遅延が10ミリ秒だったのが、5Gでは1ミリ秒と10分の1となる。遅延が少ないことで、リアルタイムに情報を処理する必要がある自動運転や、遠隔医療手術などが可能になる。多数同時接続では、1平方キロメートルあたりの接続デバイス数が、4Gでは10万台だったのが5Gでは100万台と10倍になる。スタジアムなど人が多く集まる場所でもストレスなくスマホがネットに繋がるようになる。

こうした5Gのメリットを支えるために、無線の電波周波数帯に「ミリ波」と呼ばれる28GHz帯が使われる予定である。4Gが3.6GHz以下の周波数帯を使用しているので、かなり高い周波数帯を使うことになる。周波数は、電波が1秒間に何回振動するかで、数字が高いほどより多くのデータを通信できるが、伝送距離は短くなる。つまり、5Gの繋がる範囲を確保するためには、今よりも多くの携帯基地局を設置する必要があり、その分費用もかさむことになる。そこでau、ソフトバンク、楽天は基地局の共用を検討している。また、伝送距離を伸ばすためにビームフォーミングという技術も用いられる。これは、特定の方向(利用者のいる方向)へ電波を向けて、より強く遠くまで電波を飛ばす技術である。このビームフォーミングを動いている対象へ向け続けることで、車の自動運転が可能になる。物流業界では、トラックドライバー不足の問題を解決する手段として期待されている。

当然ながらインフラ側が5Gとなっても、利用者側が5Gに対応しなくては、この次世代通信技術の恩恵は受けられない。日本ではiPhoneのシェアが5割以上となっているが、いまのところAppleは5Gに対応したiPhoneを発売していない。また、通信できるデータ量が飛躍的に増えるということは、それだけ端末側での処理が多くなるため(=消費する電力が多くなるため)、電池を大容量にしなくてはならない。端末側のアンテナも移動しながらでも通信が途切れない構造とするため技術的なノウハウが必要となり、今までのようにどのメーカーでもスマホを作ることができるとはいかない。

5Gの商用サービスは、既に今年4月にはアメリカと韓国が5Gのサービス開始で「世界初」を競い合った。日本ではドコモ、au、ソフトバンクが2020年から正式に5Gの商用サービスを提供する予定である。2019年9月にはプレサービスを開始している。また楽天も通信事業者として新たに参入し、2020年には5Gのサービスを提供する予定である。

中山拓