今までモンゴルは国内で消費される燃料・ガソリンを隣国であるロシアに依存してきた。国が発展するにつれ、移動手段や機械設備が増え燃料需要が増加してきた。現在、私たちは外貨収入の4分の1に当たる15億ドルを燃料・ガソリンに費やしている。少し前まで、私たちはロシアが提示した価格で燃料・ガソリンを購入する他に選択肢はなかった。しかし、2015年にシンガポールのガソリン市場価格に基づいて取引をするようになり、燃料・ガソリンの輸入に予測が立つようになった。このシンガポール市場価格による取引の契約期間は5年間と定められていた。この契約期間が来月終了するため、更新するようにロシアと交渉するようだ。

問題なのは、私たちは燃料・ガソリンを外国からドル建てで購入し、国内にはトゥグルグで販売していることである。これが為替レートに影響し、貿易収支が赤字になり、消費財の価格を上昇させ、インフレを助長している。

ガソリンの調達を外国に頼ることなく自国で生産するために、石油精製所を建設することを私たちは長年望んできた。これが今回、ドルノド県の油田発見により、一層現実味が増した。

2015年5月、インドのナレンドラ・モディ首相がモンゴルを公式訪問した。その際、インド政府はモンゴルの経済発展のために10億ドルの融資をモンゴル政府に約束した。この融資を受け、モンゴル政府は2017年2月、石油精製所を建設する決定をした。

消費者へのガソリン供給をより身近にすることや、その他の条件を考慮して、石油精製所をドルノゴビ県の中心地となるサインシャンド市から18㎞に位置するアルタンシレー郡に建設することになった。この石油精製所は、年間43,000トンの液化天然ガス、34万トンのガソリン、82万4千トンの軽油、8万トンの航空機燃料、4万7千トンの灯油、合計で135万トンの石油製品を生産し、モンゴルの国内需要を満たすとされている。原油は、ドルノド県にあるトソン・オールⅪⅩ油田、タムサグⅩⅪ油田から調達するようだ。

石油精製所建設プロジェクトの進捗状況

石油精製所建設プロジェクトのために、モンゴル政府は国有企業「石油製油所」を2017年4月に設立した。また同年8月には、石油精製所建設の実行可能性調査(feasibility study)を実施するため、石油精製所建設に関して実績のある「Engineers India Limited社」をコンサルティング企業として選定した。さらに、外部監査役としてイタリアの「Kinetics Technology社」を参入させ、調査を開始した。

2018年11月に詳細な実行可能性調査が終わり、鉱業・重工業省の鉱物資源専門委員会で審議を経て石油精製所建設が承認された。2019年5月に具体的な設計図面の作成を開始した。

2019年11月現時点で、モンゴル開発銀行からの融資2,460億トゥグルグでサインシャンド市から石油精製所までの総延長17.5㎞の貨物用道路、総延長27㎞の鉄道、110キロワットの送電線及び変電所を建設した。また、150ヘクタールの石油精製所の建設予定地を整地する工事も始まっている。さらに、石油精製所で働く従業員向け550世帯分の集合住宅をサインシャンド市に建設中である。来春には、総延長42㎞の水道配管の建設が始まる予定である。 この大規模な石油精製施設には、技術的設備の他に大型貯蔵タンク、原油輸送設備、送電設備、そして発電所も含まれている。

石油の輸送方法

現在、早急に決定すべき基幹業務は、原油を550㎞も離れている油田からどのように輸送するかである。政府は鉄道建設、もしくは石油パイプライン建設という2つの選択肢から選ぼうとしていて、これに対する政治家の意見が分かれている。

鉄道建設に賛成している政治家たちは、モンゴルはロシアを通って海外に輸出する新しい道を作ることを目指している。また、数百万ドルにもなる融資を受けるので、多種多様な物品を輸送できる鉄道貨物が妥当だと言う。しかし、石油パイプライン建設に賛成している政治家たちは、石油パイプラインの方が早くて確実であり、継続的な供給を可能にすると考えている。また、コスト的にもパイプラインの方が鉄道建設より3分の1も安く、工期も短くてすむ。石油のみの輸送において、最も一般的で普及している方法はパイプラインだと言う。

タムサグ油田の原油の特徴は、相対的に軽く(0.845g/cm3)、硫黄含有量が非常に少ない(0.11%)。また、原油の中に含まれる酸価(TAN:0.052 mg KOH/g)が少ないため、石油精製所の建設コストを節約できるメリットがある。だが、パラフィン性炭化水素化合物の含有量が多く、マイナス24℃で凍結するため、鉄道の場合はヒーター機能付きのタンク、パイプラインの場合は連続加熱が必要となる。

また鉄道の場合、80両の列車から積み降ろしができる設備を建設するには莫大な費用がかかる。それに対しパイプラインの場合、加熱パイプラインの建設実績があり、自己資金でパイプラインを建設して引き渡したいという企業は既にある。国有企業の石油製油所の試算によれば、パイプライン建設に3億5千万ドルの資金が必要であり、工事期間は2〜3年という。それに対して鉄道の場合は6億6千万ドルの資金が必要であり、工事期間は不明ということだ。 輸送費について、パイプラインの場合は1トン当たり7ドル、鉄道の場合はその2倍になるという試算もある。石油精製所の建設工事は2024年11月に完了し、稼働しはじめる。その6ヶ月後には生産が軌道に乗るとの見通しである。だから、モンゴル政府は選択を急がねばならない。

原油埋蔵量

社会一般から聞こえてくる「次の疑問」は、モンゴルの石油埋蔵量がこの新しい石油精製所の能力を満たせるかということである。鉱物埋蔵量データベースの登録情報によると、探査が実施された2つの油田(ドルノド県に所在しているトソン・オールⅪⅩ、タムサグⅩⅪ)の2010年時点での埋蔵量は、3億3260万トンであり、そのうち確定利用埋蔵量は4,320万トンだとされている。既に820万トンを採掘しているが、今後埋蔵量が増える可能性が高い。

先月、マタドⅩⅩ油田から石油が発見され、事前調査で2,500万トンの埋蔵量があることが確認された。他にも多くのボーリング調査が行われており、さらに油田が発見されるかもしれない。石油探査活動を拡大させる必要はあるが、探査活動のためのエネルギーや人手が不足し、さらに地方自治体、地方住民の反対を受け、探査活動が停止になるケースが多くなっている。

現在、モンゴルの石油を中国企業が採掘している。モンゴル政府と中国政府が締結した化石燃料を融通し合う契約に基づいて採掘が行われ、採掘された石油の4分の1がモンゴル政府に提供される。また、モンゴル石油法第7条1項6には、「モンゴル国内に石油精製所が建設された場合、政府には油田保有者に対して優先的に市場価格で原油を購入する優先権が与えられる」と定めてある。つまり、油田保有者は、石油を市場価格で優先的に国内の石油精製所に供給する義務があるということだ。政府関係者は、石油精製所に原油を供給するリソースと法的環境が既に整備されているとみている。 とにかく、私たちは石油・ガソリンを確保するために独立した道のりを歩み始めている。もう後戻りはできない。

ダムバダルジャー・ジャルガルサイハン