モンゴル国が民主主義の道を歩み始めてから今年で31年になる。民主主義体制へと移行した当時生まれた若者は、現在31歳になっている。モンゴルでは18歳で選挙に投票できるようになるため、31歳の若者たちは、今まで大統領選挙4回、国政選挙4回、合計8回の自由で民主的な選挙を経験しているということになる。これには地方選挙は含まれていない。

しかし、この世代の若者たちはこれまで選挙に完全に参加できただろうか?参加できていなければ、その原因は何か?この問の答えを探るため6月9日に行われたモンゴル国大統領選挙を実例として見てみよう。

大統領選挙に投票できる有権者2,041,985人のうち59.35%にあたる1,210,628人が投票した。法定得票数を満たしたため、選挙は有効と判断された。投票した120万人がモンゴル国民330万人の将来、どのような社会的、経済的、政治的環境で生きていくかを決定したということである。

では、投票した59%の年齢や性別、そしてどの世代の代表が多く、又逆に少なかったかを見てみよう。

LEADモンゴルプログラム卒業生連盟は、今回の大統領選挙で選挙委員会、国家登録庁と共同で有権者の投票行動に関する情報を12の世代に区分し、性別ごとに詳細に調査した。過去2度の選挙では、投票率について18〜25歳、26〜40歳、41〜55歳、56歳以上という4つの年齢層にのみ区分されていた。

全国で投票率が最も高かった世代は、65〜69歳(77%)だったのに対し、最も低かった世代は20-24歳(44%)および25-29歳(46%)だった。20代の若者の投票率が他に比べて低くなっている。

 

若者の投票率が低い原因は何か?

1.戸籍

有権者が投票する際は、必ず身分証明書に登録されている住所の地区で投票しなければならない。20代は全人口の中で最も流動的な世代である。彼らは就学、就労、生活環境を求め移動しているため、身分証明書に登録された住所にいないことが往々にしてある。例えば、住民登録がウランバートルのBさんは、鉱業電気技師として大学を卒業し、ウムヌゴビ県に所在するある鉱山会社に就職した。大統領選挙の投票日に仕事の都合でウランバートルに行くことができなかったため、投票できなかったという。また、Tseさんは地元で仕事が見つからないため、奥さんと一緒にウランバートルに一時的に移住してきた。いつかは地元に戻ると考えているため、住民登録した住所を変更していない。そのため、彼らも投票できなかった。

大統領選挙の投票日は、選挙年の6月最終週の平日に行われる。この6月下旬は、大学の授業は終了していても試験や書類手続きが終了していない時期で、大学に在籍する147,300人の学生がウランバートルにおり、地元に帰省していない。彼らが学校関連の書類手続きが終わり地方に帰る頃には、選挙はすでに終わっている。したがって関連する政府機関は、有権者が現在居住している場所で投票できる機会を確保するよう努める必要がある。国家登録庁は、恒久的な有権者登録システムを確立し、定期的に更新される仕組みに移行しなければならない。つまり、選挙の行われない年でも、18歳以上の有権者登録が常に維持されるようにすべきだ。毎年更新され整理された台帳は、選挙年には選挙関連の政府機関が利用できるようにオープンかつシンプルであることが重要である。

2.政党、政治家のリーダーシップ

民主的で自由な選挙で選ばれた政党が国家権力を得る。政党とは、政治的権力を獲得するために自分たちの価値観や政策の一致から団結した人々のグループをいう。共和党国際研究所(IRI)が2020年にモンゴルの若者を対象に実施した調査では、若者の間では政党への信頼度が非常に低いことがわかった。これは、政党の政策やイデオロギーが現代社会には合わず、若者のニーズを満たしていない。つまり基本的に若者に支持されていないということである。

またデファクト研究所は、政党の内部民主主義について毎年調査を実施してきた。2020年の調査では、二大政党と言われる人民党と民主党の内部民主主義が失われ、「半民主主義」という結果となった。若者は、民主主義が確立されていない政党を信頼し、彼らの活動に関心を持ち、支持したいと思うだろうか。

このようなことから、政党から国家大会議や大統領選挙に立候補する政治家に対する若者の信頼は薄く、政治参加の意思が低い傾向が見られる。若者たちは、「個人的な利益を優先しない道徳心を持ち、人々の苦しみに共感でき、仕事に対して誠実な姿勢を貫く」倫理的で謙虚なリーダーシップを政党に期待している。リーダーシップに対する人々の信頼は、変化をもたらす強力な力となる。

3.経済と生活の質

大統領選挙では、バヤンゴル区の有権者の約67%が投票し、他の区をリードしたのに対し、ナライフ区の投票率は59%と低迷した。この2つの区の2019年の競争力指数を見れば、バヤンゴル区2位、ナライフ区8位となっている。こういったことから、生活の質や経済的困難は、政治参加に悪影響を与えているのではないかと結論付けることができる。

4.平等とアクセシビリティ

民主選挙の重要な原則の1つは、選挙は普遍的であるということである。したがって、すべての有権者は選挙に参加し、投票機会を与えられなければならない。しかし、障害のある人々の参加を明らかに制限した投票所が存在する。2019年時点で、全国には10万7000人の障害者がおり、そのうち20〜34歳は2万1700人(20%)、35〜64歳の世代は6万4400人(61%)である。すべての投票所はバリアフリーでなければならない。だが下の写真を見て分かるように、バリアフリーとは程遠い。これでは誰かに助けを求めることを気にして、投票所に入れなかった人がどれだけいただろうか。

では、何をするべきか?

市民の政治参加は民主主義の基礎である。参加するということは、選挙の年には自分の信念で誰にも影響を受けることなく投票することだ。また選挙のない年でも、政府を監視し、意見を表明すること。次の選挙で誰に投票し、誰に投票しないか、自分の考えを持つことである。そのため、選挙を実施する政府機関は、若者の選挙への参加を制限している問題を解決するために積極的に取り組むべきである。

更に2016年の国政選挙では、18〜25歳の若者の投票率は50.8%だったが、2020年では62%に増加した。これは若者に対して投票を呼びかけた市民社会の運動やキャンペーンの効果だという見方がある。例えば、「投票した」、「投票を売らない」、「見本と間違い」、「私に1つの提案がある」、「障害のある有権者」、「ミノ・ホタ」、「若者は選挙の公約を監視する」、「1つ増えた」などの市民社会運動、若者の団結運動がある。このような運動は、実例を示し若者へ政治参加を呼びかけた。全員が同じ船に乗っているという意識が重要で、政治は改善することができ、投票することはそれほど面倒なことではないと訴えていた。

投票日、若者たちは民族衣装のデールを着て投票所に行き、投票し、自分の社会参加をSNSで共有するようになっていた。しかし、今年の選挙ではSNSも制限された状況となった。

若者の政治参加を促す運動やキャンペーン活動は、投票行動を促す呼びかけであるため、若者のイニシアチブを支援し、政府と市民社会が協力する必要がある。

若者が投票できる機会を確立させよう。

ガンバートル・ジャブズマー