ドル高トゥグルグ安が進行している。これは過去30年間続いている現象で、市場に出回っているトゥグルグよりドルが少ないということだ。モンゴルは産業機械、自動車、生活全般で使われる日用品を外国からドル建てで輸入している。2018年の輸入額は前年より40%増加している。私たちは外国に石炭、銅、鉄鉱石などの鉱物資源を輸出し、外貨ドルを得ている。今では、輸出と輸入の額に差がない。つまり貿易収支はわずかながら黒字になっている。

しかし、国際収支は赤字になっている。この国際収支について政治家たちはあまり話そうとしない。理由は、国際収支を赤字にしているのは彼ら自身だからだ。モンゴルが外国に返済する負債の増加、外国からの直接投資の減少が赤字を生み出している。国際収支が赤字となるとトゥグルグは下落する。

モンゴル政府の国債発行額はGDPの70%に相当している。政府はドル建てで国債とその利息を支払っている。政府は外国投資を増やすどころか、外国からの投資の機会を逃している。

負債の増加は財政赤字に原因がある。しかし、政府は毎年、間違った予算計画を立て、実際の歳出が計画を上回ることが多い。歳出が計画を上回ると補正予算を組み、さらに負債を増やしている。今も秋期国会でそのような補正予算案を通そうとしている。

独立していないモンゴル銀行(中央銀行)

「金融政策を中央銀行が政治からの圧力を受けずに行うことを“独立する”という」(カール・E・ウォルシュ、2006年)。J.デルゲルサイハン、B.アルタンゾルという2人の研究者は、2015年に中央銀行独立性指数(Cukierman index)を用いて中央銀行に関する法律と実情を検証し、専門家へアンケート調査を行った。調査では0.446%となり、つまりモンゴル銀行は政府から独立していないという結果が出た。中央銀行が政府から独立していない国の外貨準備高は少なく、為替レートが下落する傾向にある。その典型的な例としてギリシャ、アルゼンチン、ジンバブエ、ベネズエラなどの国が挙げられる。

モンゴル銀行が政府から独立していないので、自己資本比率は常に減少してきた。研究者はその原因として、モンゴル銀行が政府と協力してプロジェクト活動を実施してきたことに関係すると分析している。研究者は、モンゴル銀行が“価格維持プログラム”などの政策を通して商業銀行に資金を交付してきた。市場原理を無視した為替レートの差額による金融派生商品(デリバティブ)取引、法律の外での取引をいくつか実施してきたことが原因だと強調している。

モンゴル銀行は政治的な圧力を受け、政府は国の債務をモンゴル銀行に移譲することになり、モンゴル銀行の債務残高は2年間で10倍に増加し、4兆3千億トゥグルグに達している。

モンゴル銀行は国民から金を買い取る条件を緩和し、金の年間購入量は20トンになった。これは外貨準備高を増やす事となったが、政府はモンゴル銀行に対して為替レートに介入するように圧力をかけるようになった。

トゥグルグが下落している根本的な原因が国際収支である限り、モンゴル銀行が外貨準備高をいくら売っても為替レートを維持することはできない。できることは、政府は負債で得た資金を効率的に活用し、海外からの投資を誘致していくことだ。

モンゴルの銀行システムは変わるのか

この数日、為替を規制する2つの法案が国会で審議されている。法案の1つは大統領が、もう1つは4人の国会議員が提出したものである。大統領は、為替規制法14.10に「政府と投資契約を締結した、戦略的鉱山に関係する法人の取引口座をモンゴル銀行に開設する」という条項が入った法案を提出した。

M.オユンチメグ議員をはじめとする4人の議員は、「モンゴル銀行は、モンゴル経済や国家財政に影響力がある戦略的投資家が合意した上で、為替口座を開設し取引する」という条項を含む法案を提出した。

中央銀行法では、「モンゴル銀行は国民から金を購入する他に民間との取引ができない。あらゆる銀行取引は、商業銀行のみが行うものとする」とされている。もし、上記2つの法案が可決されれば、中央銀行法も改正し、中央銀行が大口投資家の口座を開く権限をもつことにしなくてはならない。しかし、これがモンゴルの金融システムをどのように変えるのか。そのことを政治家たちは慎重に検討しなければならない。

資本を規制するのか

現在、国会で審議されている為替規制法案を見ると、16.1.3に「モンゴル国の外貨準備高の増加、規制のために個人や法人、金融財政を担う政府機関から外貨、金を購入することができる」、16.1.6に「モンゴルの国境検問所を通過する際に所持できる現金に制限を設ける」、17.1.3に「為替レートに及ぼす影響を考慮し、商取引に制限を設ける」などの条項が盛り込まれている。これは、モンゴル政府が為替を規制(Capital control)しようとしていることを示している。

これらの法律規定は、将来もたらされる外国投資、為替などの債権者の関心、果ては通貨供給全体に悪影響を及ぼす。これは発展途上国の事例を見ればわかる。このような政策を実施した国は、常に社会や経済が低迷し、時間を無駄にするだけでなく回復にも長い時間を要する。このような法律規制は、間違いなく外国投資、ビジネス環境に直接的な悪影響を与える。

この法律が可決されれば、モンゴル政府は資金の流れや為替取引を規制する国のランクに入ることになる。そうなれば、モンゴルへの外国投資、融資もなくなるだろう。モンゴルが完全に負債に飲み込まれるとなると、どこかの国が手を差し伸ばしてくれるかもしれない。だが、経済の安定は失われる。

モンゴル政府がこのような法律でトゥグルグの為替レートを維持しようとすることは、とても高いリスクを含み危険なことだ。為替レートを確実に維持する唯一の方法は、カレンシーボード制である。だがこの場合、国は自国の通貨供給量に見合っただけのドルを保有しなければならない。モンゴルが為替レートを1ドル2500トゥグルグで“維持”するならば、20兆トゥグルグに相当するドル、つまり最低でも80億ドルを保有していなければならない。

国はそれほどのドルを確保していないので、今は正しい予算を決め、負債を期限どおりに返済し、全国で財政規律を維持していく他に方法はない。

ダムバダルジャー・ジャルガルサイハン