ボルフー・デルゲルサイハン氏は、ドルノゴビ県第一高等学校を卒業し、国防省付属軍学校(現法執行大学)を法律家として卒業しました。彼はドルノゴビ県警で捜査官、上級捜査官、課長、東ゴビ株式会社、Bold Tumur Eruu Gol株式会社の代表取締役社長を歴任しました。

J(ジャルガルサイハン): こんにちは。あなたが当選されたドルノゴビ県は、モンゴルの最優秀県に2度選ばれました。年々インフラが整備されてきています。政府の予算に関係なく、自らに融資する数少ない県の一つです。今日はドルノゴビ県の開発方針についてあなたと話したいと思います。ドルノゴビ県では、大きなプロジェクトが数多く実施されています。まずは鉄道について話したいと思います。モンゴル国内で鉄道が通る県は数えるほどしかありません。しかし、ドルノゴビ県は4つの鉄道が相互に交差し、合流する拠点になろうとしています。現在の進行状況を教えてください。

B.デルゲルサイハン: まずドルノゴビ県は、数日前2度目となるモンゴル国最優秀県に選ばれました。これはドルノゴビ県の住民一人ひとりの努力によって得られた結果であることを強調するとともに、感謝の気持ちを伝えたいと思います。ドルノゴビ県は大変特徴的な県であり、あなたが言った通り、県内を走る鉄道の総延長は国内一長くなっています。またアスファルト舗装された道路の総延長も一番となっています。こういったインフラ整備の背景には、古くから鉱山開発と農業が共存共栄してきたことが挙げられるでしょう。それから、2つの大きな国境の街があります。ドルノゴビ県はこういった特徴を持っています。その意味で、モンゴル全国21県の中で、国の予算を使うことなく県内の融資で開発を成し遂げている数少ない県の一つです。モンゴル政府が実施しているメガプロジェクトの一つは鉄道開発です。ドルノゴビ県の住民も70年前から鉄道からの収入を得て、鉄道とともに生活を営んできました。ですからドルノゴビ県を挙げて鉄道開発を応援しています。鉄道開発についての最初のモンゴル政府及び国会が出した命令の内容は、2011年にドルノゴビ県サインシャンド郡からウムヌゴビ県まで鉄道を敷設するというものでした。しかし、私もこの建設事業に取り組んだ1人ですが、残念ながら当時はプロジェクトが実施されませんでした。今から2年前、内閣総理大臣、内閣が支援を表明し、このプロジェクトが再び動き始めました。このプロジェクトが開始してから1年が過ぎた現時点では、ズーンバヤン−タワントルゴイ間の鉄道敷設の基礎部分の工事が70〜80%完成しています。7月1日までには基礎部分の工事が完了するだろうとみています。私は4、5日前に大統領に同行し、現場を見てきました。30キロ程の区間で砂利を舗装しているという状況でした。

J: 総延長410キロのうちの30キロが舗装されているということですか?

B.デルゲルサイハン: 正確には416キロです。現時点で30キロを砂利舗装し、この工事もこのまま続けます。このプロジェクトは、ズーンバヤンからタワントルゴイの間、そしてサインシャンドだけではなく、サインシャンドから北へ伸び、昨年起工式を行った石油精製所までの27キロの鉄道が敷設されました。それに加えて12キロの鉄道を民間企業が建設しました。これは産業のための鉄道であり、今後はそこからバルーン・ウルト、チョイバルサン、ビチグト、フートというルートで鉄道が建設されます。これは、政府の鉄道に関する政策を定める文書にも記載されています。こういう国の大きなプロジェクトが、ドルノゴビ県で行われています。先ほどあなたが言った通り、初めて4つの鉄道が交差する拠点となります。

J: ドルノゴビ県から南西の方角にあるハンギという場所へも鉄道が建設されるとの話でしたが、それは何のためですか?

B.デルゲルサイハン: 基本的にロシアとモンゴルを接続しているのはセレング〜ウランバートル〜ドルノゴビ県を通ります。北に一つ国境検問所があり、南に一つザミンウードという国境検問所があります。現在、モンゴルは貿易量が増加し、ザミンウードとエレーンの国境検問所だけではこれらを十分に管理できなくなってきています。そのため、2つ目の大きな国境検問所を設置することは経済的に有意義だと考えています。

J: 2つ目の国境検問所の特徴は、中国の大きな産業エリアへ直結するように設置されていますね?

B.デルゲルサイハン: そうです。国境の向こうにはボガトの鉄工場があります。それからこの鉄道は中国のジンニン市まで繋がります。そこの港から海路へと接続されます。

J: 先ほどの話にもありましたが、石油精製所の建設に伴いインフラが整備され、モンゴルにとって主要な輸入資源を代替する事が可能な大きな石油精製化学工場の基礎が出来上がろうとしています。この工場はいつ完成するのか、あなたの見通しはどうですか?

B.デルゲルサイハン: ドルノゴビ県は、モンゴルの石油精製の歴史を有しています。1952年にモンゴルで初となる石油精製所がドルノゴビ県ズーンバヤン郡に建設されました。当時の石油精製所は、旧ソ連のバクー市から小規模な石油精製所をズーンバヤン郡に移転させただけのものでした。石油精製所が建設され、燃料としてガゾリン、軽油など11種類の石油製品を製造していました。そして、1年前に起工式が行われ建設が始まった石油精製所は、インド政府の融資を受けて建設されています。モンゴル側はインド政府の融資に対しての義務を履行し、インフラ整備を終えるところです。電力網、アスファルト舗装道路、鉄道等です。今は、精油所エリアの整地、工場用フェンスを作るなどしています。

J: また従業員が住む街も作っていますよね?

B.デルゲルサイハン: はい、そうです。石油精製所はサインシャンドからわずか27キロの距離にあります。

J: 従業員の街はどこですか?

B.デルゲルサイハン: 街はサインシャンド市内にあります。どの国でもそうですが、大きな建設事業に伴って地域の中小企業が発展します。例えば、鉄道建設に伴い、ドルノゴビ県の住民は建設業者に必要な食糧や衣料などを提供しています。それから、石油精製所の従業員用に550世帯規模のアパートが必要で、これにはドルノゴビ県の20ほどの建設会社を参加させました。こうすることで、ドルノゴビ県の若者、住民へ雇用機会を生み出すことができました。

J: サインシャンドは、モンゴル国の東部に位置する大きな産業の中心地、インフラの拠点になってきています。それに伴い様々な問題が起きてきます。例えば、水資源の問題です。これについてはどう考えていますか?

B.デルゲルサイハン: 国が国家予算でインフラを整備し、石油精製所の建設を伴い30近くの化学工場が建設される予定です。またインフラ整備に伴い、民間企業が工場を建設し始めました。

J: 石油精製所は40キロほど離れた場所から水をパイプで送っていますよね?

B.デルゲルサイハン: そのとおりです。石油精製所以外に製鉄工場、コークス工場、合わせて鋳鉄製錬工場などが操業を開始しています。これらの工場に水を提供する問題は一番に考えなければなりません。この水問題を解決する方法は2つ考えられます。1つは、工場建設用地から20キロの距離に「ボルフーベリーンゴビ」という1982年に旧ソ連が探査して発見した地下水脈があります。しかし、私たちは地下水脈を利用するよりも、2014年の内閣第232号令によって決められた地表水資源を使用するヘルレンゴビ・プロジェクトを進める必要があると考えています。これはもう何年も議論されてきたプロジェクトです。

J: ヘルレン川から南へと水路を作るという話があります。例えば、中国などはそのような方法を用いて多くの場所に水を提供しています。水路を新しく作る意義は何ですか?

B.デルゲルサイハン: ヘルレン、セレンゲ、オルホンなどモンゴル国内を流れる河川の殆どは国外へと流れます。ですから、この河川の水をなるべく国内で保管するために川の周辺に貯水池を作り、それを使ってゴビ砂漠へ水を引くことが重要です。水を鉱山開発に使用することを考えるよりも、ゴビ地域の砂漠化の減少、農業の発達、畜産のための利用という見地からみるべきです。

J: 木を植えるためにもですね?

B.デルゲルサイハン: はい、木を植えるためにもです。モンゴルの有名な画家エルデムビレグは、緑の馬という新しいプロジェクトを提案しました。ゴビ砂漠を馬の形で植林するというものです。水路はドルノゴビ県内だけでなく、県内10郡の地区を通過してドンドゴビ県、ウムヌゴビ県へと続く大きなプロジェクトです。

J:  画家のエルデムビレグはチンギス像の設計した人物ですね。私も彼と会って話をしたことがあります。本当にこの水を鉱山開発のためだけでなく、農業などの見地からみていることはとても良いことだと思います。多くの郡を通ってウムヌゴビ県まで水が流れるのですね?

B.デルゲルサイハン: そうです。現在分かっている限りでは、ゴビスンベルからダランジャルガラン、アイラグ、アルタンシレーまで繋がり、先ほど話した工場にを経由して、そこからマンダフ、サイハンドラーンなど南方ウムヌゴビへと流れます。

J: 水の問題については分かりました。では、電力の問題、暖房の問題があります。電源の問題をどう考えていますか?

B.デルゲルサイハン: 国内外の投資家がここ2年間でドルノゴビ県に再生可能エネルギーに関する投資をしました。

J: もともと資源が多いですからね。

B.デルゲルサイハン: そうです。風力資源や太陽光資源が豊富です。再生可能エネルギーを発展させることによって、発電量は世界水準に達し、産業分野に電力を提供することができるようになります。

J: 建設済みのものは何ですか?

B.デルゲルサイハン: 全国の再生可能エネルギープラントの6割がドルノゴビ県に建設されています。風力発電所は欧州復興開発銀行(EBRD)の融資を受け、55MWの発電所を民間企業が建設しました。太陽光発電所は、ドイツやフランスからの融資を受けて建設しました。それから、日本のシャープ株式会社が25MWの太陽光発電所を建設しました。さらにアイラグ郡に韓国の融資を受けた太陽光発電所が建設される予定です。このように、電力に関しては問題ありません。更に言えば、欧州復興開発銀行(EBRD)の融資を受けてゴビスンベル県からドルノゴビ県まで電力網を再整備しています。

J: ここまで鉄道、水資源、電力といった重要なインフラについて話してきました。これらの建設事業の結果、サインシャンドは大きな都市へと変貌を遂げようとしています。しかしその裏では様々な社会問題が発生してきます。例えば、住宅問題です。私が調べた限りでは、サインシャンドやズーンバヤン市には多くの住宅アパートが建設されています。その中で1500世帯分のアパートはあなた自身が資金を出し建設し、それを市民に公平に分けています。今後、住宅問題をどのように解決してく考えですか?

B.デルゲルサイハン: 大きな建設工事に伴い、工事に従事する人々の集落ができます。今まで人々は首都に集中していたが、これからは地方に移住する選択肢も出てきました。去年だけでもドルノゴビ県の人口は1万人増加しました。新型コロナウイルス感染症の広がりによって、モンゴル人は外国へ移住するよりも、国内で働き、生活したいという意思を強く持つようになったと思われます。

J: ビジネスのチャンスが増えてきたということですよね。

B.デルゲルサイハン: そうです。国の大きな建設を受けて、私たちは地方の都市計画を新しくしました。まずは、住宅化する必要があります。全国を住宅化することは、私たち政党の公約にもあります。ちょうど昨日、決定された2050年ビジョンにも全国民の住宅化が含まれています。ドルノゴビ県は、ここ4年間でサインシャンド及びその他4つの郡の5箇所に1500世帯分のアパートを建築しました。これは、比較的安い費用で建設されたので、購入しやすいものです。これからもこの住宅化プログラムを実施していきたいと思っています。

J: あなたが建築した住宅アパートを見ると、中には公園があり、自動車が入ってこられないように設計された半円形の5階建アパートでした。県の中心地に建てられるプロジェクトの一つのモデルになると話されています。住宅問題の次は医療問題です。医療サービスを誰に、どうやって提供しますか。あなたの業績を見た限りでは、ドルノゴビ県に病院を一つ、公園を2つご自身の資金で作っています。医療サービスをどのように提供すべきと考えていますか?

B.デルゲルサイハン: ドルノゴビ県は、もともとの住民に加えて移住してくる住民の数も増加しています。その結果、医療、教育機関の負担が大きくなりました。政府予算で建設されることが決定してから7、8年かかり、昨年2つの病院が完成し運営を開始しました。それから県全体での幼稚園及び学校の普及率は98%となっています。ここ4年、県の中心地および郡に20以上の幼稚園が新しく建設されました。私たちはアパートを建設する際、その下層階に幼稚園やサービスセンターを設置するようにしました。

J: それが新しい雇用を生み出しますね?

B.デルゲルサイハン: ある程度の雇用は作れます。これからも住宅アパートは建設されます。そこでは十分な緑地を取り入れたデザインで建築する予定です。

J: 住宅問題、医療問題について話しました。教育の面では、学校は十分整備されていると言われました。大学の支部校もあります。住民の健康増進のために何をしていますか。例えば、あなたは自ら資金を出して、500人収容可能なスポーツ競技場を建設しましたね。ドルノゴビ県には大きなプールのある郡もあります。学校、教育機関が十分である以外に、若者の健康のためにどういう取り組みをすべきだと考えていますか?

B.デルゲルサイハン: 教育への投資は学校だけに限りません。大事なことは、子供が体を鍛え、自由時間を有効に使える機会を提供することです。ザミンウードは、スポーツ競技場が無く、あるのは収容人数100人ほどのホールのみでした。最近、私たちは国境警備隊のために500人収容可能なスポーツ競技場を建設しました。ザミンウードの住民はそこをスポーツや文化活動のために利用しています。まだ建設途中の状態が5、6年も続いているスポーツ競技場がありますが、それとは別に新しくザミンウードに800人収容可能なスポーツ競技場を政府予算の余剰金を使って建築しました。また県の中心地に1200人収容可能な新しいスポーツ競技場が近いうちに運用が開始されます。ここには、若者が自由時間を有効に使えるように4D映画館もあります。

J: 農業に関して一つお聞きしたい問題があります。あなたは県の食肉工場を競売で購入しました。それから、いくつかの県に食肉工場を建設し、大きな食肉ネットワークを構築しました。その結果、地方の住民に食肉を提供し、また食肉の輸出事業にも発展しました。あなたは国会議員として、加工された食肉の方が、利益率が高いことを分かっている人として、昨今の家畜を生きたまま輸出する現象をどうみていますか?

B.デルゲルサイハン: 旧ソ連時代に食肉工場を持つ県は3県でした。その一つがドルノゴビ県です。当時はこれらの工場で食肉を加工し、輸出するビジネスが誕生しました。市場経済に移行した後、モンゴルには20以上の食肉工場が建てられました。現在、食肉工場は無くてはならないものです。まず、昔のように素手で家畜を解体せず、産業として食肉を加工する方が有益です。それから、家畜として輸出することは一番よくありません。なるべく国内で食肉を加工し、多品種にして輸出する方が雇用も創出ができるし、家畜の価値が高くなります。

J: では家畜として輸出することに課税すべきですか?

B.デルゲルサイハン: モンゴル国民は家畜を生きたまま輸出することは望ましくないと考えます。自分たちで利用したいと考えます。家畜の毛や皮、そして内臓は食肉よりも価値があります。ですから加工した食肉は付加価値が含まれるというメリットがあります。

J: もう一つ重要な話題に移りたいと思います。様々なプロジェクトの資金調達という問題があります。通貨トゥグルグの金利は高く、事業者は年20%の金利で融資を受け、利益の2割を銀行に返済するといった状況で、これではビジネスとして難しいです。あなたは、国会のある会議で銀行の金利が高い理由は、ノンバンクの金利が高く、そこに政治家が関与しているからだと言っていました。これはどう解決できますか?

B.デルゲルサイハン: モンゴルが金融機関改革をすべき時がやってきました。新型コロナウイルス感染症の広がりを受けて、世界各国が国境を閉鎖する中で、私たちは何もせずに座っているよりも、経済を拡大させ、大きな建設事業を進めることで多くの人々に雇用を確保できます。一方で、あなたの言う通り、トゥグルグの金利は非常に高い。このまま金融機関の改革をせず、今まで通りに進めば経済は破綻します。国際通貨基金やヨーロッパ銀行の金融のエキスパートたちは、モンゴルで発展しているノンバンクに国家公務員が関与し、資金洗浄をしているのではないかとみているのです。

J: 金融機関改革をする必要がありますね。

B.デルゲルサイハン: この問題を法律で規制しなければ、国民から金利を不当に回収する仕組みは長く続きません。ですから国民には金利の低い資金を提供し、誰もが労働する環境を整えることが私たちの使命だと考えます。

J: 先ほども雇用創出の話が出てきました。そもそも、なぜ雇用創出が大事だと思いますか?

B.デルゲルサイハン: 国民を貧困から救う唯一の方法が雇用だからです。ドルノゴビ県には、この4年間で6100の雇用機会が生まれました。4年前、私たちが当選した時の失業率は9.9%でしたが、今日では0.4%になっています。ほぼ住民全員が就業しているということです。

J: 最後の質問です。あなたは大きなビジネスを手掛け、政治の関与を許さない大きなプロジェクトを実施し、経済的にも安定しています。その上で国政に参加し、4年間国の仕事をしてきました。大変なことはありましたか?

B.デルゲルサイハン: 過去4年間、政治を内部から観察しました。30年間ビジネスをしてきて考えられることは、政府は民間セクターの大企業、中小企業が行っていることの邪魔をしてはならないということです。政治の関与を極力最小限に止め、民間企業を応援すべきだということです。もちろん政府は、大きな戦略的鉱山などの事業に対しては監視をすべきです。しかし、政府の関与が過剰になると、経済を悪化させます。

J: 多くの事業が始まりました。これからの予定は何ですか?

B.デルゲルサイハン: 私たちは始めた事業を最後までやり遂げ、結果を見たいと思います。そのためには今行われている鉄道プロジェクトなどを完了させ、国民の住宅化を進め、ドルノゴビ県だけでなく、モンゴル国民全員が住宅に住めるようにしたいと考えています。

デルゲルサイハン * ジャルガルサイハン