M.アムバガ氏は1976年に医科大学を卒業しました。1984年にモスクワで医学博士号を取得しました。薬剤分野において薬用植物、動物由来の原料から採取したサリモン(免疫力を高めるサプリメント)、デンタモン(歯茎の炎症防止薬)、ビオモン(美容薬品)などの医薬品を開発し、2006年にモンゴル国家賞受賞、2011年に医療功労賞を受賞しました。また、約700冊の書籍・作品を出版しました。

J(ジャルガルサイハン): あなたの医学に関する現代的、伝統的な考え方や知識について話を聞かせて下さい。

アムバガ: 人類の歴史上、医学的な発展は3段階に分かれます。まずは3000年前の伝統医学です。伝統医学では、人間の身体にはピッタ(火)、カパ(水)、ヴァータ(風)という3つの要素が巡っていると考えられていました。次は1665年、顕微鏡の登場で人間の身体はピッタ、カパ、ヴァータで形成されるのではなく、細胞から作られているという発見です。これは伝統医学を否定するものではなく、3要素を細胞レベルでみて解釈しなければならなくなったということです。伝統医学を現代医学では解釈できないので、新しい知識を作り出す必要がありました。新しい知識を作り出すことにはモンゴルの医学研究者たちも1990年から取り組んで来ました。世界では何百もの医学機関がこの2つの医学を繋ぎ合わせるために日々取り組んでいます。

J: 現代医学と伝統医学がお互いを否定するのではなく、その2つの医学が相互に繋がっていることを立証できれば、医療分野に変化をもたらすと思います。現代医学と伝統医学の研究が始まって以降どんな進展があったかを聞かせて下さい。

アムバガ:  ピッタ、カパ、ヴァータ説を説明するために生きている細胞に3つの異なる形態を見つける必要があります。それはピッタ、カパ、ヴァータは朝・昼・晩に異なり、冬と夏にも異なり、馬肉を食べた時と牛肉を食べた時も異なる。疲れた時、寝る時、怒る時もそれぞれに変化します。1990年代、研究を始めた当初は今のようにインターネットや高性能なコンピューターなど無かった時代でしたので、情報収集は困難を極めました。私たちは生物から細胞を採取し、実験で細胞に刺激を与え、朝・昼・晩で結果が異なることを見つけました。次に免疫細胞に刺激を与える実験では、3日間で3つの異なる結果が出ました。また、四季によって結果が異なることも分かりました。そこで私たちは3つの形態のものを見つけるということを知りました。そして細胞の中にどんな形態があるかを調べたところ、細胞膜に変化が起こり、朝・昼・晩でそれぞれの形態になることが分かりました。

J: 人々にわかるように細胞は何で形成されているかを簡単に説明していただければ、より理解しやすいと思います。

アムバガ: 細胞は細胞膜に包まれ、内部にエネルギーを作ります。消化や分解、増加、分裂を調整するなど、複数の分岐点があります。それぞれに細胞膜があります。大地が夏には緑になり、秋に黄色くなり、冬は白くなって変化するのと同じく、細胞膜も常に変化しています。

J: ピッタ、カパ、ヴァータは3つの異なる形態であると言いました。これについて具体的に説明してください。

アムバガ: 150億年前に宇宙が誕生しました。45億年前に地球が誕生しました。私たちはその一部です。電子、中性子、陽子は10という数字の後ろにゼロを36個置いたのと同じ寿命があります。細胞膜とは基盤であり、その上を流れるものは電子と陽子です。電子と陽子を細胞に繋ぐものは私たちが食べた食事であり、最後に摂るものは酸素です。言い換えれば、始点は食事、終点は酸素であり、その真ん中に細胞膜、そして細胞膜の上を電子と陽子が流れています。秋になる時や馬肉を食べる時などに細胞膜が薄くなり、電子と陽子の流れが速くなります。体温が高くなってお腹が空く、喉が渇くことを古代の研究者は「火」に例えて太陽つまりピッタと名付けました。反対に電子、陽子の流れが遅くなり、発熱が減少し、エネルギーが蓄積され冷たくなる性質を水と地に例えてカパと名付けたことが分かっています。カパとは月という意味です。この2つの間を空気と言い、力が弱い状態を指します。

J: あなたの恩師のジャグジ氏はどんな発明をした人ですか?

アムバガ: シャグジ先生のことを話すことはとても良い気分になります。モンゴル人でも発明ができる、世界の研究者と肩を並べることができると考え、1970年代に学生の心に火をつけてくれた人物です。講義は面白く、大腸には熱が発生する理論について話していました。

J: 大腸に熱が発生する理論について具体的に話してください。

アムバガ: 大腸がどんな器官かをシャグジ先生が発見する以前、世界では大腸についての理解はまだ不十分でした。ただ消化器官の最後の部分と考えられていました。しかし、先生は大腸に熱を発生させる細菌があることを提唱しました。世界のバイオ・エネルギー分野の研究者たちからは反論が起きました。エネルギー保存の法則に反するからです。そのため、生物とりわけ人間に実験を行い、食べたものと消化後のカロリーの量を算定して比較したところ、消化後のカロリーが高く出ていました。そこで先生は食べたもののカロリーに大腸で発生している熱量を足した数字で解くことができました。

J: これはいつの話ですか?

アムバガ: 先生は1972年に提唱し、1988年に発見の証明書を取得しました。当時は発表の機会があまりなかったため、論文を書いて10年間保管して1987年に科学で博士号を取得しました。

J: あなた自身は新薬を作って輸出しています。これについて話を聞かせて下さい。

アムバガ: 新薬は作りましたが、まだ輸出していません。新薬の名称はサリモンです。この薬を作ったエピソードが面白くて、それは私がゴビに行った時のことです。その時にウムヌゴビ県フルメン郡にいるルブサンダシという人物が私に植物について教えていました。その中でザガスガルという植物について紹介してくれました。猿年の厳しい冬に数頭の馬をこのサガスガルだけで乗り越えた人がいると話しました。私がウムヌゴビで作った心臓に良い飲み薬は今もあります。その植物の話を聞いて、実際にザガスガルという植物を見たことはありませんでしたが免疫力を高める薬を見つけた気がしました。なぜなら、ザガスガルというその植物だけで飼っていた馬が厳しい冬を乗り越えた人がいるのに、他の人はその年多くの家畜を失いました。私はその植物を少し採集して実験をしました。これは薬用植物だということが新たに分かりました。ゴビの人々は薬用植物としてではなく、一部燃料に使っています。

J: 実験してみて、細胞は先ほどあなたが言っていたピッタ、カパ、ヴァータの3形態になっていましたか?

アムバガ: はい。私たちはとても幸運なことに遭遇しました。モンゴルの保健省とハイダブ先生が世界保健機関(WHO)やロシアの免疫学者を招聘し、私たちに研修を行ってくれました。研修では1984年にノーベル賞を受賞したニールス・イェルネのモノクローナル抗体の作成法を教えてもらいました。

J: サリモンは何年に開発されましたか?

アムバガ: 研究は1995年に終わりました。

J: 特許権はあなたの名義になっていますか?

アムバガ: はい。商標権は他の2名の名義になっています。

J: あなたは特許権を持っています。もしサリモンを作ろうとすれば、あなたに許可を取らなければならないのですよね?

アムバガ: モンゴルでは知的財産権を保護するものがありません。特許庁は非常に無責任なところです。2011年以降、サリモン、ネフロモンという新薬の知的財産に関してまだ係争中です。地方出張の際、サリモンの話をすると「知的財産の件は解決されましたか?」と聞かれます。

J: サリモンの他にデンタモンという薬があります。これは何の薬ですか?

アムバガ: デンタモンは歯周病に効果のある医薬品です。私は国家賞をデンタモンの開発で受賞しました。虫歯はないのに歯を支えている歯茎の軟骨が炎症を起こすことによって歯を支えている骨が溶けていく病気があります。進行すると歯が自然に抜け落ちる病気です。朝起きて歯磨き後にデンタモンで口をゆすぐと、口内の細菌や異物を殺菌し口臭も抑える効果があります。

J: 人間も自然の一部ですから病気になった時、治療できるものは必ず自然の中に存在するという法則についてあなたはどう思いますか?

アムバガ: その通りだと思います。

J: あなたはとても若くて生き生きとしているように見えます。どうしてですか?

アムバガ: もし私が実年齢よりも若く見えるのであれば、それは知的労働のお陰だと思います。私は良く書いたり、考えたりしてそこから快感を得ています。

アムバガ * ジャルガルサイハン